道宗 耶律査剌（やりつ さらつ）は遼（契丹） の第8代皇帝。
洪基（こうき）ともいいます。
道宗の治世は、皇帝の無能と重臣の横暴によって有能な皇子や臣下が迫害されたり、有力者同士の対立が続いたりして政治は乱れました。
聖宗、興宗宗のもとで発展してきた契丹（遼）は道宗のころから衰退に向かいます。
史実の遼道宗 耶律洪基はどんな人物だったのか紹介します。
道宗 耶律査剌（洪基）の史実
いつの時代の人？
生年月日：1032年9月14日
没年月日： 1101年2月12日
享年：68歲
姓 ：耶律（やりつ）氏
契丹名：査剌（さらつ）
字：涅隣
漢名：劉洪基（りゅう・こうき）
国：遼（契丹）
地位：皇太子→皇帝
廟号：道宗
父：興宗 耶律宗真
母：仁懿皇后 蕭撻里
妻：蕭観音、蕭坦思
子供：昭懐太子 耶律濬、
日本では平安時代になります。
おいたち
景福二年八月初七日（1032年9月14日）。耶律洪基が誕生。
父は大契丹国（遼）の7代皇帝 興宗 耶律宗真
母は仁懿皇后 蕭撻里。
重熙6年（1037年）。6歳の時、耶律洪基は「梁王」になりました。
重熙11年（1042年）。燕国王になりました。
重熙12年（1043年）。総理北南院枢密使事、尚書令、燕趙国王になりました。
この期間。父の興宗は儒家の 蕭惟信、姚景行、耶律良をつけて耶律洪基を教育しました。
重熙21年（1052年）。天下兵馬大元帥、知惕隱事（掌管皇族事務的官員），参預朝政になりました。
耶律洪基の性格は基本的には穏やか。普段は物静かですが、ときには厳しく毅然とした態度を取ることもあります。
皇帝になる
重熙24年（1055年8月28日）。興宗が駕崩。道宗 耶律洪基が即位しました。
道宗は治め始めた最初の方は、「率直な発言を求め、政治を進める」という方針で、農業の奨励や学校の建設、救災などに取り組みました。
耶律重元の乱（灤河の乱）
耶律洪基は即位後、耶律重元や耶律乙辛といった権力者を信用して、統治グループ内部での争いが激化していきました。
清寧9年（1063年）7月。耶律重元は病気を偽って道宗 耶律洪基を出猟に誘い、その途中で耶律涅魯古とともに耶律洪基を暗殺して自らの地位を奪おうとしました。しかし、敦睦宮使の耶律良がこの陰謀を発見。皇太后（仁懿皇后）を通じて耶律洪基に伝えました。
道宗 耶律洪基は信じませんでしたが、耶律良は耶律涅魯古を呼び出すように勧めました。もし耶律涅魯古が来ない場合は、陰謀が本当であるというものでした。道宗 耶律洪基は使者を派遣して耶律涅魯古を呼び出そうとしました。しかし耶律涅魯古は使者を殺そうとしました。使者は佩刀で帳幕を切って逃げ出して道宗 耶律洪基に報告。
これで道宗 耶律洪基は陰謀を信じるようになり、反乱を鎮圧するため兵を派遣。耶律重元を処刑しました。
咸雍二年（1066年）。道宗は国号を「大契丹」から「大遼」に変えました。「遼」に変えたのは２回めです。
ドラマや書籍では契丹国のことを「遼」と言ってることが多いですが。実際には半分以上の期間は「大契丹国」と名乗っていました。
耶律乙辛の横暴
やがて道宗 耶律洪基は狩りや仏教に夢中になり、寺院や僧侶への寄進に巨額の財政を費やし、趣味にのめり込むようになり。政治をおろそかにして耶律乙辛の独裁を許してしまいます。
耶律乙辛は権力を握るため有能な皇太子 耶律浚を敵視しました。
大康元年（1075年）。耶律乙辛は皇太子の生母・懿徳皇后の蕭観音と趙惟一が密通していると嘘の報告をしました。怒り狂った道宗 耶律洪基は事実を確認しないまま皇后に自殺を命令。趙惟一や高長命などの人々を処刑しました。
大康三年（1077年）。耶律乙辛は皇太子 耶律浚が謀反を起こそうとしている嘘の報告。道宗 耶律洪基は皇太子の言い分を聞かず彼を投獄しました。やがて耶律乙辛は太子を暗殺。太子が病死したと嘘の報告をしました。
道宗 耶律洪基は太子の妻を呼び寄せようとしましたが、耶律乙辛は太子の妻や子供たちを殺害して口封じをしました。
そして耶律乙辛は自分に近い皇后を立ててますます権力を握りました。
その後、ある姓李の女性が耶律洪基に「挟谷歌」という手紙を届け、道宗 耶律洪基は太子の子供たちを宮殿に連れて行きました。
しかし年老いた道宗は亡き皇太子を憶う心が強まり、その子の阿果を召して皇太孫にしました。道宗も徐々に耶律乙辛が信用できないのでは？と思うようになりました。
大康5年（1079年）7月。焦りを感じた耶律乙辛は道宗が狩りに出かけている隙に皇太孫を殺害しようと考えました。道宗は大臣たちの勧めで皇太孫を連れて秋の狩りに出かけ乙辛の陰謀を阻止しました。
大康7年（1081年）。道宗 耶律洪基は耶律乙辛に騙されたことに気づき、耶律乙辛とその支持者たちを罷免しました。
大康9年（1083年）。道宗 耶律洪基は故太子耶律浚を昭懐太子として追封。
その年の10月。耶律乙辛は武器を密輸して宋に逃げようとしました。しかし計画がばれて処刑されました。
これでようやく皇太孫の地位が安定し、道宗朝の政治の混乱は収まりました。
寿昌7年（1101年）。行宮にて崩御。享年70。
遺詔によって皇太孫の燕国王 阿果（天祚帝 耶律延禧）が継ぎました。
道宗の治世は、有能な皇子や臣下が迫害されたり、有力者同士の対立が続いたりして政治は乱れました。
また漢化政策の弊害で土地が有力地主に集まり貧富の差が拡大。民衆の不満が高まりました。東部では女真が力をつけていました。道宗の47年に及ぶ治世は遼を全盛から衰亡へ導いた半世紀と言ってもいいでしょう。
テレビドラマ
天龍八部 2013年、中国 演：王建新
孤城閉 2020年、中国 演：庫都斯江·艾尼娃爾
天龍八部 2021年、中国 演：於榮光
高潔なあなた 2021年、中国 演：樊霖鋒
中国のドラマ・テレビでは契丹名は使われず「耶律洪基」の名前で登場します。
天龍八部では宋を攻めて領土拡大を狙う野心的な皇帝として描かれますが。実際の道宗 耶律査剌（洪基）は宋との友好を保ち攻撃したことはありません。
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