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ホン・ギルドン(洪吉同)、義賊・洪吉童のもとになったのは実在の詐欺師だった?

朝鮮の人々 6 李氏朝鮮の人々

ホン・ギルドン(洪吉同)は林巨正(イム・コッチョン)、張吉山(チャン・ギルサン)とともに朝鮮三大盗賊といわれます。

宣祖時代に許筠(ホ・ギュン)が書いた小説・洪吉童(ホン・ギルドン)のモデルになった盗賊です。

ホン・ギルドン(洪吉同)は実在した盗賊です。でも、迫害された庶民のために戦う英雄としてのホン・ギルドンは小説・洪吉童伝のストーリーが元になっています。

史実のホン・ギルドン(洪吉同)はどんな人物だったのか紹介します。

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ホン・ギルドン(洪吉同)の史実

いつの時代の人?

生年月日:1443年?
没年月日:1510年?

名前:洪吉同(ホン・ギルドン)
父:洪尙直
母:玉英香

異母兄弟
洪貴童
洪逸童

彼が生きたのは朝鮮王朝(李氏朝鮮)の主に10代燕山君の時代です。

日本では室町時代の人になります。

 洪吉同の生まれについての疑問

通説では父は全羅道の役人・洪尙直。母は妾の玉英香だといわれます。

父は両班でしたが母の身分が低いので両班にはなれませんでした。

正確な生年はわかりません。洪吉同の父といわれる洪尙直は、朝鮮王朝実録によると1424年に民を迫害した理由で逮捕され斬首になるところを釈放されたとあります。釈放後は療養生活をおくり、1224年に死亡したことになってます。

1228年には洪尙直の正妻・文氏が洪尙直の墓の近くにお堂を建てて暮らし、喪の期間が終わってもその場を離れないという記録があります。

歴史上は洪尙直は1224年に死亡したことになってます。

でも洪吉同が生まれたのは1443年といわれています。
洪吉同には異母兄弟の洪貴童、洪逸童がいます。兄弟は同じ漢字を使うのが習慣ですが、洪吉同だけ漢字が違います。

つじつまがあいません。

そこで「洪吉同は洪尙直の息子ではない」とか「洪尙直の死亡した年代が間違ってる」など様々な説がでています。韓国学会でも意見はまとまっていません。

歴史上は、燕山君時代に盗賊団の頭になって世間を騒がせました。

朝鮮王朝実録に1500年(燕山君6年)に「洪吉同を捕らえた」との記録があります。

洪尙直が生きていたのは全羅道ですが、朝鮮時代の全羅道には洪吉同が活動していたという記録はありません。

本当に洪吉同の父は尙直なのか?という問題があります。

盗賊・洪吉同の活動

歴史の記録では洪吉同は忠清道で活動していたようです。

洪吉同は中枢府の正3品の役人を自称していました。中枢府は警備や軍事を担当する部署です。手下をつれて街にでかけ役人として活動し、人々から不当に金品を受け取りました。

朝鮮朝廷は洪吉同を降霜罪で逮捕しました。降霜罪とは真夏に霜を降らせること、つまりありもしないことを言うこと=詐欺罪です。

しかし洪吉同のこのような活動は本人たちだけでできるものではありません。地方役人の中にも協力者がいたので関係者も逮捕されました。洪吉同とグルになっていた地方役人の巌貴孫(オム・グィソン)は投獄され、獄中で死亡しました。巌貴孫は洪吉同から食べ物をもらったり家屋を購入してもらって店を経営していたりいました。

ドラマ「逆賊:民を盗んだ盗賊」では地方役人のオム・ジャチがホン・ギルドンと協力することになってます。巌貴孫(オム・グィソン)がモデルになってるのでしょう。ドラマのオム・ジャチは悪人ではありません。同名の宦官で世宗~端宗に仕えた 巌自治(オム・ジャチ)とも関係ありません。

洪吉同が得た収入の一部を役人に渡して、洪吉同たちは役人と偽って人々から金品をとっていたのです。

他の関係者も流罪になりました。

洪吉同の事件は朝鮮社会にもインパクトを与えたようです。本来朝廷のものになるはずだった税収が洪吉同たちや一部の地方役人のものになっていたのです。中宗時代になっても税の徴収については注意するように命令が出るほどでした。

歴史上の洪吉同は圧政に苦しむ民を救う英雄とは程遠い詐欺師でした。

でも現代ではホン・ギルドンは英雄です。許筠(ホ・ギュン)が書いた小説「洪吉童伝」のイメージがどれほど強かったかよく分かると思います。

あまりにも違うので「許筠(ホ・ギュン)は洪吉同をモデルにしたのではない」という意見も出るほどです。後世の人が勝手に洪吉同が元になってると言ってるだけなので、本当のところは許筠本人にしかわかりません。

ただし「中央の役人のもとに入るはずだった税が横取りされた」というのは、圧政に苦しむ庶民にとっては痛快な事件だったでしょう。相手が誰であれ税は取られるのです。そのような朝鮮の朝廷に対する庶民の反感がホン・ギルドンを英雄に仕立て上げたのかもしれません。

まとめ

洪吉同は実在した盗賊なのですが。実在の洪吉同よりも小説の洪吉童の方が有名になってしましました。

現在では洪吉同も架空の洪吉童のような人物としてイメージが混ざってしまってます。名前の発音がどちらも「ホン・ギルドン」。漢字を使わない韓国では区別が難しくなってます。

確かに燕山君は評判の悪い王でした。だからといって朝鮮王朝実録はすべてウソで洪吉同が民衆のために戦ったなどと考えるのは無理があります。なぜならホン・ギルドンが英雄という根拠は「小説」がもとになっているからです。作り話を根拠に歴史の解釈を変えるのは本末転倒です。

さすがにドラマのホン・ギルドンは「洪吉同」ではなく「洪吉童」という設定のようです。

カン・ジファン 主演の「快刀ホン・ギルドン」は小説の洪吉童をアレンジしたもの。
ユン・ギュンサン主演の「逆賊:民の英雄」は洪吉童をもとにしながら、一部歴史を取り入れた架空の話です。

許筠(ホ・ギュン)が書いた小説「洪吉童伝」は舞台設定が世宗時代になっています。でも最近のドラマでは実在の「洪吉同」が生きた燕山君時代にされることが多いようです。

舞台設定は史実に近いものにしながら、ストーリーは架空の話になってるんですね。

テレビドラマ

ホン・ギルドン SBS 1998年 演:キム・ソックン
快刀ホン・ギルドン KBS、2008年 演:カン・ジファン
逆賊:民の英雄 MBC、2017年 演:ユン・ギュンサン

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