林堅味(イム・ギョンミ)は高麗の重臣。
韓国ドラマ「六龍が飛ぶ」に登場したキル・テミのモデルになった人物です。
ドラマでは派手な外見のニューハーフ的な剣士として描かれました。実在の林堅味(イム・ギョンミ)は剣士ではなく軍を指揮する武将です。林堅味が女性的だったという記録はありませんが嫉妬深い性格だったと言われます。
キル・テミのモデルになった林堅味(イム・ギョンミ)を紹介します。
林堅味(イム・ギョンミ)の史実
生年月日:不明
没年月日:1388年1月
名前:林堅味(イム・ギョンミ)
父:林彦修
母:不明
妻:不明
子:寄託
彼が活躍したのは高麗の恭愍王~禑王の時代です。
日本では室町時代の人になります。
おいたち
林堅味(イム・ギョンミ)の家系は権門勢家ではありません。権門勢家とは高麗の特権階級です。
高くはない身分の出身でしたが武人になって手柄を立てて出世しました。
恭愍王の時代(1351~1374年)。于達赤になって手柄を立て、中郞将(正五品相当)になりました。于達赤とは護衛部隊。モンゴルの組織を参考に作られました。
紅巾の乱
1362年(恭愍王11)。中国各地で紅巾之乱がおこります。紅巾軍は高麗にも攻めてきました。
首都・開京は紅巾軍に占領され、国王は南部の福州(慶尚北道安東)に避難しました。林堅味は王を護衛しました。
林堅味は「各州から軍を集めて討伐しなければいけません」と懇願。重臣や恭愍王は最初は相手にしませんでしたが、最終的に恭愍王の命令で全国から20万の兵が集められ討伐軍が編成されました。崔瑩(チェ・ヨン)、李成桂(イ・ソンゲ)たち将軍の働きで高麗に侵入した紅巾軍は鎮圧されました。
王の護衛が評価され。翌年、大護軍(従三品)に昇進しました。都兵馬使(国防担当、正三品)になりました。
その後、典理判書(正三品)になって内政を担当しました。
明の誕生と元の衰退
1368年(恭愍王17)。朱元璋(しゅ げんしょう)が即位して明王朝が誕生。明軍が元の首都・大都(北京)を包囲しました。
高麗にも戦火が及ぶかもしれないので平安道(朝鮮半島北部)の軍を指揮して様子を見守りました。幸いにも高麗が戦場になることはありませんでした。
元が弱体化したのを好機とみた恭愍王は元に奪われていた遼東を取り戻そうとします。
1370年(恭愍王19)。李仁任(イ・インイム)を総司令とする高麗軍が遼東の東寧府を攻撃。東寧府は元が遼東支配のために造った部署です。
林堅味や李成桂もこの戦いに参加しました。東寧府を落城させ、取り戻したかに思えました。しかし明に占領されました。
1374年(恭愍王 23年)。都巡問使になりました。
甲寅の変
1374年。済州島(耽羅)で反乱が起こりました。
済州島は馬を育てるのによかったのでモンゴル人は済州島に牧場を作り馬を飼っていました。モンゴル人は現地の耽羅人と一緒に暮らし現地人と結婚する人もいました。
耽羅国はもともと高麗の属国でしたが、このころには高麗に編入されて済州と呼ばれていました。
高麗から派遣された役人の取り立てが厳しく現地人は差別的な扱いを受けていました。
モンゴル人は不満を持っていた現地人を扇動して反乱を起こしたのです。
高麗は討伐軍を編成して反乱を鎮圧しました。
この戦いでも林堅味は崔瑩、李成桂たちとともに鎮圧軍に参加しています。
牧胡の乱ともいいます。
禑王の時代
恭愍王が親元派に暗殺され禑王が即位しました。
1375年(禑王1年)。モンゴル人を母に持つ高麗王族の篤朶不花(トグトア・ブハ)が王位を主張して反乱を起こしました。国境を越えて高麗に侵入したので高麗軍が出陣。鎮圧しました。このときも林堅味は崔瑩、李成桂たちとともに参戦しています。
1377年(禑王3年)。倭寇が高麗に侵入したので撃退しました。
林堅味は曺敏修(チョ・ミンス)らとともに王宮護衛の役目につきました。
以後、開京王宮に常駐します。
権力を手にして横暴になる
1380年(禑王6年)。李仁任(イ・インニム)とともに政敵の慶復興とその勢力を排除しました。
門下侍中になりました。門下侍中とは李氏朝鮮時代の領議政と同じ。現代の首相に似た立場です。
林堅味は李仁任とともに権力の頂点にたちました。
禑王が呼び出しても病気を理由に出席しないこともありました。人事権も独占し
李仁任、廉興邦(ヨム・フンバン)、池奫(ジ・ユン)らとともに高麗の権力を独り占め。官職や位を売買し、民衆の土地を搾取するなどの横暴を働きます。
しかし禑王は彼らの横暴に耐えられなくなり、崔瑩、李成桂を味方にして李仁任らの勢力を排除しようと考えます。
1388年正月。
廉興邦(ヨム・フンバン)が横領の罪で逮捕、拷問で罪を自白させられます。
禑王は崔瑩、李成桂に軍を動かすように命令。林堅味は李仁任とともに逮捕され処刑されました。
テレビドラマ
鄭道傳 KBS 2014年 演:チョン・ホグン
六龍が飛ぶ SBS、2015年 演:パク・ヒョクグォン(キル・テミは林堅味を大幅に脚色した人物。
韓国ドラマ「六龍が飛ぶ」ではキル・テミの名前で登場。剣の達人ですが派手な外観とニューハーフのような言葉遣いの人物として描かれました。
林堅味本人は剣の達人というより、軍の司令官として活躍した人物です。朝鮮時代に書かれた書物では嫉妬深く、卑劣な人物と描かれることもありました。そのようなイメージもあったのでドラマではさらに極端に脚色したのでしょう。
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