韓国時代劇を見ていると「王様」に「チョナ」と言ったり「チュサン」と言ったり、ドラマや場面によって呼び方が変わることがありますよね。
朝鮮王朝の呼称には身分によって細かなルールがあります。
この記事ではドラマがもっと楽しくなるように「宮廷用語」の基本構成から、王・王妃・王子たちの呼び名の違いについて分かりやすく紹介します。
この記事で分かること
- 「主上(チュサン)」と「殿下(チョナ)」の使い分けと、言葉に込められた政治的ニュアンス
- 性別を問わず王族に使われる敬称「媽媽(ママ)」の本来の意味とルール
- 母親の身分によって変わる、王子(大君・君)や王女(公主・翁主)の呼び名の違い
- 時代設定(高麗と朝鮮王朝)による公的な呼称の変化と、ドラマ独自の演出
韓国時代劇用語の基本ルール
まずは韓国時代劇の呼び方の「構成」と「ルール」を理解しておきましょう。
呼び方は「身分名」と「敬称」の組み合わせ
韓国の宮廷用語は以下のように組み合わさっています。
- 主上(チュサン / 身分) + 殿下(チョナ / 敬称)
- 中殿(チュンジョン / 身分) + 媽媽(ママ / 敬称)
- 世子(セジャ / 身分) + 邸下(チョハ / 敬称)
このように用語の意味を分解してみると「誰に対して、どの程度の敬意を払っているか」が非常に分かりやすくなります。
同じ人物でも場面で呼び方が変わる
ドラマの中である人物が王を呼ぶときには以下のように使い分けられます。
- 直接呼びかけるとき: 「殿下(チョナ)!」
- 第三者として話題に出すとき: 「主上(チュサン)が……」
- 私的な場面(家族など): 「父上(アバニム)」や「お兄様(オラボニ)」
内官、尚宮、臣下、そして家族。それぞれの立場によって最適な呼称が選ばれています。
朝鮮王朝と高麗では用語が違う
多くの韓国時代劇の舞台となる「朝鮮王朝」と、それ以前の「高麗」では用語が異なります。
高麗: 「王后(ワンフ)」や「陛下(ピェハ)」という言葉が使われることが多い。
朝鮮王朝: 王妃を指す際は「中殿(チュンジョン)」が一般的。
史実としての用語とドラマを分かりやすくするための演出上の用語に差があることも覚えておくと便利です。
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王の呼び方:チョナ・チュサンなど
朝鮮王朝のドラマで「王」の呼び方は以下の通りです。
殿下 チョナ(전하)
王に呼びかける時に最もよく使われるのが「殿下(チョナ)」です。
日本では「殿下」は皇子や親王への敬称なので、君主のイメージがありません。そのためドラマの日本語字幕ではチョナは「王様」と訳されることが多いです。
朝鮮王朝は中国王朝(明や清)の従属国であり、常に中国に対して一歩引いた立場をとっていました。皇帝に使う「陛下」は使えずワンランク下の「殿下」を用いる事になっていました。
主上 チュサン(주상 )
現在、玉座に座っている国王を指す言葉です。
国王個人に対する呼びかけというよりは「国王という地位」に対する呼びかけとして使われます。
日本だと「お上」「上様」に近いニュアンスです。
大妃(母)から王(息子)への呼びかけ
ドラマでは母である大妃が王に向かって「チュサン」と呼びかけている場面があります。大妃にとって王は息子ですが同時に「国の主」でもあります。
- 「主上(チュサン)」と呼ぶ時: 政治的な話をする時、あるいは王としての責任を問う時。あえて突き放した呼び方をすることで、「母としてではなく、先王の妃として、現王に忠告している」というニュアンスが含まれます。
- 「主上殿下(チュサンジョナ)」と呼ぶ時: さらに格式張った場面や、大勢の臣下の前で王の権威を立てる時に使います。
王妃(妻)から王(夫)への呼びかけ
王妃にとっても王は夫である前に「主君」です。
王妃が「主上」と呼ぶときはやはり夫婦としてではなく、臣下として王に意見しているとき、臣下が見守る公的な場面で使うことが多いです。
二人きりの極めて私的な場面では稀に「ソバンニム(旦那様)」に近いニュアンスで接することもありますが、基本的には「主上」や「殿下」と呼び、立場の違いを言葉で表現するのが宮廷のルールです。
上監 サンガム(상감)
王を指す尊称として主に宮中の人々や年配の臣下が使います。作品によって頻度は異なりますが「サンガムママ(上監媽媽)」という形で耳にすることがあります。
大監のさらに上、身分秩序のトップというニュアンスがあります。
主上殿下 チュサンジョナ(주상전하 )
「主上」と「殿下」を組み合わせた最も丁寧で改まった呼び方です。朝廷の会議など公式な儀式の場でよく使われます。
民は王のことを何と呼ぶ?
基本はチョナ
現実には民が王に会うことはほぼないので直接呼ぶことはありませんが、ドラマでは民が王に会う場面が用意されることがあります。
直訴など眼の前に王がいるときは殿下(チョナ)が多いです。王の呼び方としては広く普及した言葉。
最も改まった時は主上殿下(チュサンジョナ)を使うこともありますが。よほど詳しい人でないとこの言葉自体を知らない人も多いです。
民は宮中用語を理解してるわけではないのできっちり使い分けできるわけではありません。知ってる範囲内で最上級の言葉を使います。
ドラマの演出では
ドラマによっては上監媽媽(サンガムママ)も使いますが。こちらは宮中用語なので民が使うことはあまりありません。でも「王のことなんだな」という雰囲気が伝わるのでドラマの演出としては使われることがあります。
王様 イムグムニム(임금님)と呼ぶことも
主に民同士の会話の中で国王のことを呼ぶ時に使う言葉に「イムグムニム」があります。日本語の「王様」に近いニュアンスです。
「王様が◯◯したんだってさ」みたいに民同士の会話の中で国王を意味する言葉として使うことが多いです。
言葉の使い方
| 用語 | 指し示す対象 | 直接の呼びかけ | 会話中の指称 | 格式 |
| 主上 | 在位中の王 | △ (稀) | ◎ | 標準 |
| 殿下 | 王への敬称 | ◎ | ○ | 高い |
| 上監 | 王への尊称 | ○ | ○ | 親愛・敬意 |
| 主上殿下 | 王(最上級) | ◎ | ○ | 最高(公式) |
| イムグムニム | 王 | △ | ◎(民) | 低い |
王妃の呼び方:チュンジョン など
女性王族の呼び方はその人物が「現役」か「先代」かによって細かく分かれています。
中殿 チュンジョン(중전 )
本来は王妃の居所である「中宮殿」の略称。
王妃本人の宮中での日常的な呼び方としてよく使われます。
目下の者は
中殿媽媽 チュンジョンママと 「中殿」に敬称の「媽媽」をつけた形で使うことが多いです。
中宮 チュングン(중궁)
中殿と同じ意味。王妃本人とその居所を指しますが、日常会話では中殿より使用頻度は低いです。王妃のいる場所や王妃を忠臣にした集団を意味するときにも使います。
どちらかと言うと書き言葉や文書の中で使われる言葉に近いです。
王妃 ワンビ(왕비 )
一般的な名称ですが、ドラマ内では「中殿」の方が多く使われます。
王妃への直接のよびかけではなく、臣下同士の会話の中で王妃を指す言葉として使われることが多いです。
日本語字幕では中殿・中宮・王妃はどれも「王妃」と訳されることが多いです。
「王后(ワンフ)」はいつ使う?
朝鮮王朝では生きている王妃を「王后(ワンフ)」と呼ぶことは稀です。
- 生前: 中殿、王妃
- 死後・記録上: 「〇〇王后」と諡(おくりな)で呼ばれる
ただし高麗時代には現役の王妃をワンフと呼ぶ事がありました。そのため高麗を舞台にしたドラマ(『千秋太后』『麗<レイ>』など)では、生前でも「王后」と呼ぶシーンが見られます。
王の母・先王の王妃の呼び方:テビなど
大妃 テビ(대비 )
先代王の王妃。現王の母(またはその世代の女性)であることが多いですが。血縁が繋がっているとは限りません。
王大妃 ワンテビ(왕대비)
大妃の正式な呼び方。作品によって「大妃」と「王大妃」の使い分けが揺れることがありますが、基本的には同じ地位を指します。
現役の王妃(中殿)よりも序列が上のため嫁姑問題の火種になる場面がよく描かれます。
大王大妃 テワンテビ(대왕대비)
先々代王の王妃であり、現王の祖母世代。宮廷内で最も高い序列に位置します。
世子・王子・王女の呼び方
若い王族たちの呼び方もチェックしましょう。
世子 セジャ(세자)
次期国王として指名された跡継ぎのことです。
世子邸下 セジャチョハ(세자저하)
最も一般的な敬称。
邸下は殿下より下の敬称。
日本語字幕では「世子様」と訳されていることが多いです。
世子媽媽よりも改まった言い方。重臣の前・公的な場面では邸下を優先。宮中で暮らしているとき、プライベートでは媽媽を使うことが多いです。
元子 ウォンジャ(원자)
王位継承者の第一候補。基本は世子と同じですが、まだ明・清から柵封を受けていない状態。
大君 テグン(대군)
王と王妃(正室)の間に生まれた息子。王家の嫡子。
君 クン(군)
王と側室(側室)の間に生まれた息子。王家の庶子。
王子 ワンジャ(왕자)
王子。大君や君など称号がある場合はそちらを優先。あまり呼びかけには使いません。一般的な意味で王子という存在を指す場合には使います。
王子媽媽とはあまりいわない。
公主 コンジュ(공주)
王と王妃の娘。
翁主 オンジュ(옹주)
王と側室の娘。
媽媽 ママ(마마)・万能の敬称
国王・王妃・大妃に関係なく宮中でよく使われるのが媽媽(ママ)です。
基本形は「肩書+媽媽」
通常は
- 中殿媽媽
- 大妃媽媽
- 王大妃媽媽
- 世子媽媽
- 大君媽媽
- 公主媽媽
のように、肩書に媽媽をつけて呼ぶことが多いです。
は漢語の「母」を意味する漢字ですが、朝鮮では媽媽は性別は関係なく使います。
対象になるのは王族
偉い人なら誰でも媽媽が就くわけではありません。
国王・王妃・大妃・高位の側室(嬪)・世子・王子・王女・世子妃など。王族に限られます。嬪でなくても後宮で力を持っていれば媽媽がつくことはあります。
でも重臣や官僚や庶民に付くことはありません。
ただしドラマでは力のある人だとわかりやすくするために、側室や尚宮でも媽媽をつけて呼ばせることはあります。そこはドラマの演出です。
単独の「媽媽」もある
本来は 肩書+媽媽 が基本ですが、次のような場面では肩書が省略されることがあります。
- その場に対象者しかいない
- 宮中内部で相手が明確
- 緊迫した場面で呼び止めるとき
この場合は中殿媽媽 → 媽媽 のように短くなります。
誰に言ってるかが明らかなため、敬意は保たれます。もちろんこの場合でも呼ばれるのは王族です。
若い王族への呼びかけ「アギシ」など
幼い王子や王女に対して乳母や付き人が「アギシ(お坊ちゃま、お嬢様)」と呼ぶことがあります。性別は関係なく使います。これは固定の官職名ではなく、あくまで親愛の情を込めた呼びかけです。
あとがき
いかがでしたでしょうか。韓国時代劇で何気なく耳にしていた「チョナ」や「ママ」という言葉の裏側に、これほどまでに緻密な身分制度や人間関係の機微が隠されていることに驚かれた方も多いかもしれません。
王妃が夫である王をあえて「主上(チュサン)」と呼ぶときの覚悟や、大妃が息子を突き放すように呼ぶときの政治的な背景。そうした言葉の一つひとつに、キャラクターたちの「立場」と「本音」が込められているのですね。
次にドラマを見る時は、ぜひ字幕だけでなく登場人物たちが交わす「呼び声」に耳を傾けてください。きっと、これまで以上にドラマを深く楽しむことができるはずです。

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