韓国ドラマ『奇皇后 〜ふたつの愛 涙の誓い〜』のあらすじ・ネタバレをまとめて知りたい方に向けた総合ガイドです。
このページでは、第1話から最終回までの流れがわかる全体あらすじに加えて、主要キャスト・史実との違い、高麗末期〜元の時代背景まで紹介。ドラマや歴史の『奇皇后』も楽しみたいという方に役立つ内容を目指しました。
※このページにはネタバレを含む内容が多数あります。未視聴の方はご注意ください。
このページで分かること
- 『奇皇后』の全体像がつかめるあらすじ(序盤〜最終回までの流れ)
- スンニャン(奇皇后)・ワン・ユ・タファン・タナシルリなど、主要キャスト・登場人物の紹介
- 史実とドラマの主な違い
- 高麗末期と元の時代背景
ドラマ『奇皇后』とは?
韓国ドラマ『奇皇后 〜ふたつの愛 涙の誓い〜』は、高麗出身のひとりの女性が、元の皇后「奇皇后」として権力の頂点に上りつめていく姿を描いた歴史ロマンスです。
復讐・愛・権力闘争が絡み合い、「高麗」と「元」の二つの国をまたぐ壮大な物語になっています。
『奇皇后 〜ふたつの愛 涙の誓い〜』の基本情報
まずは、作品の基本的なデータを簡単に整理しておきます。
-
タイトル:奇皇后 〜ふたつの愛 涙の誓い〜
-
原題:기황후(キ・ファンフ)
-
制作国:韓国
-
ジャンル:歴史ロマンス/宮廷ドラマ
-
放送年:2013〜2014年
-
話数:全51話前後(放送形態によって前後あり)
-
主な出演:ハ・ジウォン(スンニャン/奇皇后)、チュ・ジンモ(ワン・ユ)、チ・チャンウク(タファン) ほか
ドラマの舞台と時代設定
物語の舞台は14世紀、高麗が大国・元の支配を受けている時代です。
高麗は
- 女性を「貢女」として元へ送り出す
- 宮廷で働く宦官も高麗から差し出す
といった義務を負っています。
ヤン(スンニャン)が母や女性たちと共に連行されそうになりました。
高麗側の状況
高麗では
- 元に従って地位や利益を得ようとする一派(ワン・ゴなど)
- 高麗の独立や名誉を守ろうとするワン・ユ側
が対立しています。ワン・ユは、高麗王として元に屈しない姿勢を見せますが、そのために王位を奪われ、流刑同然で元へ送られてしまいます。スンニャンの家族も元との権力争いに巻き込まれて命を落とします。
元の宮廷・後宮の状況
元の宮廷では皇帝タファンよりも最高権力者ヨンチョル一族が強い力を持っています。
- タファンは「皇帝」だが、実際はヨンチョルの操り人形
- ヨンチョルは自分の娘タナシルリを皇后にし、一族で権力を独占
- 宮廷では暗殺・陰謀・政略結婚が当たり前に行われている
という非常に不安定な状況です。
『奇皇后』全体あらすじ(ネタバレあり)
ここでは、奇皇后のあらすじ・ネタバレを「序盤・中盤・終盤」の三つに分けて紹介します。
※この先は重要なネタバレを含みます。
序盤:高麗編・男装のスンニャンと二人の王
14世紀。高麗の少女ヤンは元へ送られる貢女の列に入れられ、母と共に連行されていた。道中、人質として同行していた世子ワン・ユの助けで逃げ延びるが、追ってきた元の将軍タンギセに母を殺されてしまう。生き残ったヤンは身を守るため髪を切り、「スンニャン」と名乗る少年として生き始める。
13年後。スンニャンは弓の腕を磨き、ならず者たちの頭として高麗の裏社会で名を上げていた。そこで再びワン・ユと出会い、密貿易を巡る国内の権力争いに巻き込まれていく。
一方、元の皇太子タファンが流罪となって高麗へ送られ、元を牛耳るヨンチョルはタファン暗殺を計画。高麗に罪を押しつけようと企んでいた。
やがてスンニャンは兵士としてタファンの護衛役となり、暗殺を阻むために危険な逃避行を共にする。身勝手で弱々しい皇太子に反発しながらも、必死に守り抜くなかで二人の距離は縮まっていく。
しかしタファンは生存を許され元へ戻され、スンニャンも女であることを見破られて宮中に連行される。雑用係として働くヤンは、タファンを殺そうと試みるが、再会したタファンは彼女を忘れられず疑いと動揺を募らせていく。
同じ頃、ワン・ユは西方の戦場でチュルクとの激戦を繰り広げる。辺境では高麗兵の扱いはひどく、ワン・ユはその現実に怒りを覚えながら戦況を立て直そうと奮闘する。
宮廷では皇后タナシルリと皇太后の対立が激化し、スンニャンは両者の命令の狭間で翻弄される。タファンはスンニャンが自分を欺いていた事実に苦しみ、ヤンもまた、復讐と生き延びる手段の間で揺れ動いていく。
中盤:ヨンチョル打倒まで
元の都に着いたワン・ユはヤンと再会。高麗を脅かす元の権臣ヨンチョルを倒すため密かに動き出す。手がかりは先帝が残したとされる「血書」。この血書の存在を巡ってヨンチョル・皇太后・ワン・ユの思惑が交錯し、都は不穏な空気に包まれていく。
ワン・ユは怪文書を使い、民心をヨンチョル批判へと誘導。側近や高麗兵をまとめて反撃の準備を進める。一方、ヤンは宮中の権力闘争に巻き込まれタファンの嫉妬と独占欲に振り回されながらも、ワン・ユと距離を置くことを決意する。しかしその裏で高麗の民を救いたい気持ちは揺れていた。
ヨンチョル一族はヤンを排除しようと画策。タファンやワン・ユを互いに疑わせて混乱を引き起こす。ヤンは側室選びを利用して宮中に居場所を確保、タファンに文字を教えるなどして皇帝としての覚悟を促していく。やがてヤンは妊娠し、自らにも逃げられない運命が迫ることを悟る。
その頃、ヨンチョルは譲位を迫り宮廷掌握を目前にするが、タファン・ヤン・ワン・ユ・ペガン・タルタルらがついに包囲網を固める。
狩猟大会での暗殺計画や後宮での毒殺未遂など、幾度もの罠が張り巡らされるなかタファンはついに親政を決意。ヨンチョル打倒のため挙兵する。
決戦の日、タファンは命を賭して戦い、ヤンは後宮で女官たちを率いて立てこもり、ワン・ユは守備隊を率いて城門を開こうと血戦を挑む。
ペガン軍が宮廷に迫るなか、ついにヨンチョルは追い詰められ長く続いた恐怖政治は終わりを迎えようとしていた。
終盤:奇皇后としての栄光と崩壊
ヨンチョルを倒し父の仇を討ったヤンは皇后候補として民心と長官たちの支持を集める。
しかし新たに丞相となったペガンと、その姪バヤンフトという強力なライバルが現れる。ヤンは正面衝突を避け、表向きはバヤンフトを皇后に立て自分は皇室財政と政治を握る道を選ぶ。
一方、ヨンチョルの秘密資金を巡りヤンとワン・ユは共闘するとともに、それぞれ高麗と元の未来を思い別々の覚悟を固めていく。
やがてペガンは征服戦争を主張、タファンもこれに乗って周辺国を攻めるが、長期戦で元は疲弊。タファンは酒と妄想に溺れていく。皇太后とペガンはワン・ユを反逆者に仕立て、ヤンにも罪をかぶせようと画策。ワン・ユは捕らえられ、命と引き換えにヤンを売るかどうかの選択を迫られるが、最後まで彼女を守る道を選ぶ。
一方、マハが自分とワン・ユの息子ピョルだと知ったヤンは母としての思いと皇后としての責務のあいだで苦しむが、陰謀の渦の中でマハを失ってしまう。
ペガンとの対立は決定的となりヤンはついに彼を倒すが、その結果、今度はタファンとの溝が致命的に広がる。タファンはヤンを遠ざけ、彼女もまた生き残るために冷酷な決断を重ねざるを得なくなる。
やがてメバク商団の黒幕やコルタの裏切りが明らかになり、タファンが飲まされていた薬の存在、記憶障害の真相が浮かび上がる。タファンはワン・ユの死とマハの出自を知って深く傷つき、帝国もまた内側から崩れていく。
ヤンは皇后として最後まで元を支えようとするが、病と疑念に蝕まれたタファンとの関係は修復されないまま、大国は斜陽の時代へと傾いていく。
主要キャスト・登場人物まとめ
『奇皇后』は高麗側・元の宮廷側ともに登場人物が多く「誰がどの立場なのか」「史実ではどういう人物なのか」が分かりにくくなりがちです。
ここでは、物語の軸となるキャラクターを中心に、ドラマでの役割と史実との関係を紹介します。
キ・ヤン/スンニャン(奇皇后)
演:ハ・ジウォン
本作の主人公。本名はキ・ヤン。「スンニャン」と偽名を使っています。
高麗出身の女性で幼いころの悲劇から男装して生き、のちに元の宮廷へと上りつめていきます。
史実上の奇皇后がどのような出自で、どんな政治的役割を果たしたのかは、
「奇皇后の史実」で詳しく整理しています。
ワン・ユ(高麗王)
演:チュ・ジンモ
高麗王。スンニャンの初恋の相手となる人物です。
祖国を守ろうとする強い信念を持ちますが、元との力関係に翻弄されます。
ワン・ユは実在した忠恵王をもとにアレンジした架空の王です。詳しくは ワン・ユは架空の国王」で解説しています。
タファン(元皇帝)
演:チ・チャンウク
元の皇太子として登場し、のちに皇帝となる人物。
最初は弱く頼りない印象ですが、スンニャンとの出会いを通じて成長。しかし政治の実権を握ってからは権力の重さに押しつぶされていく、悲劇的な皇帝として描かれます。
タファンのモデルは元の順帝トゴン・テムルです。史実のトゴン・テムルの詳しい説明はタファンのモデルは元順帝トゴン・テムルをご覧ください。
タナシルリ(正皇后)
演:ペク・ジニ
ヨンチョル一族の娘で、タファンの皇后として後宮に君臨する女性です。
気性が荒く、スンニャンと激しく対立する“ライバル”として物語を大きくかき回します。
タナシルリ(ダナシュリ)はトゴン・テムルの皇后ダナシュリがモデル。詳しい紹介はタナシルリ(ダナシュリ)をご覧ください。
ヨンチョル
演:チョン・グックァン
元の実権を握る大権臣。皇帝すらも従わせるほどの権力を持ち、タファンやスンニャンの前に立ちはだかる巨大な壁です。
豪胆で残忍な一方、一族の繁栄のためなら手段を選ばない徹底した権力者として描かれます。
ヨンチョルのモデルは史実の権臣エルテムルです。エルテムル自身の詳しい説明は「ヨンチョルのモデルはエル・テムル」で解説しています。
ペガン
演:キム・ヨンホ
ヨンチョル一族に続いて台頭してくる重臣で、タルタルの叔父にあたる人物。
武将として高い実績を持ち、ドラマでは「新たな実力者」として皇帝と後宮を揺さぶります。
ペガンのモデルはバヤン。詳しい説明は バヤン(ペガン)をご覧ください。
タルタル
演:チン・イハン
バヤンの甥で、冷静沈着な軍略家として描かれる人物。宮廷内ではスンニャンやタファンにとって心強い味方にもなる存在です。
タルタルのモデルとなった史実の人物がトクト。元末の混乱期に重要な役割を果たしました。トクトの生涯やドラマとの違いはタルタル(トクト)で紹介しています。
バヤンフト(2人目の正皇后)
演:イム・ジュウン
元の正皇后として登場する女性。タナシルリ失脚後は正皇后となりスンニャン(奇皇后)と対立します。
バヤンフトは史実の正皇后バヤンクトゥクがモデル。詳しくはバヤンフト:史実の正皇后でくわしく紹介しています。
ワン・ゴ
演:イ・ジェヨン
高麗王室の一員で、ワン・ユと対立する立場に立つ人物です。
元との関係を利用しながら自らの地位や利益を最優先に動く姿が描かれます。
王暠は史実にも登場する高麗王族で、高麗末期の権力構造を理解するうえで重要な人物です。詳しくは王暠(ワン・ゴ)をご覧ください。
これ以外の人物については奇皇后・ふたつの愛 涙の誓い 登場人物キャストで紹介しています。
史実の 奇皇后 とドラマの違い
『奇皇后』は実在人物をモデルにしていますが、史実どおりの物語ではありません。
共通しているのは、
という部分だけと思ったほうが近いです。
史実の奇皇后
中国の歴史書『元史』によると史実の奇皇后は以下のような人物です。
- 高麗出身の奇氏の女性
- 貢女として元に送られる。
- 宮女からトゴン・テムルの側室になる。
- 元の皇后になり、強い権力を持つ
- 高麗にいる家族を忠烈王に殺害され高麗に恨みを持つ。
- 高麗攻撃を命じたが、元軍は敗退。
- 皇帝 アユルシリダラの母。
史実の奇皇后は高麗を守る側ではなく、元の中枢から高麗を圧迫した側にいました。
詳しい経歴は人物コラム「奇皇后」と「奇皇后の実話?ドラマと史実の違い」で解説しています。
ドラマのスンニャン像
ドラマのスンニャンは、
- 高麗への強い愛着と正義感を持つ
- 高麗の民を守ろうとする
- ワン・ユと深く愛し合う
- タファンへの想いと責任のあいだで苦しむ
という高麗のために戦うヒロインとして描かれます。
ここが史実と一番大きく食い違う部分です。
元に入るまでの人生もすべて創作
ドラマで描かれる
- 母を殺される幼少期
- 男装して育つ日々
- 高麗での活躍
- ワン・ユとの出会いと恋
は史料にはありません。ドラマの創作です。
史実では、貢女として元にやってきたことは分かりますが。それ以前の人生は分かっていません。
それ以外のドラマでの主な脚色ポイント
他にも『奇皇后』では史実をもとにエンタメ作品として分かりやすく感情移入しやすくするために大きなアレンジが加えられています。
代表的なポイントだけ挙げておきます。
ワン・ユという「架空の高麗王」
スンニャンとワン・ユの恋と信頼関係はドラマの大きな柱になっていますが。のワン・ユという国王は史実には存在しない、オリジナルキャラクターです。
歴史上は忠恵王がワン・ユのポジションにあたりますが。忠恵王は横暴な王で会ったのに対して。ワン・ユは正義感あふれる王として描かれています。スンニャン(奇皇后)との恋も架空です。
タファンと元順帝トゴン・テムル
タファンは元の最後の皇帝・元順帝トゴン・テムルをモデルにした人物です。
ただしドラマのタファンは「弱く頼りない青年から皇帝として覚悟を決めていく姿」を強く描いており、史実のトゴン・テムル像とは違う面も多くあります。
権臣たちのキャラクターと事件の再構成
ヨンチョル・バヤン・タルタル・王暠(ワン・ゴ)など、元末・高麗末期に実在した人物たちも多数登場しますが、ドラマでの性格付けや立ち位置。登場タイミング・事件の順番はかなり整理・再構成されています。
史実側の人物像を知りたいときは、以下の記事が参考になります。
-
元の大権臣のモデル:「ヨンチョルのモデルはエル・テムル」
-
クーデター後に台頭する武将:「バヤン(ペガン)」
-
冷静な軍略家タルタルのモデル:「タルタル(トクト)」
-
高麗王族として揺れる立場:「王暠(ワン・ゴ)」
これらを読むと「ドラマでは悪役寄りに描かれているけれど、史実ではどうか」「時系列はどう違うのか」といった点がわかります。
後宮の女性たちの描き方
後宮ではタナシルリやバヤンフトなど、複数の女性が奇皇后と対立したり、時に協力したりしながら権力を争います。
タナシルリは史実でも奇皇后を虐めていますが、逆にバヤンフトのモデルになった正皇后バヤン・クトゥクはおとなしい人物で奇皇后とは対立していません。
ドラマでは奇皇后と対立するライバルキャラとして描かれています。
史実の高麗末期と元の時代背景
高麗はなぜ元に従属していたのか
13世紀、高麗はモンゴル軍の来襲を何度も受けました。
最終的に高麗は全面戦争の継続ではなく「服属」を選び、講和の条件として
-
元皇帝から「高麗王」として冊封を受ける
-
王族を元に送り、婚姻関係も結ぶ
-
朝貢や兵・人材の提供などの義務を負う
という立場になります。
形式上は独立した王国の姿を保ってはいますが、軍事や大きな外交方針では元の意向を無視できない状態でした。
一方で高麗側も完全な「支配されるだけの存在」ではなく、婚姻や外交を通じて自国の利益を守ろうとする動きも続きます。
親元派・反元派の争いが長く続いたのは、その板挟みの結果とも言えます。
元とモンゴル帝国の違いと「多民族国家」としての姿
-
モンゴル帝国全体
-
モンゴル高原と中華地域を治める「大元」
-
それ以外の地域を分担する4つのハン国(チャガタイ・キプチャク・イルハンなど)
-
支配層はモンゴル系ですが、実際に暮らしていたのは
-
モンゴル系
-
漢民族
-
色目人(中央アジア系を中心とした諸民族)
-
高麗・その他東アジアの人々
といった多様な民族でした。元は単純な「モンゴル vs 漢民族」という構図ではなく、複数の文化と制度が混在する多民族帝国でした。
皇帝トゴン・テムルと元末の不安定さ
-
強い指導力を持つ皇帝が現れにくい時代
-
皇帝位を巡って、母后・外戚・権臣・モンゴル貴族同士の権力争いが激化
-
各地に置かれた有力者や行省が大きな裁量を持ち、中央の統制が弱まる
さらに14世紀は地球規模で「小氷期」に入りつつあったとされる時期です。
元の領域でも
-
異常気象
-
水害
-
飢饉
が頻発し、農村は疲弊。税が重く感じられるようになりました。こうした自然条件と政治の不安定さが重なり、元は次第に衰退へ向かっていきます。
トゴン・テムル(元順帝)はその末期を担う皇帝でした。
彼個人の性格だけでなく「強い皇帝が育ちにくい構造」「気候変動による社会不安」という条件が重なっていたことも、元末期の揺らぎを理解するうえで重要です。
トゴン・テムルの後宮と高麗出身の奇氏
トゴン・テムルの後宮は、政治と切り離された「私生活の場」ではありませんでした。
-
皇后や側室には、それぞれ支える一族・出身集団がいる
-
後宮での優劣が、そのまま政権中枢のバランスにも影響する
というわけです。
モンゴル系の支配層は儒教的な「異民族だから排除する」という考え方とは少し違い、比較的異民族にも寛容です。そのため奇氏のような高麗出身者でも皇后の地位に達する余地が生まれたと考えられます。
なぜ高麗出身の貢女が皇后になれたのか
長年続いた「高麗出身者の流入」で宮廷に基盤があった
高麗は元への従属関係の中で、貢女だけでなく宦官も継続的に送り続けていました。
その結果、元の宮廷には自然と高麗出身者のネットワークが生まれ、同郷のつながりが情報や協力体制として機能しやすい環境ができていました。
奇氏(奇皇后)は、そういった人々に支えられ後宮での立場を安定させ、政治的な動きを支える人材にも恵まれていたと考えられます。
2. 遊牧国家の価値観では「民族」より「忠誠と能力」が重視された
モンゴル系支配層は、儒教国家のように“異民族だから昇格できない”という発想をあまり持ちません。
重視されるのは、
-
主君への忠誠
-
実務能力
-
自分たちのルールを理解し、組織の役に立つか
といった点でした。
奇氏は、後宮での立ち回りや実務能力によって「役に立つ味方」と評価され、
出自が出世の壁になりにくい環境で力を発揮できたと考えられます。
3. 皇帝トゴン・テムルに味方が少なく、依存が強まった
元末期は権臣の力が強く、皇帝自身に安定した支えが少ない状態でした。
トゴン・テムルは後宮で孤立しやすく、信頼できる相手を求めていました。
奇氏は、
-
皇帝の心理を理解し支える
-
政務面でも助言・調整に動ける
という点で特別な存在になります。
皇帝が依存するほど彼女の影響力は増し、政治的な地位も上昇しました。
4. 皇子を産み、継承問題の中心に立った
決定的だったのが奇氏が皇子アユルシリダラを産んだことです。
トゴン・テムルは子が少なく後継者候補も限られていました。
後継者候補はアユルシリダラしかいない状況になってしまいます。そのため奇氏は皇太子の生母として後宮の頂点に立ち、正皇后となり地位を揺るぎないものにしました。
まとめ
奇皇后が皇后まで昇りつめた背景には、
-
宮廷に根づいた高麗系ネットワーク
-
民族より能力を重視するモンゴル系支配層の価値観
-
皇帝の孤立と奇氏への依存
-
皇子を産んだことで継承権の中心に立った
という複数の条件が重なっていました。
より詳しい史実解説や個別の事件については「奇皇后の実話?ドラマと史実の違い」でまとめているのであわせて読んでみてください。

コメント