巣王妃楊氏は隋から唐時代の王族。
隋の皇室のいち員でした。
最初は斉王 李元吉と結婚したのですが。玄武門の変で李世民は李元吉を処刑。 李元吉の妻の楊氏を自分の妾にしました。
太宗 李世民は巣王妃楊氏を大変気に入っていて。
長孫皇后が死去した後、太宗 李世民が楊氏を皇后にしようとしたという話も伝わっています。そのときは重臣たちの反対で実現しませんでした。
史実の巣王妃楊氏はどんな人物だったのか紹介します。
巣王妃楊氏の史実
いつの時代の人?
生年月日:不明
没年月日:不明
姓:楊氏
名称:不明
称号:斉王妃、巣王妃
父:不明
母:不明
夫:巣王李元吉
唐太宗李世民
子供: 曹王李明
彼女は主に隋末期から唐 太宗の時代に生きた人物。
日本では飛鳥時代になります。
おいたち
楊氏の両親や生年は分かっていません。
楊氏は隋の皇室の一族でした。楊恭仁の記録には楊氏のいとこと書かれています。楊恭仁、楊師道兄弟は隋の皇族・観王 楊雄の息子。
楊雄(よう・ゆう)は隋文帝 楊堅(よう・けん)の同族。隋朝時代は皇族のあつかいになっていました。
その観王 楊雄と楊氏の父は兄弟になります。
楊雄の父は北周の大将軍・楊紹です。楊氏の祖父は楊紹になりますね。
楊紹は北周時代に戦死。楊雄は次男でしたが父のあとを継ぎました。
楊氏の父は楊雄の弟だったのか、このとき既に亡くなっていたのもしれません。
楊紹には楊雄以外の息子が二人います。
楊達は武則天の母方の祖父。巣王妃 楊氏と武則天の母・楊氏はいとこ。
巣王妃 楊氏は武則天の親戚になるのです。
武則天は父の死後、地方から長安にやって来て太宗の後宮入りしました。もしかすると巣王妃 楊氏が後宮にいた縁もあったのかもしれません。
三男・楊貴の娘は太宗 李世民の三男 呉王 李恪も楊紹の孫娘と結婚しました。楊氏と李氏は繋がりが深いようです。
巣王妃 楊氏の父が楊達なのか楊貴なのかそれとも他の兄弟なのかはわかりません。隋の皇族の家柄の生まれなのは確かなようです。
唐の時代
618年。李淵が唐を建国。
時期はわかりませんが、李淵の四男 斉王 李元吉(り・げんきつ、603~626年)と結婚。
巣王妃 楊氏の一族は隋の皇族と言っても李淵とは親しくしていたようです。
なので唐の建国前にすでに結婚することになっていたのか。隋を倒した後、捕虜にして結婚させたのかはわかりません。
李淵が挙兵したとき李元吉は15・6歳。結婚していたかどうかは微妙な年齢。でもこのころまでに結婚の約束ができていてもおかしくはありません。
626年。玄武門の変で斉王 李元吉は皇太子・李建成とともに秦王 李世民に討たれます。
李元吉には5人の息子がいました。楊氏との間に子供がいたかはわかりません。
夫が殺され李世民の妾に
5人の息子は全員玄武門の変の後、処刑されました。
李世民は皇帝に即位。
このとき李元吉はすでに死亡しているのですが、太宗 李世民は李元吉の称号を「斉王」から「巣王」に変えました。そのため楊氏も「巣王妃」と呼ばれます。
そして太宗は巣王妃 楊氏を自分の妾にしてしまいます。李元吉は太宗の弟です。弟の妻を自分の妾にしたのです。
唐王朝では親兄弟で妻や側室を奪うことはあります。
太宗は弟の妻 楊氏を妾にしました。
高宗は父の側室 武則天を側室(後に正妻)にしました。
玄宗は息子の妻 楊貴妃を側室にしました。
漢人はこのようなことはしません。李氏そのものが鮮卑の血を受け継いでいるからとも言われます。李氏の素性はともかく、唐朝は北周から続く遊牧民の習慣が残っている王朝なのです。
でも唐では公式的には兄弟の妻と結婚する制度はありません。重臣たちの多くも漢人です。
巣王妃 楊氏は太宗の側室として認められることなく。非公式な存在でした。
楊氏の立場は「巣王妃」。あくまでも「巣王 李元吉」の妻です。夫が謀反を起こしたのでその家族を後宮で預かっている。ことになっているのです。
皇后の候補になった?
「新唐書」や「資治通鑑」によると。
636年に長孫皇后が死去した後。太宗は巣王妃 楊氏を皇后にしようと考えました。でも重臣の魏徴(ぎ・ちょう)に反対されて諦めました。魏徴はよく癇癪をおこす太宗を何度も諌めた大臣です。結局、太宗の治世の後半は皇后の座は空いたままでした。
太宗は巣王妃 楊氏をかなり気に入っていたみたいですが。重臣たちは弟の妻を自分の妻にすることには反対でした。
634年から647年の間。楊氏は李明を出産しました。太宗の十四皇子です。
貞観21年(647年)。李明は「曹王」の称号を与えられました。
その後。巣王妃 楊氏がいつ亡くなったのかはわかりません。
巣王妃 楊氏は死後。太宗の他の側室と同じように昭陵に陪葬されました。
生前は太宗の側室としての称号が与えられませんでしたが。死後は、側室と同じ扱いを受けています。
テレビドラマ
ドラマや小説など創作作品では隋 煬帝の娘で太宗 李世民の四妃のひとり楊妃と同じ人物にされることがよくあります。
武則天 2014年、中国 演:周海媚 役名:楊淑妃
天下長安 2020年、中国 演:梁婧嫻 役名:斉王妃 楊蕤
風起花抄 2021年、中国 演:席興立 役名:楊妃
「武則天」では四夫人のひとり楊妃は若いころ巣王李元吉の妻で。夫が殺され李世民の側室になった。という設定です。
「天下長安」は史実に近い形。
「風起花抄」も「巣王妃」と「楊妃」を一緒にした設定。「皇后になる噂がでた」というのも「巣王妃」のエピソードが元ネタ。四夫人の楊妃は皇后の候補になったことはありません。
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