中国ドラマ「風起花抄」には不禄院(ふろくいん)という組織が登場します。
今まで見たこともない組織なので何だろう?と思う人もいると思います。
ドラマの中では不禄院は遺体の保管、消毒、運び出しを担当しています。
孫徳成が不禄院のトップ「主事内侍」。
その下に小太監の小順子、小桂子、魏林がいます。
豆子は太医院の防疫医官という役職。籍だけ太医院において不禄院で働いているという設定です。実際には太医院がそのような部署に人を派遣することはありませんが。ドラマオリジナルの設定です。
不禄院とはいったいどんな組織なのでしょうか?本当に存在したのでしょうか?
不禄院について紹介します。
不禄の意味は「死」
儒教の経典・礼記(らいき)によると。
(礼記の説明はこのあと紹介します)
天子(皇帝)の死は「崩」、諸侯(諸王)の死は「薨」、大夫(貴族)の死は「卒」、士(役人)の死は「不禄」、庶人の死は「死」という。
元の漢文「天子死曰 崩、諸侯曰 薨、大夫 曰 卒、士曰 不祿、庶人曰 死」
礼記・曲礼下の第七十八章
とあります。
あくまでも儒教の価値観なので現代日本人の価値観とは違う部分もありますが。古代の中華王朝ではこの考え方が主流でした。
礼記とは
ちなみに礼記とは前漢の戴聖や戴徳たち儒学者が書いた書物。儒教に必要な「礼」についてまとめた本です。
「礼」とは身分制度を維持するための作法・服装・言葉・儀式など細かい決まりごとです。日本人の考える礼儀とはちょっと違います。
礼記は後漢時代に儒教の経典としての地位が固まりました。後の王朝でも儒教に必要な経典(四書五経)のひとつとされました。
不禄の意味
役人の死を「不禄」というのは「禄がもらえなくなるから」
禄は給料のこと。
役人は役所勤めをして禄(給料)をもらいます。でも死亡すると禄(給料)はもらえません。そのため役人の死を不禄と言いました。
不禄院は存在しない
ドラマ「風起花抄」の不禄院の役目
中国ドラマ「風起花抄」には不禄院(ふろくいん)という部署が出てきます。
ドラマの中での不禄院の役割は。
宮中で人が死んた場合。遺体を引き取り消毒をする。
遺体を外に運び出す。
主な役割はこのくらい。
不禄院は架空の組織
風起花抄は唐の時代が舞台です。
でも唐には不禄院という部署はありません。
唐だけではありません。全ての中華王朝には不禄院はありません。ドラマのために作った架空の部署なのです。
唐代には宮中のことは基本的に内侍省が行っています。内侍省は宦官の組織です。
地位の高い宦官は太監と呼ばれます。ドラマでは下っ端宦官でも太監と呼ばれているように見えますが。ドラマに登場する宦官は皇族に仕える人たち。だから宦官でも上級職の人たちなのです。実際には太監の下に雑用や肉体労働をしている下っ端宦官が大勢います。
遺体の運び出しなど様々な雑用は下っ端宦官や奴婢の役目だったようです。
ちなみに唐の時代に「太医院」という部署はなく「太医署」と呼ばれていました。王宮の医療部門を「太医院」と呼ぶのは金の時代からです。
不禄院はドラマ用の設定ですので間違えないようにしましょう。
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