韓国ドラマ「ヘチ・王座への道」の放送で注目されたのが「ヘチ」という言葉。
これは古代中国の伝説上の動物の名前です。
漢字で書くと 獬豸(かいち)
獬豸の韓国語読みが「ヘチ」です。
獬豸は朝鮮にも伝わり、特別な生き物と考えられました。
ヘチとはいったいどういう生き物なんでしょうか?
なぜドラマのタイトルになっているのか紹介します。
ヘチとは
ヘチは伝説上の生き物。漢字では 獬豸(かいち)と書きます。
朝鮮では獬豸をヘチ、ヘテと発音します。
もともと 獬豸(かいち)は古代中国の伝説上の生き物です。
紫禁城の獬豸はこんな形です。
胴体は牛または羊。体は黒く、頭には一本の角があります。
なんとなく麒麟(きりん)に似ています。
獬豸(かいち)は非常に正義感の強い生き物で不正が許せません。人の争いが起こると正しくない人を角で突き倒し殺します。
この逸話から、正義や公正を意味する生き物になりました。
日本の狛犬に似ていますが別物です。ネット上でもたまに狛犬の元になったと書かれている時があります。でも間違いなんですよ。
狛犬のもとになったのはライオン(獅子)の像。角のある狛犬は古代中国の辟邪(へきじゃ)の像の影響をうけています。辟邪とは魔を払うという意味です。
辟邪の像のモデルになってるのは貔貅(ひきゅう)という一本角の伝説上の動物。貔貅(ひきゅう)は悪い気や悪霊を追い払う伝説上の動物です。風水でもよく使われます。
獬豸(かいち)は悪霊祓いの動物ではなくて、正義を守る動物。役目が違います。
でも江戸時代のそそっかしい作家が「角のある狛犬は獬豸かもしれない」と書いたことから誤解する人が出てきました。江戸時代の書物に書いてるからといって正しいとは限らないのですね。というより江戸時代に書かれたものは嘘が多いので注意が必要です。
似てるからといって同じとは限りません。
注意してくださいね。
さて。法を守る正義の動物・獬豸(かいち)は朝鮮にも伝わり獬豸(ヘチ・ヘテ)と呼ばれました。
ところが朝鮮ではなぜか角がない形で像にすることが多いです。
羊みたいです。
紫禁城にある獬豸(かいち)とかなり違います。
でも朝鮮ではこれが獬豸(朝鮮ではヘチと発音)です。
なぜ角が無くなってしまったのかはよくわかりません。
朝鮮でも書物には角があると書いています。漢字が読める人は獬豸には角があると知っていたはずです。
でも像にすると角がなくなってしまいました。
つまり像を発注した人や作った人は獬豸に角があるのを知らなかったのでしょう。
それか。
技術的な問題から角やでっぱりのある石像は作れなかった。のかもしれません。
悪人を突き倒す角がなければ獬豸の役目ははたせません。頭突きで悪人を倒すのでしょうか?単に動物の像が正義の象徴だと思っていたのでしょうか?獬豸の意味が十分に伝わってなかったようです。
なぜ中国や朝鮮では法を守る動物が必要なの?
獬豸は古代中国では法治の精神を意味する言葉として使われました。
実際に法が守られているかどうははともかく。人間社会では法律を守るのが大切です。そうでなければみんなやりたい放題、不正がはびこります。それは昔も今も変わりませんよね。
だから中国や朝鮮では獬豸のような法を守る動物が人気があったのです。
獬豸は日本にも伝わりました。でも人気が出ませんでした。
辟邪(角のある狛犬のモデル)のように悪霊をはらうもの。麒麟のように縁起のいい生き物は人気が出ました。法を守る動物といってもいまいちありがたみがありません。
逆に言うと。法を破る人が多いから法を守らせるための戒めが必要。人間を超越したものに監視してもらわないと法が守れない。のかもしれませんね。
「悪戯をすると鬼が来て食べられるよ」というのと同じです。
つまり朝鮮の朝廷や役所ではそれだけ不正がはびこっていたということです。
そのへんの問題はドラマ「ヘチ」でも表現されていて、役人が不正を働いていたり。ドラマの最後には腐敗した役所を正すため、英祖が役所の改革をすると宣言をしています。
実際の王たちも苦労していたようです。
なぜヘチがドラマのタイトルなの?
韓国ドラマ「ヘチ・王座への道」ではヘチは「司憲府(サホンブ)の役人」を意味します。
司憲府は役人の不正を取り締まる組織です。
司憲府は政治の派閥争いに左右されることなく法を守る人々と考えられています。
ドラマの中では司憲府も腐敗していて、役人たちが権力者の言いなりになったり。自分の出世のことばかり考えて他人を犠牲にしています。
そうした腐敗した役所では駄目だと奮闘するのが主人公イ・グムとペク・ドンスら仲間たち。
ヘチの精神を守る役人でありたいという意味が込められています。その精神を実現するための苦難の道のりがドラマになってます。
非常に深い意味を持つヘチはドラマでもいたるところに出てきます。
ドラマを見ながら王宮にひっそりとたたずむヘチの像を探してみてはいかがでしょうか?
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