韓国時代劇には色とりどりの服装を来た役人たちが出てきます。
服の色はどんな意味があるのでしょうか。
李氏朝鮮王朝の大臣や役人は官服を来ています。官服とは宮廷で働く時に着る制服のようなものです。
官服には位の違いによって色が決められています。高麗と李氏朝鮮では服の色もデザインも違いますし同じ王朝でも時代によって色が違います。
身分によって着ていい服、着ては行けない服がありました。
ドラマでよくみかける李氏朝鮮王朝、中期以降の服の色と身分の関係を紹介します。
朝鮮王朝の官服の色
大臣や役人の着る服は官服といいます。女性の着る服(チマチョゴリ)、庶民の男性が着る服(バジチョゴリ)が朝鮮伝統のもの。
官服は中国とほぼ同じデザインです。明の服をモデルに作ってあるからです。
官服の色は品階で分けられています。品階とは、正一品、正二品という位のことです。
領議政、判官とか役職で分けているわけではありません。
王 赤(重臣の赤とは微妙に違うようにも見えます)
朝鮮王室を象徴する赤は濃いめの赤。日本で高貴な色は紫のイメージですが、儒教で最も高貴な色は濃い赤なのです。
王族 あずき色
役人
正一品~正三品 赤色
いわゆる重臣、大臣
従三品~従六品 青色
中堅の役人、現場で指揮するのもこのクラス。
英祖の時代、支払い用の銀が不足したので中国産の青色染料の輸入が禁止されました。青色は国産の藍染めで代用しています。
正七品~従九品 緑色
下級役人。
内官、女官にも色分けはあります。実際には細かく分かれていたようです。大まかな色分けを紹介します。
内侍府(内官)
位が高い順から紫・青・灰色・水色と分かれています。
胸章・肩章にもルールがある。
官服には胸章がついています。
模様も決まりがあります。
王様は龍。
王妃は鳳凰。
文官は鳥。
武官は四本脚の獣です。
位によって鳥や獣の種類も変わるようです。
王と世子、大妃、王妃、世子嬪には肩章が付いています。
その他の王族や側室、役人の服には肩章はありません。
女官の服の色
上着(チョゴリ)とスカート(チマ)で色が違います。
尚宮
正五品
上着・薄緑 スカート・藍色
「チャングム」の水剌間(スラッカン)でチャングム達と一緒に料理を作っている尚宮の衣装の色です。
提調尚宮(女官長)、監察尚宮など官職の付いた上級の尚宮や王様のお手つきになった尚宮などは濃い緑の上着、青いスカートを着ます。
上の画像ではチョゴリの上に唐衣という衣装を着ています。尚宮の正装です。「チャングム」では薄緑色のチョゴリを着た尚宮が調理していました。唐衣を着ていない尚宮がドラマに出るのは他ではあまり見かけませんね。
尚儀(内人・宮女ともいいます)
従五品以下
上着・淡い赤 スカート・藍色
ドラマでは女官と呼ばれる人達。
「チャングム」で水剌間(スラッカン)の女官が着ていた赤い服を思い浮かべはイメージできると思います。
チャングムが緑の服を着ている画像もありますがキャラクターのイメージ優先で作ったもののようです。
センガッシ・エギナイン
品階なし
見習いの女官
上着・薄いピンク スカート・青
子供時代のチャングムが宮廷で着ていた服の色。
鮮やかな色は高級品
李氏朝鮮には良質な染料がなく中国から染めた布を買っていたといわれます。そのため色のついた服は高級品でした。
藍やくちなしなどの染料は朝鮮国内でもありました。藍色、茶色、山吹色などは朝鮮産が出回っていたようです。
でも朝鮮の人達は鮮やかな色が大好きです。王族や大金持ちは大金を出して鮮やかな布を買って衣装を作らせていました。
たとえば。上流階級の場合。
未婚の娘は山吹色のような黄色のチョゴリに朱色のチマ。
新婚の女性は黄緑色のチョゴリに朱色のチマ。
子供のいる女性は青みがかった緑色のチョゴリに藍色のチマ。
という衣装を着ていたとも言われます。
申潤福の美人画に描かれる色とりどりの服を着た女性は妓生や特別なお祭りの日に着飾った上流階級の女性が多いです。庶民が日常的に色とりどりの服を着ていたわけではありません。
両班であっても衣装は単色染めが多かったようです。模様(刺繍)の付いた衣装が着られるのはかなりの大金持ちか王族に限られました。
両班も白い服が多かった
儒教を学んだ両班は白か単色染めの衣装を着ていました。色は青、黄、褐色です。色物は藍やクチナシでそめたものが多かったようです。
清潔感のある白い服は潔白、優美だとして白い服を好む両班もいたようです。
色物はありましたが、一番好まれたのは白です。普通は白をよく来たようです。しかし特別なとき格式が必要なときには、水色、薄茶色、灰色、薄黄色の衣装も来ました。
やはり色物は高価なので日常的にはあまり着ないのでしょう。
絹は同じ重さの金と交換できるくらい貴重でした。絹の服はお金持ちの証拠なのです。絹の服=光沢のある服を着ている人は大金持ちと思いましょう。
15世紀ごろ木綿が普及し麻布にかわるようになりますが朝鮮後期になると木綿は衰退します。綿織物の技術は高麗よりも衰退しており粗悪品が多かったようです。
つまり、綿織物の技術は時代が進むと技術が落ちてしまうのです。
高麗時代には織物の技術が発達して人々の衣装もよくなりました。しかし李氏朝鮮時代は職人が差別される時代。衰退する技術もあったようです。
残念ながら、絹織物などの職人技が必要な技術は李氏朝鮮よりも高麗の方が進んでいたようです。
かわりにさかんだったのは麻織物でした。白い麻織物は中国や日本に輸出されました。白苧布(しろあさぬの)といいます。両班が好んだ白です。
両班の夏服
出典:韓服の特徴と韓国伝統織物の韓山モシの技術伝承
ドラマでは両班が日常でも鮮やかな色の衣装を着ています。でもそれは「一般的ではない」のです。
庶民は派手な色の服を来てはいけない
李氏朝鮮は身分制度の厳しい国です。庶民は絹の服、色のついた服、模様の付いた服を着るのが禁止されていました。白ならまだいいほうです。脱色していない麻の服だとアイボリーというか黄土色がかった色になります。
つまり染色された服を着ているだけで身分が高いことが分かるのです。
英祖の時代以降になると身分制度の崩壊とともに規制はゆるくなったようです。常人でも青、黄、褐色の上着を着ることがありました。ただし漢城など大都市に限られます。地方ではなかなか手に入らなかったようです。もちろんドラマのように原色に近い鮮やかな色はありません。
淡い色がついている。程度の着色です。
ドラマを見てるとわかりませんが。朝鮮の人々は自らを「白衣民族」と呼ぶくらい白い服を来ている人が多い国でした。
儒教思想の影響で「白は清廉潔白を意味するから」と説明されます。
でも染色の技術や高級染料がない。という事情もあるようです。
鮮やかな色の服を着ている人ほど身分が高い。お金持ち。と思ったほうがいいかもしれませんね。
韓国ドラマの衣装が鮮やかなのはTVの演出だから
ただし、いくら色のついた衣装があるといっても現代の衣装とは違います。テレビドラマのような原色に近い鮮やかな色はありません。
ドラマ用の衣装や現代のチマチョゴリは合成繊維を合成染料や蛍光染料で染めています。現代の技術で見栄え良く作ったものです。もちろん当時の服をそのまま再現しているのではありません。不自然なほど光沢があり鮮やかです。天然素材で染めた衣装はもっと落ち着いた色合いになるのです。
とはいえ。
TVドラマは目で見て楽しむもの。地味だと視聴者に興味を持ってもらえません。韓国時代劇はファンタジーなのです。「色の鮮やかさ、衣装の豪華さはテレビの演出」と割り切って「色で身分を区別していたんだな」くらいのつもりで見るのではないでしょうか。
コメント
私は、朝鮮史を日本の公立学校で中国史のように詳しく学んだ記憶がありません。20年前位に興味を持ち
子供達と図書館に行き、一冊の本を見つけました。確か、「教科書で教えてくれない朝鮮史」大阪のとある
高校教師の書いた本だったと思います。 それから、韓国ドラマや韓国の友人、観光旅行、朝鮮史を勉強
しました。このドラマ史実は韓国歴史ドラマと関連付けて 大変分かり易く勉強になります。竹島は独島。
昔、昔は朝鮮の島だったと思います、位置からしても日本列島から離れすぎです。
KimcheeMomさんこんにちは。記事を読んでくださってありがとうございます。どこの国でも外国の歴史を詳しく教えることはないと思います。日本が中国の歴史を教えているのは世界的には珍しいことではないでしょうか。外国の歴史に興味があるなら自分で調べるしかないのかもしれませんね。