永昌大君(ヨンチャンテグン)は光海君を支える大北派に蒸殺された?

永昌大君（ヨンチャンテグン）は宣祖の息子。

宣祖の晩年になって初めて正室から産まれた男子。そのため産まれたときから後継者争いの原因になってしまいました。

重臣たちは永昌大君を支持する者と、光海君を支持する者にわかれて争います。

その権力争いが永昌大君の命も奪ってしまいました。

史実の永昌大君はどんな人物を歩んだのか紹介します。

永昌大君(ヨンチャンテグン)の史実

永昌大君のプロフィール

日本では江戸時代の人になります。

家族

彼は朝鮮王朝（李氏朝鮮）の主に14代宣祖の息子です。

おいたち

1606年4月12日。宣祖と仁穆王后の間に産まれました。

父：14代国王 宣祖

朝鮮 14代国王

既に宣祖には多くの息子がいましたが全て側室の子供(庶子)でした。永昌大君は正室の産んだ最初の嫡子です。

宣祖は55歳にして初めて生まれた嫡子に大変喜びました。

王位継承者の候補にされてしまう

そのため宣祖や柳永慶(ユ·ヨンギョン)ら一部の重臣たちは永昌大君を次の王にしたいと思うようになりました。

既に光海君が王位継承者に決まっています。それでも永昌大君が候補になったのは理由があります。

それでも側室の子の中では最も功績が大きく年長者（素行の悪い臨海君は除く）だった光海君を世子にふさわしいという重臣もいました。

かつて日本が攻めてきたとき、急に後継者を決めなければいけなくなったので宣祖も仕方なく光海君を世子にしてしまいました。

でも正室に男子が生まれれば話は別です。

宣祖は領議政の柳永慶（ユ・ヨンギョン）ら重臣と永昌大君を世子にできないか相談したのです。

その結果、重臣たちは光海君指示派と永昌大君指示派に分かれてしまいます。特に北人派は真っ二つに分裂してしまいました。

• 大北派：光海君を世子にしたい。
• 小北派：永昌大君を世子にしたい。

宣祖は自分の死後を心配して、永昌大君を保護するため韓浚謙（ハン·ジュンギョム）ら７人の重臣に永昌大君を託しました。韓浚謙たちを遺敎七臣といいます。

大北派は世子を変えてはいけないと主張しましたが、小北派によって流刑になってしまいます。

大北派と小北派の争いは小北派が勝ちました。このまま成長すれば永昌大君が王になるかに思えました。

ところが宣祖が死んでしまいます。このとき永昌大君はまだ2歳。仁穆王后が摂政をするにしても幼すぎます。

宣祖の没後に争いの犠牲に

結局、永昌大君を王にするのは現実的ではないとして光海君が王になりました。

このとき政治の実権を握っていたのは大北派。大北派は光海君とともに壬辰戦争を戦い抜き人々の指示を得て朝廷内でも大きな力を持っていました。宣祖が亡くなって大北派を抑える者はいなくなりました。

さらに大北派の李爾瞻らが柳永慶を弾劾。小北派を死罪や流罪にしました。

1611年（光海君3年）。このとき永昌大君の称号が与えられました。しかし永昌大君を守る者はもういません。

1613年。仁穆大妃の父・金悌男（キム・ジェナム）、つまり永昌大君の祖父が謀反の罪で捕らえられました。大北派に濡れ衣を着せられ処刑されました。

永昌大君は身分を奪われて庶民になり江華島に島流しになりました。

大北派は永昌大君の死刑を訴えましたが、光海君は拒否しました。

1614年。

永昌大君は死亡しました。9歳の幼い命でした。

蒸殺処刑か毒殺か？

永昌大君（ヨンチャンテグン）の最期には二つの説があります。

「蒸殺」と「毒殺」です。ややこしいことにどちらも朝鮮王朝の記録に出てくるのです。

蒸殺処刑

蒸殺の根拠は「光海君日記」に登場するからです。
「光海君日記」とは「王の実録」に相当する記録。光海君は廃されたので「王ではない」ことになってます。そのため光海君時代の記録は「光海君日記」としてまとめられました。

光海君日記によると1614年。李爾瞻（イ・イチョム）ら大北派は永昌大君を殺害しようとしました。

命を受けた江華府使 鄭沆は永昌大君の食べ物に砂を混ぜ食べられないようにしたり、永昌大君が幽閉されていた小屋のオンドルを熱くしてて寝られないようにしました。

永昌大君はやがて衰弱して死んでしまいます。

光海君は処刑は拒否しているのであからさまな殺害はできません。徐々に弱らせて死亡させる方法をとったのでしょう。

光海君のもとには病死したという報告が届いたということです。

毒殺説

毒殺したと書かれているのは王朝の「仁祖実録」。こちらも朝鮮王朝の公式記録です。「光海君日記」が光海君時代の記録をまとめたものなのに対して。

「仁祖実録」は仁祖時代の記録をまとめたもの。一部光海君時代と時代が重なっています。

仁祖実録によると、永昌大君は光海君の密命をうけた李廷彪が永昌大君の食べ物に毒を混ぜて殺害したことになってます。

つまり毒殺です。

「仁祖実録」は仁祖を正当化するために光海君をより悪く描いているため、「光海君の命令で毒殺」したのは光海君を暴君にするための捏造の可能性もあります。

永昌大君の死因については、議論の余地がありそうですね。

一般には蒸殺・光海君を悪く描く時は毒殺

一般には「蒸殺処刑」がよく知られていますが、光海君をより悪く描きたい時は「毒殺説」が採用されるようです。

まとめ

永昌大君(ヨンチャンテグン)は朝鮮王朝14代王・宣祖の嫡子として生まれました。宣祖にとって唯一の嫡子のため次期王位継者と注目されたこともありました。

でも異母兄の光海君が王位につくとその生涯は悲劇へと変わります。

幼くして江華島に流され、わずか9歳でこの世を去った永昌大君。その死因は大北派による蒸殺説と、光海君の命令による毒殺説に分かれています。

どちらが本当なのかは不明ですが、いずれにしても永昌大君は政治の陰謀に巻き込まれ悲劇的な最期を遂げたことは間違いありません。

永昌大君の短い生涯は朝鮮王朝の権力闘争の残酷さを物語る悲しいできごと言えるでしょう。

テレビドラマの 永昌大君

宮廷女官金尚宮　KBS　1995年　演：チェ・ガンウォン
王の女　SBS　2003年　演：カン・サン
王の顔　KBS　2014年　演：ソル・ウヒョン
華政　MBC　2015年　演：チョン・ジョンソ
王になった男　tvN　2019年　演：イ・ジュオン　役名：敬仁大君　
ノクドゥ伝　KBS　2019年　演：ソ・ウンユル