韓国ドラマ『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』のユ・ギルチェは架空の人物です。でも実在の人物ではありませんが、モデルになったひとはいます。それが『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラです。
アン・ウンジンが演じるギルチェは、ヌングン里に暮らす両班の娘。両班は朝鮮の支配層に属する家柄で、ギルチェも不自由の少ない暮らしをしていました。美貌に自信があり、村の男性たちからも人気がありますが、好きなヨンジュンには親友ウネという婚約者がいます。そこへ現れるのが、ナムグン・ミン演じるジャンヒョンです。
『恋人』のストーリーや人間関係祖ものが『風と共に去りぬ』から着想を得ていてギルチェはスカーレットの立場になっているんですね。
この記事ではユ・ギルチェがどんなキャラクターなのか?モデルになったスカーレットオハラとどこが似てどこが違うのか紹介します。
ギルチェはどんな女性?
『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』に登場するユ・ギルチェ(柳吉彩)は、ヌングン里(綾裙里)に暮らす両班の娘です。父のユ・ギョヨンは村で書院を開き、若い儒生たちに学問を教えていました。
書院というのは、朝鮮時代に儒教を学ぶために作られた私設の塾です。儒生たちはここで儒教の経典を学び官僚になるための科挙の勉強をしていました。また、地元の両班たちが集まって政治や地域の問題について話し合う場所にもなってました。
つまりギルチェの父は、村の若者たちに学問を教える先生であり、地元の両班たちからも一目置かれる人物だったのです。
そんな父親の娘ですから、ギルチェは村の儒生たちにとっても注目の存在です。裕福な家の娘で美人と評判。しかも自分たちの先生の娘となれば、若い儒生たちが関心を持つのもわかります。
父親もギルチェをかわいがって育てたため、本人は自分の美貌に自信があり男性たちから注目されるのが当然だと思っているようです。
ところが、ギルチェが好きなヨンジュンには親友ウネという婚約者がいました。ヨンジュンは成均館で学ぶ優秀な儒生ですが、ギルチェがいくら気を引こうとしてもウネ一筋です。
そんなギルチェに興味を持つのが、村へやってきたジャンヒョンでした。ジャンヒョンはギルチェを気に入り、何かと彼女に関わろうとしますが、ギルチェはヨンジュンを諦められません。
その後、清軍が朝鮮へ侵攻したことで、ギルチェの生活は一変します。仲間と逃げる途中で出産を手伝い、戦争が終わると家族を養うために商売を始めました。
序盤は男性の気を引くことばかり考えていたギルチェですが、戦争が始まってからは家族や仲間を助けるために自分で考えて行動するようになります。
でも、ギルチェは実在しません。もしかすると、このような境遇の女性はいたかも知れませんが。ユ・ギルチェ(柳吉彩)というキャラはドラマのために作られた架空の存在です。
ギルチェのモデルはスカーレット・オハラ?
ユ・ギルチェは架空ですが、まったくゼロから作られたキャラではなく、参考になった存在がいます。
脚本家が語った『風と共に去りぬ』からの着想
脚本家ファン・ジニョンは、2023年12月11日公開のNewsEnのインタビューで、『風と共に去りぬ』から多くの着想を得たと語っています。
朝鮮が清に敗れた丙子の乱を題材にすると、戦争の悲惨さばかりが印象に残るかもしれない。そこで参考にしたのが、南北戦争を背景にスカーレットとレットの恋を描いた『風と共に去りぬ』でした。『恋人』でも登場人物の性格や恋愛に興味を持ってもらおうと考えたそうです。
序盤には意図的に似せた場面もあります。スカーレットがアシュリーに告白するところをレットが隠れて見ている場面と、ギルチェとヨンジュンのやり取りをジャンヒョンが見ている場面などです。
ただ、脚本家は清へ連行された捕虜や帰国女性の問題を、『恋人』独自の内容として挙げています。序盤が似ているからといって、その後も同じ展開になるわけではないのですね。
スカーレット・オハラはどんな女性?
スカーレットは、マーガレット・ミッチェルの小説『風と共に去りぬ』の主人公です。1939年の映画ではヴィヴィアン・リーが演じました。
19世紀のアメリカ南部で裕福な農園主の娘として育ちます。美しく気が強く、男性から注目されることが好きな女性です。でも、自分が恋するアシュリーは、従妹のメラニーとの結婚を決めていました。そんなスカーレットに惹かれるのが、商人のレット・バトラーです。
南北戦争が始まると、農園は荒廃し、母親も亡くなります。スカーレットは家族を食べさせるために働き、戦後は商店や製材所の経営にも関わるようになりました。恋愛に夢中だった娘が、家族の生活費を自分で稼ぐようになるところもギルチェと似ています。
『恋人』と『風と共に去りぬ』の人物の関係
ギルチェに当たるのがスカーレット、ジャンヒョンに当たるのがレットです。ギルチェが恋するヨンジュンはアシュリー、その結婚相手のウネはメラニーに近い役割を持っています。
また、ギルチェの結婚相手ウォンムは、スカーレットの二度目の夫フランクの立場に相当します。ただし、似ているのは主人公の恋愛や結婚に関わる役割だけで、性格や結婚の事情は違います。
ギルチェとスカーレットの共通点
好きな男性を嫉妬させるために別の男性を利用
ギルチェはヨンジュンの関心を引くため、祭りでブランコに乗って自分の姿を見せます。それでもヨンジュンがウネを選ぶと、今度は自分に好意を寄せるスニャクに求婚させ、ヨンジュンを嫉妬させようとしました。
ところがヨンジュンは気にしません。ギルチェは望んでいないスニャクとの結婚が決まりそうになって困ってしまいます。自分を好きな男性なら思いどおりにできると考えたのでしょうが結婚の話まで持ち出すのはずいぶん思い切った方法です。
スカーレットもアシュリーに告白して断られると、腹いせにメラニーの兄チャールズと結婚します。ギルチェは求婚させるところまでですが、スカーレットは実際に結婚してしまいました。好きな男性に選ばれなかった悔しさから、別の男性を利用するところが似ています。
戦争中に女性の出産を助ける
『恋人』ではギルチェたちが清軍から逃げている途中で身重のパン・ドゥネが産気づきます。敵兵に見つかるかもしれない状況で、ギルチェと侍女のジョンジョンは出産を手伝いました。
『風と共に去りぬ』でも、北軍がアトランタへ迫るなかでメラニーが産気づきます。医師を呼べず、スカーレットは召使いのプリシーと出産を助け、その後、母子を連れて街から脱出しました。
恋愛のことで頭がいっぱいだった二人が、医師の助けも得られないなかで出産を手伝う展開は非常に似ています。
家族を養うために商売を始める
戦争後にギルチェは値下がりした銅銭を買い集めてウォンムの鍛冶場で真鍮の器を作らせます。戦争で祭祀用の器を失った家に売るためです。さらに生姜の取引なども行い、家族の食べ物を確保するようになりました。
スカーレットも、タラ農園を守り、家族を養うために商売をします。フランクと結婚した後は夫の商店に関わり、レットから借りた資金で製材所を購入しました。
扱う商品は違いますが、以前のように家の財産を頼れなくなり、自分で稼ぐところは共通しています。
ギルチェが何を仕入れて誰に売ろうとしたのかが具体的に描かれる場面は、恋愛中心だった序盤より興味を持って見られました。
ギルチェとスカーレットの違い
愛していない男性と結婚した事情
スカーレットがフランクと結婚したのは、タラ農園の税金を払うためでした。フランクは妹スエレンの婚約者でしたが、商店を持つ彼の財産を当てにして、妹から奪う形で結婚します。
ギルチェも家族の生活を考えてウォンムとの結婚を決めますが、それまでにウォンムが商売を助けて行方のわからなくなった父親を捜してくれたことがありました。
ジャンヒョンが死んだと思っていた時期もあったのでウォンムは家族を守ってくれる男性だと考えたのでしょう。
二人とも生活のために結婚を選びますが、スカーレットはフランクの財産を必要としますし、ギルチェはウォンムの助けを受けて結婚を考えるようになりました。
ギルチェには清での捕虜生活がある
ギルチェは朝鮮で拉致され清の都・瀋陽へ連行されます。ジャンヒョンに助けられて帰国しても夫のウォンムに貞節を疑われ、やがて離婚しました。
スカーレットも戦争で家族や財産を失い周囲から批判されることがあります。でも敵国に連行され、帰国したことを理由に夫から疑われるような経験はしていません。
これは丙子戦争の後に朝鮮で起きた問題が関わっています。「恋人」は前半は「風と共に去りぬ」と似た展開がありますが、後半からは独自の展開が増えていきます。
愛する男性との結末も違う
スカーレットはレットと結婚してもアシュリーを忘れられず夫婦関係は悪化します。娘とメラニーを失い、ようやくレットへの愛に気づいたときには彼は別れを決めていました。
ギルチェはジャンヒョンへの愛を自覚した後も、何度も彼と離ればなれになります。それでもジャンヒョンを捜し続けて最終回では記憶を失っていた彼と再会しました。
スカーレットはレットを取り戻そうとするところで物語が終わりますが、ギルチェとジャンヒョンは再び一緒に暮らせるようになります。
ギルチェにスカーレットほど魅力を感じなかった理由
同じわがままな女性でも見ていると印象が違う
スカーレットは身勝手なことをしますが、男性に甘えたり、相手の反応を見て態度を変えたりする小悪魔的な魅力があります。見ていると、男性たちが夢中になるのも納得できました。
ギルチェも男性への接し方が上手な女性として描かれています。でも「男は自分を好きになって当然」と考えているように見えて自信の強さやわがままな言動のほうが印象に残りました。
もちろん、裕福な家で育ち周囲からちやほやされてきた娘なら、そう考えるのも不思議ではありません。ただその性格に納得できることと、ヒロインとして好感がもてるのとは別なんですよね。正直、序盤のギルチェには魅力を感じませんでした。
ジャンヒョンは、なぜそこまでギルチェを好きになったのか
村の若い儒生たちがギルチェに憧れるのは、まあある程度納得できます。美人と評判の両班の娘ですし彼らは女性と接する機会も少なそうに見えます。村の有力者の娘ですから注目も集めるでしょう。個人的には特別美人には見えませんが、そういう設定なので仕方ないです。
でも、ジャンヒョンは商売や人付き合いに慣れて女性への接し方も心得ているような男性です。そんな彼がなぜギルチェにそこまで惹かれるのでしょうか?
思ったことを遠慮なく口にして、自分に簡単には従わない女性が珍しかったのかもしれません。最初に興味を持った理由としては納得できます。でも興味を持つことと、非婚を貫いていたジャンヒョンが何度も危険を冒して助けるほど好きになることは違います。
戦争が始まってからは、ギルチェが仲間を助けて家族を養おうとする姿も描かれます。そうした行いを知って好きになるなら納得もいきますが。
序盤の時点でジャンヒョンが彼女のどんな言葉や行動に惹かれたのかがよくわからないんですよね。
ギルチェの魅力にもジャンヒョンの恋心にも共感できなかったので、序盤は二人の恋の行方に、なかなか関心を持てませんでした。そのため一度は見るのを挫折しています。そのあと後半は面白くなると言うので見直した経験があります。
ギルチェの捕虜生活と帰国後の扱い
丙子の乱で清へ連行された人々
丙子の乱は、1636年から1637年にかけて清が朝鮮へ侵攻した戦争です。朝鮮国王の仁祖は南漢山城で抵抗しましたが清に降伏しました。
この戦争で、女性や子供を含む多くの朝鮮人が捕らえられ、清へ連行されました。捕虜を帰国させるには、身代金を払って解放してもらう必要がありました。これを贖還(しょくかん)といいます。
瀋陽では捕虜の身代金を交渉する取引が行われましたが、家族がお金を用意できず、帰国できない人もいました。ジャンヒョンが朝鮮人捕虜を助ける場面には、こうした歴史が取り入れられています。
帰国した女性との離婚が朝廷で問題に
ギルチェが清から帰ってきた後、ウォンムに疑われる場面は、見ていてつらいものがあります。無理やり連行された本人が、なぜ夫に責められなければならないのでしょうか。
実際の朝鮮でも帰国した女性が同じようなめにあいました。女性の貞節を厳しく求める考え方から、敵兵の性的な被害を受けたのではないかと疑われ、夫の家族が離婚を求めることがあったのです。
『仁祖実録』には、1638年、朝廷の高官だった張維が清から戻った息子の妻との離婚を認めてほしいと申し出た記録があります。一方、自分の娘が離縁されることに反対した父親もいました。
大臣の崔鳴吉は捕らえられた女性が貞節を失ったとは限らないとして、離婚を認めることに反対しました。
仁祖も当初は離婚を許可しませんでしたが、その後、離婚が認められた例もあります。
帰国女性の扱いは家によって違いますが、捕虜となったという理由で夫の家から離縁された女性がいたのは事実です。
ギルチェ個人の体験は創作ですが、帰国後の夫婦の問題には、こうした出来事がもとになっているのです。
まとめ:ギルチェは架空の人物で、スカーレットを参考に作られた
ギルチェは『風と共に去りぬ』のスカーレットを参考にした架空の女性です。恋愛関係や戦争後の商売には似たところがありますが、清での捕虜生活と帰国後の扱いは、朝鮮の歴史をもとにした内容です。
序盤のドラマのテンポが遅いこともあって、ギルチェの魅力や、ジャンヒョンが彼女を好きになる理由が十分に伝わりませんでした。でも戦争が始まってからは逃げる人たちを助けたり、家族を養うために商売をする場面もあり、徐々に変わっていくのが感じられました。苦労の末に帰国しても夫から疑われたりと、苦労が続き。序盤とはかなり印象が変わります。こうした環境でギルチェがどう暮らしていくのかが気になりました。

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