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蒋英実(チャン・ヨンシル)は朝鮮最高の発明家

朝鮮の人々 6 李氏朝鮮の人々

蒋英実(チャン・ヨンシル)は李氏朝鮮の科学者。朝鮮史上でも最高の科学者といわれています。実用性を重視する世宗にその才能を見出されて、低い身分から出世して朝鮮の技術を高めるのに貢献しました。

史実の蒋英実はどんな人物だったのか紹介します。

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蒋英実(チャン・ヨンシル)の史実

いつの時代の人?

生年月日:1383年
没年月日:1450年

名前:蒋英実(しょう・えいじつ、チャン・ヨンシル)
父:蒋成暉(チャン・ソンフィ)

彼が生きたのは1383年~1450年。朝鮮王朝(李氏朝鮮)の主に3代太宗~4代世宗の時代です。

日本では室町時代になります。

おいたち

蒋英実の父・蒋成暉(チャン・ソンフィ)は高麗の高官でした。中国系移民の八世孫だといわれます。

高麗が滅び李氏朝鮮の時代になると朝鮮は高麗王朝の王族と彼らに仕えていた人々を弾圧し始めました。蒋英実の一族は身分を奪われ賤民(奴婢)にされてしまいました。蒋英実の母親は妓生にされてしまいました。

奴婢から役人へ才能を武器に出世

蒋英実は小さなころから頭がよく手先が器用でした。

東莱郡の官婢となって働いていました。水路の開発で才能を発揮したといいます。やがてその噂が4代王・世宗に伝わります。英実は宮殿に呼ばれ、工匠人として働きました。

1421年。技術研修生として明に派遣され、天文観測機器について学びました。世宗の期待が大きかったことがわかります。

蒋英実が明から帰国すると世宗は官職を与え正式に役人として登用しようとしました。しかし家臣たちが猛反対します。蒋英実の生まれが卑しいからダメだというのです。朝鮮は身分差別の非情に激しい国です。重臣や役人たちの反発は相当なものだったようです。

親の代までは身分は高かったのに、低い身分に落としたのは李氏朝鮮の人々。蒋英実の心中は複雑だったでしょう。

世宗のもとで発明を続ける

しかし蒋英実は才能を生かして新しい物を作り出します。有名なのは「更点之器」という水時計です。この時代、朝鮮では時間は太陽や星の動きをもとに測っていました。でも天候に左右されるうえに不正確でした。蒋英実の作った更点之器はそれまでの測り方よりも正確でした。

1423年。世宗から尚衣院別坐(従六品)の官職を与えられました。尚衣院はもともとは衣服を作るところでしたが、工房の役目もあり数百人の工匠人(技術者)が働いていました。奴婢の身分から開放されたのです。蒋英実は工匠人となって才能を発揮しました。

その後も時報付きで季節の変化がわかる水時計「自激漏」や「玉漏」を発明し、王宮に置かれました。星の動きで夜でも時間がわかる日時計「日星定時儀」を発明しました。

これらの功績から正四品・護軍になりました。五品より上は両班でなければなることのできない官職でした。

蒋英実の発明でも注目なのが「簡儀台」「渾天儀 」などの天体観測施設です。おかげで暦を作るのに大きく役立ちました。

金属活字「甲寅字」を鋳造して印刷技術の発展に貢献したり、銅や鉄の精錬技術の改良も行いました。

最終的には従三品・上護軍にまでなりました。

王様の乗り物で失脚

1442年。蒋英実の監督で王のガマ(日本では輿(こし))を作りました。ところが輿が壊れてしまいました。その責任を取らされて杖刑という杖で討たれる刑罰を受け、減俸処分になりました。

蒋英実の設計に欠陥があったわけではありませんが、太っていた世宗の体重を考慮していなかったという点では落ち度があったともいわれます。蒋英実の想定を超えるほど重かったとは世宗はいったいどんな体型だったのでしょうか。一説には世宗は大食漢なのに運動嫌いだったため肥満だったといわれます。

ドラマ「蒋英実」では車輪の付いた乗り物を開発しましたが、失脚を企む人達が車輪に細工したせいで壊れたことになってます。当時や後の時代にも朝鮮では王の乗る車輪のついた乗り物はなかったので、蒋英実が監督したのも人が担ぐ輿だったかもしれません。

しかし蒋英実を妬む人はいたようなので、細工がされていたのかもしれません。

その後の蒋英実の記録はありません。身分差別の激しい時代だけに様々な妨害が合ったのかもしれませんね。記録にはありませんが、ドラマ「チャン・ヨンシル」のように出世を妬む人達が妨害工作をした可能性もあるかもしれません。というのも濡れ衣を着せて処分するのは朝鮮王朝の常套手段だからです。

一説には牙山で暮らしたとも、三司の訴えで死刑になったとも、世宗によって密かに助け出されたともいわれますがよくわかっていません。

なぜ朝鮮で天体観測が発達したのか

古代中国や朝鮮では皇帝や王は天から与えられた役目だと考えてました。日食、月食など、天体の普通でなない動きは不吉なだけでなく王の権威そのものを脅かすと考えられていました。天体の動きは神の意志ですから、おかしな動きがあったら儀式を行って神に許してもらうことが必要です。そうしないと易姓革命が発生する(王朝が潰される)可能性があるかもしれないからです。

そのため中国や朝鮮では天体観測技術が発達していました。太陽や星の動きを知ることは皇帝や王の権威・権力を保つためには必要でした。

王の権力の維持に必要だったので、実用性とは関係ありません。

当時の中国で天体観測技術が世界最高水準まで発達しながら科学が発達しなかったのはそのためです。朝鮮もその影響をうけています。

日本は事情が違います。天皇は神の子孫ですから天皇家以外の血筋は天皇になれません。神に認められているかどうかを気にする必要がありません。

日本の朝廷の陰陽寮でも天体観測をしていました。でも中国よりもはるかに小規模でした。吉凶占いと春夏秋冬を知り、種まきや稲刈りの季節が分かればそれで十分なのです。刻(1刻≒2時間)きざみで星の動きを知る必要はありません。

日本では天体の動きはあまり重要ではなかったので観測技術は発達しませんでした。

朝鮮史上実用的な学問が最も輝いた時代

チョン・ヨンシルは朝鮮の技術発展に貢献した人として賞賛されています。ドラマ紹介サイトのうたい文句通り「当時朝鮮は世界最高の科学技術を持っていた」かどうかはさておき。世宗の時代に朝鮮の科学技術が発展したのは確かです。

この時代は李純之(イ・スンジ)など李氏朝鮮史上に残る科学者・技術者が多く登場しました。しかし世宗なきあと実用的な学問の発展は止まりました。

ドラマのように儒教思想に凝り固まった両班・王族が実用的な学問の必要性を理解していなかったことが理由にあります。

蒋英実が活躍できたのは世宗の時代に生きたからからこそといえますね。

テレビドラマのチャン・ヨンシル

根の深い木 MBC、1983年 演:キル・ヨンウ
大王世宗 KBS、2008年 演:イ・チョンヒ
チャン・ヨンシル KBS、2016年 演:ソン・イルグク

 

蒋英実を主人公にしたドラマは「チャン・ヨンシル」。チュモンを演じた主人公のヨンシルをソン・イルグクが演じています。このドラマではヨンシルを技術者というだけでなく、天文学者・暦にも深い知識をもつ人物として描かれます。

大王世宗でも後半の重要人物として出てきます。

ちなみに、チャン・ヨンシルと大王世宗では世宗と太宗の役者が同じ。同じドラマを違う視点で観ているような感じがします。

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