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中国韓国時代劇に「予言で王になる話」が多い理由

予言 e ドラマが分かる歴史の知識

中国韓国時代劇を見ていると「予言された人物が王になる」話がよく出てきます。

「王になる予言」を裏返した「予言された人物が不幸をもたらす」も含めると「予言」がキーワードになるドラマは多いです。

なぜそんなに「予言」が出てくるのでしょうか?

もちろんストーリーを作るときに「予言」が便利だから。登場人物をいきなり理不尽な状況に追い込むことができますし。「この人が王になる理由」を劇中で演出しなくても「予言だから」ですませられます。お手軽な仕掛けには違いありません。

でもいくらドラマを作りやすいからといって見る側がシラケたら意味がありません。

中国韓国時代劇で「予言」が頻繁に出てくる理由は、

中国や韓国では予言は信じられていた(いる)。

予言を利用する文化があった。

という証明です。

でも中国や韓国では予言はリアルなのです。

そうなった理由は中国の歴史にあります。王朝を動かしてきた実績があるのです。

予言が中国王朝に深く関わるようになった歴史を探っていきましょう。

 

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神に選ばれた者が地上の支配者になるしくみがある

天子は神(天)に認められた人

いきなり結論。
中国王朝は「神に選ばれた者が地上の支配者になる」しくみです。

日本やヨーロッパの王朝みたいに血筋はあまり問題ではありません。

そして。

地上の支配者を選ぶ神を (てん)といいます。
天の命令を受けた人が 天子(てんし)です。
天子が国の君主になると皇帝といいます。

普通は天子は皇帝を兼ねています。

「天」の崇拝を始めたのは中国人ではなかった

「天」はもともと遊牧民が信仰していた天空の神。遊牧民は「首長の座は天から与えられた」と考えていました。

古代「周」の時代(約3千年前)。黄河流域の中原王朝(中国)に天の信仰が伝わりました。周では君主の称号を「天子」にしました。

その後、始皇帝が「皇帝」の称号を採用。
漢の時代に皇帝=天子になりました。

漢の武帝は始皇帝のような独裁的な皇帝を目指して国内を支配しました。そこで自分の権力を正当化する理由が欲しくなりました。

儒教国家「漢」が予言で皇帝の始まり

権力者のお悩み解決「儒教」

漢王朝は最初は儒教は採用していませんでした。孔子の作ったオリジナルの儒教は天子の地上支配を正当化してないので君主には人気がなかったのです。

そこで儒教を広めている「儒家」は皇帝に取り入ろうと新しい教えを作りました

そして皇帝の悩みをみごと解決しました。どんな教えを作ったのでしょうか?

天が地上の人間に警告する

天は徳のある人を選んで天子に任命。地上世界の統治を任せます(これが天命)。

天が行うのは皇帝(天子)の任命だけではなく皇帝になったあとも問題があったら天が警告します。

皇帝がよい政治をすると天は吉兆を起こして祝福します。

例えば普段はいないような珍しい動物が現れる。珍しい自然現象が起きる。それは皇帝が善政を行っている証拠。

逆に皇帝が悪い政治をすると天は災害を起こしたり凶兆によって皇帝に警告を与えます。

疫病、日照り、地震、日食など天災、戦争は、皇帝がよくない政治を行った徳がない証拠。

儒教では天災は人災なのです。

こうなると皇帝は天に謝罪します。これが「私の不徳のいたすところ」の本当の意味です。

「革命」とは天の命令が新しくなること

でも皇帝が悪い政治を続けると天は徳のない皇帝を見限って徳のある人物に天子の座を与えます

天の命令が新しくなるので「革命」と言います。は革(あらた)まる。は天の命令です。

このストーリーは斬新でした。徳さえあれば血筋に関係なく誰でも皇帝になれるのですから。

でもどうすれば「徳」があるのが分かるのでしょうか?

それは。

新しく皇帝(天子)になった人が徳のある人です。

徳のある人を探してその人を皇帝にするのではありません。

即位正当化するための理屈なのです。

だから
「秦が滅んだのは徳がないから天が見放したのだ」
「劉邦には徳があって天から認めたから漢が建国できたのだ」

となります。

儒教と権力の癒着でオカルト化が進む

儒教は漢に採用されました。

武帝より後。漢の皇帝が代を重ねるごとに権力と儒教の癒着が進みました。

オカルト化が進んだ儒教はスポンサーの漢王朝を正当化するため。孔子を神格化してその権威を利用。「孔子が漢の誕生を予言していた」という偽予言を作りました。

もちろん漢が誕生した後に作った偽予言です。

天の意思。予言。2つのキーワードが漢の正当化に使われました。

偽物だったにしても予言が王朝を正当化する。という実績を作りました。それなら「同じ方法で新しい王朝を作れるじゃないか?」と考える人が出てきて当然です。

 

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予言で誕生する王朝

予言で皇帝になった男・王莽(おう・もう)

そして予言で皇帝になった人物が現れました。

前漢を乗っ取って新を建国した王莽(おう・もう)です。

前漢末期。国はすでにボロボロ、漢に愛想を尽かしている人も大勢いました。

謀反を正当化する理屈=革命」はすでにあります。

あとは王莽が革命にふさわしい人物だ。と人々に信じ込ませればいいのです。

王莽は偽の予言を作って広め皇帝になりました。

前漢は自分が採用した理屈で滅びました。

でも王莽は国の統治に失敗。新は15年で潰れました。

後漢の光武帝 劉秀も予言で即位

次に建国したのは光武帝 劉秀(りゅう・しゅう)後漢です。

劉秀も皇帝になるため予言を利用しました。前漢・新のオカルト儒教をさらに改良して広め。逆に漢に都合の悪い予言は処分、漢だけが正しいという予言を残しました。

儒教は後漢の国教になりました。

新と違うのは後漢が200年近く続いたこと。

そして漢が滅んだ後も。

徳のある者を天が天子(皇帝)に任命する。
天が吉凶・凶兆によって皇帝の政治の良し悪しを知らせる。

というストーリーは後の中華王朝が引き継ぎました。これ以外にも儒教が権力者に都合のいい理由はありますが予言とは関係ないので省略します。

中華王朝は儒教なしではやっていけない体質になってしまいました。

道教がさらに予言を広める

後漢の時代に道教が誕生。道教は庶民に広まりました。

道教の教祖たちは王朝が自分たちを正当化した方法を使って教団や自分たちを正当化しました。神のお告げや予言は民衆に信じ込ませるよい手段でした。

古代から世界中にシャーマニズムあって神や霊のお告げは普通に信じられていました。中国や朝鮮半島も同じです。とくに難しい教えの宗教に馴染みのない庶民は占い師の言葉に惑わされやすく。予言とか神のお告げを信じやすいです。

こうして「予言の話」は庶民にも広まりました。

そして現在

中国では王朝は神の意思で誕生する設定です。国そのものが新興宗教と同じ理屈で正当化されています。

権力者が予言を使うのは謀反を正当化するため。
庶民が予言に頼るのは一発逆転で今の苦しい状況を変えてほしいから。

中華王朝の思想をそのまんま受け継いでいる朝鮮半島の王朝も同じです。違うのは「天子」「皇帝」の言葉が使えないところです。

天の意思があるというならその意思を知りたいと思うのが人情というもの。そんな社会ではどうしても神の声や予言に敏感になってしまいます。

そして2000年の刷り込みは王朝がなくなっても簡単には消えません。文化として生き残っています。中国韓国時代劇では普通に「天」というセリフが出てきますし、視聴者も違和感なく受け入れています。だから「予言」がネタになりやすいのです。

 

最初書いた記事はもっと長かったのですが。長くなるので短くしました。後日、詳しく書いた記事をアップします。もっと詳しく知りたい方はお楽しみに。

 

 

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