『朱蒙』に登場する扶余の第二王子・ヨンポは、劣等感と野心の間で揺れ続ける“憎めないダメ王子”として物語を支えます。ドラマのヨンポは死亡せず、テソを支える左将軍となります。
この記事では、ヨンポの最終的な立ち位置、そこに至る心の変化、そして史料上の“弟王子”との関係までを整理し、彼の結末をわかりやすく解説します。
この記事で分かること
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ヨンポが最後にどの立場へ落ち着き、なぜ死亡描写がないのか
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追放や商人時代、父との再会を経て変化していく心の流れ
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左将軍としてテソを支える決断が持つ意味
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史料に見える“弟王子”のイメージとヨンポのキャラクター設定のつながり
チュモンのヨンポの最後はどうなる?
チュモンでのヨンポはドラマの中で死亡シーンは描かれません。テソを支える左将軍として戦に向かう姿が最後の場面となります。
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ヨンポがハッキリ「死ぬ」場面や、老後の描写は出てこない
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父クムワの最期に立ち会い、その言葉をきっかけに生き方を変え。テソを支える臣下となる。
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最終的には、王になったテソに命じられ左将軍として兄を補佐しながら漢との決戦に向かう
つまり、ヨンポは最後はテソと争う側ではなくテソを支える側に回ります。
その後の戦闘で戦死したのか生き残ったのか、その後どんな人生を送ったのかは本編では語られません。視聴者の想像に委ねられています。
ドラマ『朱蒙』のヨンポ王子
ヨンポは父はクムワ王、母は元王妃。兄は長男テソ、チュモンとは義兄弟の関係。史料には登場しないドラマオリジナルの王子。「優等生の兄と英雄チュモンにはさまれた二番手王子」というポジションです。
扶余の第二王子
兄テソと常に比べられてきたため、心の奥では強い劣等感を抱えていますが、表向きは自己顕示欲が強く「自分こそ太子に選ばれたい」と野心をのぞかせます。
一方で主体性は弱く、その場の空気や周囲の言葉に流されやすい“腰巾着気質”。酒と女に溺れがちで、軽率な行動も多く視聴者から見ると「残念な次男坊」です。
ただし、決して臆病者ではありません。戦の場では怖がりながらも剣を取って敵に切り込む場面もあり、人前で虚勢を張るだけの男ではないことが分かります。また、人懐っこさやおしゃべりの上手さで人脈を作るのが得意で、この“人たらし”な才能が後の商人時代につながっていきます。
序盤:ダメ次男&腰巾着としてのヨンポ
序盤のヨンポは「ダメ次男」。
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狩りや武芸の場面ではテソの足元にも及ばず、父クムワの信頼も薄い
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兄テソの後ろで威勢の良いことを言い、チュモンいじめにも加わるが、形勢が悪くなると真っ先に逃げ腰
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宴席では酒と女にうつつを抜かし、お調子者として描かれる
「優秀な兄テソ」と「伝説の英雄チュモン」に挟まれた劣等感まみれの次男――
それが序盤のヨンポの立ち位置です。
中盤:追放と商人としての再起
派閥争いや策の失敗が重なり、ヨンポはついに扶余を追放されます。
ここで彼は、若い頃に漢(前漢)へ人質として送られていた時代のコネを頼りに、漢で商人として再出発します。
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人懐っこさと話術で豪商や官僚とつながり、次第に財を築く
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「武力で勝てないなら、金で国を動かしてやる」と考え、財力で扶余に影響を及ぼそうとする
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扶余との交易や物資の流れを握り、政治に口を出そうとするが、逆に警戒される
最終的に、築き上げた全財産は扶余によって没収され、王子としても商人としても失敗。
ここでヨンポは、自分の「目先の利に飛びつき、長期的な視野を持てない」弱さと向き合わざるを得なくなります。
終盤:父クムワの死と「テソを支える弟」への転換
すべてを失ったヨンポは、国境近くの村で父クムワ王と再会します。
王としてではなく「父」として向き合うクムワは、
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金や地位だけでは守れないものがあること
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王族には「誰を支えるか」という生き方もあること
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テソを支える者として生きる道もあること
を静かに語りかけ、ヨンポに“生き方そのもの”を諭します。
しかしその夜、宿が刺客に襲われ、ヨンポは護衛とともに剣を取って必死に応戦します。
それでもクムワは深手を負い、のちに息を引き取ってしまい、ヨンポは父の最期を見届けることになります。
この経験を経て、ヨンポはようやく腹をくくります。
という選択です。
最終的にヨンポは、王となったテソの命を受け、左将軍として兄を補佐しながら漢との決戦に向かう立場を引き受けます。死亡シーンは描かれませんが、「一番になれない自分を受け入れ、二番手としての役割を選び取った」というところで、彼の物語は終わります。
ヨンポの“意外な強み”
彼は駄目な部分も多いですが、以外な強みがあります。
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人懐っこさ
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コネクション作りのうまさ
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人の懐に入り込むコミュニケーション能力
といった“人たらし”としての才能に優れ、商人として成功しかけた背景にもなっています。
長所と短所がごちゃ混ぜになったヨンポは、
そんな人間くさいキャラクターとして描かれます。もし王族でなく商人として生まれていたらもっと成功していたかもしれませんね。
チュモンのヨンポ役は誰?俳優・吹き替え情報
チュモンのヨンポ役は韓国の俳優ウォン・ギジュンさんが演じ、日本語吹き替えはビューティーこくぶさんが担当しています。
ヨンポ役の俳優:ウォン・ギジュン
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名前:ウォン・ギジュン(원기준)
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役柄:扶余の第二王子・ヨンポ
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特徴:
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コメディ要素の強い“ダメ二男”と
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終盤の哀愁ある表情・葛藤
この両方を行き来する演技が印象的で、「憎めないヨンポ像」を作り上げています。
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韓国ドラマファンのあいだでは、
「真面目な時代劇の中で、ヨンポが出てくると空気がちょっと軽くなる」
という意味でも記憶に残りやすいキャラクターです。
ウォン・ギジュンさんは現代劇への出演が多いですが、時代劇では他に「ホジュン 伝説の心医」でホ・ソク(ホ・ジュンの義兄)を演じています。
日本語吹き替え:ビューティーこくぶ
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日本語吹き替え:ビューティーこくぶ
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普段はものまねタレントとして知られていますが、ヨンポでは
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お調子者の軽さ
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小心者の本音
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終盤のしょんぼり感
をうまく声で表現しており、日本版ならではの“ヨンポの味”を出していますね。
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史実の金蛙王の息子たちとヨンポ王子
ヨンポ王子は史実には登場しない架空の人物ですが、ドラマの元ネタにもなった『三国史記』の高句麗建国神話には「テソの弟たち」が存在します。
『三国史記』は「歴史書+王権神話」が混ざった史料
ヨンポ王子は完全なドラマオリジナルですが、その背景には扶余や高句麗の王家をめぐる伝承があります。
その代表が、12世紀に編纂された官修史書『三国史記』です。
ただし、朱蒙(東明聖王)や大武神王の世代は現代の感覚でそのまま「史実」と言い切れる部分ではありません。
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卵から生まれる朱蒙
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川で魚や亀が橋を作る
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神がかった弓の腕前 など
明らかに神話的な表現が多く「王家の公式な建国神話・系譜伝承を歴史書に整理して載せたもの」と見るのが一般的です。
この記事でも「史実」とはせず、
という扱いで話を進めます。
『三国史記』が伝える金蛙王とその息子たち
『三国史記』高句麗本紀によれば、扶余の君主・金蛙王には朱蒙とは別に7人の息子がいたとされています。長男がドラマにも登場する帯素(テソ)です。
テソが高句麗第三代王・大武神王(ムヒュル)に討たれたあと、史書は次のような筋書きを伝えます。
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テソの“弟王子”が東扶余の王位を継ぐ
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しかし本拠地を守りきれず、曷思水(かっしすい)のほとりへ逃れる
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狩りに出ていた海頭王を殺し、その民を奪って曷思水周辺に新たな都を構える
この弟王子は後世の史家によって便宜的に「曷思王(かっしおう)」と呼ばれています。
また大武神王の子・好童王子が、曷思王の孫娘(大武神王の第二妃)から生まれたとされることから、扶余と高句麗の王家が婚姻で結びついていたとも伝えられます。
あくまで神話的要素の強い内容ですが。
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帯素(テソ)
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その弟王子(のちの曷思王)
という兄と弟の話は史料上も一応は残されているわけです。
曷思王とテソの弟王子
ドラマ『朱蒙』のヨンポ王子は、
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テソの弟にあたる第二王子
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扶余を追われ、他国(漢)で商人として生き延びる
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本国とは別の場所で自分なりの勢力や生き方を模索する
という人生を歩みます。
一方、『三国史記』の曷思王も
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テソの弟王子
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テソの死後に王位を継ぐものの、本拠地から離れて曷思水のほとりに新たな拠点を築く
という流れになっています。
という部分だけを見るとヨンポとどこか重なる部分があります。
曷思王はヨンポのモデルなのか?
結論から言えば、
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ヨンポ=曷思王がモデルと断言できる資料はありません。
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名前・性格・細かなエピソードもドラマの創作です。
でも、
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テソには弟王子がいる
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本拠地を離れ、新たな拠点で生き残ろうとする
といった「弟王子のモチーフ」は、『三国史記』の内容と似ています。
そのため
といえます。
まとめ:ヨンポ王子は失敗するから記憶に残るキャラ
ヨンポ王子は、「優秀な兄テソ」と「英雄チュモン」に挟まれた二番手王子として登場。
最後まで「劣等感」と「自己顕示欲」に振り回され続ける人物です。
一見するとみっともない役回りばかりですが、だからこそヨンポは憎めないキャラクターになっているといえます。
『朱蒙』を見直すときは、ぜひチュモンやテソという「主役級」ではなく、失敗しながらも最後に役割を見つける「ヨンポの視点」でも物語を追ってみてください。
新しいドラマの魅力が見えてくるはずです。

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