仮面の王イソンの辺首会(ピョンス会)は実在したの?

2018年4月9日

韓国時代劇「仮面の王イソン」には辺首会(ピョンス会)という組織が登場します。

王や重臣をかげで操る秘密結社という設定です。ドラマに出てきそうないかにも怪しい組織ですね。ところが、辺首会という名の組織は実在しました。でも秘密結社ではありません。水を売っていた民間団体なんです。

ドラマと実在の辺首会について紹介します。

「仮面の王イソン」の辺首会(ピョンス会)

ドラマでは影で朝鮮王朝を操る秘密結社。

先々代の王までは王の忠実な手先として働いていました。しかしテモクの父は最後は王に利用され命を落とします。

テモクは王に操られる存在ではなく、朝廷を操る存在になろうと決意。復讐を誓い朝鮮を影で操る組織になったという設定です。

毒を使い人を殺めたり操ったりします。王や重臣たちも操る存在。

世子の命と引き換えに揚水庁という水を管理する部署を手に入れます。

実在の辺首会

実際の朝鮮では1700年代に辺首会という組織が存在しました。

ただし秘密結社ではありません。朝廷を操った怪しい組織でもありません。

水を売る団体です。朝鮮八道の水の利権を持ち大きな富と権力を持っていたといいます。水を管理して売る民間の組織なんです。

李氏朝鮮の水事情

基本は井戸を掘る

朝鮮王朝時代には王宮には井戸があったので井戸からくんでいました。もともと水のよく出るところに王宮を建てていたようです。

庶民は村に井戸を掘って水を手に入れていました。朝鮮には滑車がありません。だから、紐のついた瓶を井戸におろして水をくんでいました。ドラマでは滑車を使って井戸から水を汲み上げていますが事実とは違います。少なくとも18世紀、英祖の時代には滑車はありませんでした。

しかし井戸は浅いものが多く、干ばつが続くと井戸の水が干上がってしまいました。井戸が枯れると、まだ水の出る井戸を探すか河からくんでこなければいけません。

干ばつでなくても人が多くなれば井戸の水では足らなくなります。そこで漢城などの都市部には水を売る商売ができました。

都市では水売りが出現

水を売る仕事。「水売り」という商売です。水売りは天秤棒に水瓶を引掛かけて売り歩いたといわれます。

仮面の王イソンでもうひとりのイソンが登場します。イソンは水売りという設定ですね。

水売りの制度はやがて拡大します。10~20戸の家に水を運んで商売する「水都家」という団体も出来ました。個人ではなく水売り団体ができるほど需要があったということですね。

水を売るために「水座」という権利が必要でした。水座の権利は、販売できる範囲が決まっています。権利がないのに水を売ったら違法行為になります。水座の権利は売買できました。

権利があるということは誰かが管理をしているということです。水売りの権利を管理しているのが揚水庁という組織なのでしょう。

水売りは英祖・正祖の時代に普及したといいます。つまり「仮面の王イソン」の時代設定1700年代とぴったり一致します。

辺首会は水売りの権利を持つ大きな組織なんです。最盛期には朝鮮八道(つまりすべての地域)で水売りの権利を持っていたといいます。

水を売るには権利が必要です。権利を買い占めて水を独占する団体が出てきても不思議ではありません。

人は水がなくては生きていけませんから、水の販売権を持つのは大きな力ですね。

辺首会は独占販売なのでかなりの財を蓄えていたのでしょう。

水に限らず朝鮮の商売は許可制でした。商人は国に税を払うかわりに独占的に商売できるのです。暴利を貪る商人や役人と癒着する商人がいました。「客主」や「オクニョ」で描かれる大商人がそうです。「テバク」でも商売の権利をめぐって争いになってましたね。

朝鮮では金さえあれば役人を動かせます。それなりに権力も持っていたのでしょうね。韓国時代劇で賄賂が多いのはドラマの演出ではなく、実際に多かったからなんです。

その辺首会が朝廷まで動かすほどの力を持っていたら・・・というのが「仮面の王イ・ソン」のようですね。

参考文献:水野俊平,”庶民たちの朝鮮王朝”,角川選書


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