「仮面の王イ・ソン」の元ネタは「王子と乞食」+「仮面の男」?

2018年4月1日

韓国時代劇「仮面の王イ・ソン」は李氏朝鮮を舞台にした架空のお話。

でも、モデルになった人物とストーリーの参考になったと思われる作品がありますので紹介します。(一部ネタバレ要素がありますご注意ください)。

イ・ソンという名前の王子は実在します。英祖の息子、正祖(イ・サン)の父・思悼世子(サドセジャ)です。史実では王位になれず死亡したイ・ソンがもし王になれたら?という発想で作られたのではないかと思えるドラマです。

ドラマではイ・ソンの父は架空の王様。でも英祖をモデルにしてるのは間違いないでしょう。

イ・ソンの父は朝鮮を裏から支配する組織「辺首会」と結託して前の王を毒殺。かわりに王位につきました。しかし王は辺首会から息子を守るため正体を知られないよう仮面を付けさせています。

イ・ソンは自分が仮面を付けなければいけない理由を探りました。そして辺首会という組織が朝鮮を牛耳っていることを知ります。さらに名前の発音が同じ「イソン(異線)」という名の貧しい水売りの少年と知り合い、友になります。

賤民のイソンにはもともと名前はありませんでした。ヒロインのカウンと出会って「異線(異なる道を歩むことができるという意味)」と名付けてもらったという設定です。

ちなみに李氏朝鮮では王の本名を書いただけで死刑になります。王族と同じ名前をつけるなんて、怖くてできません(ほとんどの庶民は王の本名は知らないと思いますが)。だから間違って処罰される人が出にくいように、王子の名前は滅多に使わないような難しい字を名前にしてるんですね。

ちなみに実在したイ・ソン(思悼世子)の本名は「李愃」。

ドラマでは発音が同じというギリギリの設定。漢字を読めない人が多い韓国でこの微妙な設定が理解されるのでしょうか。

さて、イソンは世子イ・ソンの影武者となって辺首会に入会します。イソンの苦労の始まりになるとともに、世子イ・ソンと対立するきっかけにもなります。

さらに王が辺首会に殺害され、イソンは辺首会によって仮面を付けた王として即位させられます。やがてイソンはイ・ソンにライバル心を持ち対立することに・・・イ・ソンは王になることができるのでしょうか。

というのが大まかなお話。ほんとうに大雑把ですが。

立場の違う人が入れ替わるというお話は昔からよくありますよね。「仮面の王イ・ソン」にもよく似たお話があります。それが「王子と乞食」と「仮面の男」です。この二つのお話をもとにストーリーを作ったのではないかと思えるくらい似ています。

「王子と乞食」と「仮面の男」はどのようなお話なのか紹介します。

「王子と乞食」

アメリカの作家マーク・トウェインが書いた小説。原題は「The Prince and The Pauper」。直訳すると「王子と貧者」。マーク・トウェインは「トム・ソーヤの冒険」などを書いたアメリカを代表する作家です。

舞台は16世紀のイングランド。王子時代のエドワード6世が主人公です。同じ日に産まれた顔のそっくりな二人が立場を入れ替わるという物語。

王子エドワードは宮廷で生まれ、何不自由なく育ったわがままな少年。
トムは貧乏な家に産まれました。仕事をせず乱暴をはたらいてばかりの父にかわり、道端で物もらいをして暮らす少年です。

宮廷の生活に憧れるトムは宮殿に忍び込みますが衛兵に見つかります。そこにエドワードが通りがかり助けてくれます。エドワードとトムは双子のようにそっくりでした。二人はすっかり仲良くなり、暫くの間服を入れ替えて暮らすことを思いつきます。

エドワードは庶民の暮らしを思い知ることになります。ところが誰からも王子と信じてもらえないエドワードは城に戻れなくなってしまいました。

トムも華やかな生活と思っていた宮廷が規則に縛られ肩苦しく虚しいことを知りました。

二人がそれぞれの立場で苦労しているさなか、国王ヘンリー8世が死亡。身代わりになったトムが王位につきそうになります。

エドワードは町で出会った没落貴族のマイリスに助けられ城にもどります。エドワードは間一髪王座につきました。そして庶民の生活を知ったエドワードは立派な王になろうと決意するのでした。

児童文学のようでありながら、子供の視点を借りて身分社会を風刺している名作です。

立場の違う人が入れ替わる物語のさきがけともいわれます。

この話は劇団四季のミュージカルにもなりましたね。

なお、近年では「乞食」という言葉が差別にあたるというので「王子とこじき」「王子と少年」と紹介されることもあります。

「仮面の男」

アレクサンドル・デュマ原作の「ダルタニアン物語」をもとに作られたアメリカ映画。

ダルタニアン物語は第1部「三銃士」のお話が有名ですね。続編で第3部「ブラジュロンヌ子爵」には「鉄仮面」のエピソードがあります。「ブラジュロンヌ子爵」はダルタニアン物語の完結編にあたるお話。ダルタニアンの死という衝撃的な結末が待っています。

その「鉄仮面」をストーリーの中心にして作られたのが映画の「仮面の男」なんですね。

「仮面の男」のおおまかな内容は以下のとおり。

三銃士たちが暴君のルイ14世を退位させ、監獄に幽閉されている仮面の男をかわりに即位させるという話です。

仮面の男はルイ14世の双子の弟フィリップでした。三銃士は仮面舞踏会を利用して王を入れ替えることに成功します。王位を奪われたルイ14世は戦いをしかけますが、三銃士やダルタニアンたちの活躍で最終的にはフィリップ側が勝利しフィリップが即位します。しかし戦いの最中、フィリップをかばったダルタニアンは刺されて死亡します。ルイ14世の名前で王になったフィリップは偉大な王「ルイ14世」としてフランスの黄金時代を築く。というのがざっくりとしたストーリー。

「仮面の王イ・ソン」と違い、「仮面の男」は最終的に王が入れ替わってしまうお話。暴君を退け入れ替わった者が善政をしくのも違います。

王になる者が仮面を付けているというアイデアはこちらのお話をヒントにしてるかもしれません。

「仮面の王イ・ソン」制作はMBC。そういえば韓国時代劇の「三銃士」もMBCでしたね。朝鮮版「三銃士」は昭顕世子(ソヒョンセジャ)とその護衛を三銃士にみたてた物語でした。

「仮面の王イ・ソン」と「三銃士」どちらも史実では非業の死をとげた世子が活躍するお話。やっぱり狙って作ってるのでしょうか。こういう自由な発想があるのは韓国時代劇の特徴です。

最近の韓国時代劇は大胆なアレンジをされているものが多いです。今後も世界の名作を朝鮮王朝にあてはめるドラマは続くのでしょうか。


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