太王四神記に登場するチュシンの国はどんな国?

2018年4月3日

ペ・ヨンジュン主演の太王四神記には「チュシンの国」という古代国家が登場します。 朝鮮の歴史にもない架空の国です。

でも太王四神記オリジナルの設定ではなく元ネタがあるのです。

チュシンの国について

太王四神記に登場する「チュシン」とは、古代のアジア大陸や朝鮮半島にあったとされる架空の国。チュシンの漢字表記は「朝鮮」です。

朝鮮民族が古代ユーラシア大陸を支配していたというファンタジー漫画「大朝鮮帝国史」が元ネタ。「桓檀古記」という古史古伝をもとに書かれています。

桓檀古記では満州と朝鮮半島は朝鮮民族の国だったという設定になってます。

桓檀古記は1979年に韓国で発行されました。初版が1911年(日韓併合の翌年)に印刷されたとされます。しかし初版本の存在は確認されていません。

桓檀古記は朝鮮版古史古伝?

江戸時代から戦前にかけて、日本では日本書紀よりも古いとされる歴史書が「発見」されました。それらの中にはかつて世界を古代日本が支配していたとする荒唐無稽なものもあります。それらの書物をまとめて古史古伝とよびます。

日本の古史古伝の存在を知った朝鮮の人々が朝鮮版の古史古伝を作ったのかもしれません。もちろん現代の日本では古史古伝は正式な歴史書とは認められていません。

古史古伝も桓檀古記も、古代に書かれたという設定で現代人が作った書物です。

桓檀古記は現代の韓国歴史学会でも偽物あつかいされています。

古朝鮮

チュシンの国と似たようなものとして、朱蒙にも登場する古朝鮮があります。

学説での古朝鮮

現在では檀君朝鮮、箕子朝鮮、衛氏朝鮮をまとめて古朝鮮とよびます。

檀君神話は古くて新しい考え

檀君朝鮮は高麗時代の12世紀に書かれた「三国遺事」に登場するお話。民間伝承で語られる伝説上の国です。三国遺事以前の記録には出てきません。意外と新しい神話なのです。

三国遺事とは伝説や民間伝承をまとめた本。こぼれ話のまとめ、みたいなものです。高麗が認めた歴史は「三国史記」という本に書かれています。つまり高麗の人達は檀君神話は正式な歴史ではなくただの伝説だと思っていたようです。

檀君神話は李氏朝鮮でも相手にされませんでした。檀君神話は日本統治時代に広まりました。

古代中国の歴史書に残る衛氏朝鮮

箕子朝鮮、衛氏朝鮮は古代中国の歴史書「史記」に登場します。

「史記」によると箕子は中国の殷王朝の王子。殷の滅亡後、箕子が朝鮮に渡り朝鮮という国を作りました。それが箕子朝鮮。歴史上最初に朝鮮を名のった国です。ただしこの話も伝説としての要素が強いようです。

ただし、箕子が朝鮮と名のったわけではなく史記を書いた司馬遷が朝鮮と名付けたという説もあります。箕子の国が何という名前がわからなかったので、古代中国で半島付近を意味する朝鮮という地名をそのまま国の名前にしたともいわれます。

衛氏朝鮮は燕が滅んだあと朝鮮半島に逃れてきた燕の衛満が箕子の子孫から王位を奪って建国した国です。いずれにしても古代中国の亡命者が作った国です。衛氏朝鮮は檀君朝鮮、箕子朝鮮よりも信憑性が高いとされています。歴史上初めて歴史に登場する朝鮮半島の国なのです。

衛氏朝鮮は漢に滅ぼされ。朝鮮半島の北側は漢の領土になります。後に高句麗ができます。

南側はこれといった国はなく、やがて馬韓、辰韓、弁韓ができて百済・新羅・伽耶諸国となります。

このうち一番最初に国としてできたのは高句麗です。つまり歴史の記録では初めて朝鮮人が作った国は高句麗というわけです。ただし高句麗人はツングース系民族なので現在の韓国人とはちょっと違います。

どこの国でも現代人はさまざまな地域の人がやってきて混血を繰り返した結果できたもの。一口に◯◯民族とはいえなくなっています。

現代の韓国人が韓民族と呼んでいるものは高句麗人とはちがうものなんですね。

これは日本人の考える大和民族や、中国人の考える漢民族も似たような状況です。隔離された社会があれば別ですが、現代では国レベルの単一民族は存在しません。

韓国では史記に書かれた衛氏は架空の話であり、箕子は檀君の子孫と教えているようです。

最近では衛氏朝鮮と箕子朝鮮はなかったことにして、檀君朝鮮から直接繋がってることにしたいようです。衛氏朝鮮と箕子朝鮮の存在を認めると、歴史に残る朝鮮半島最初の国は中国人が作った国になってしまうからです。

時代によって古朝鮮の考え方も違う

李成桂が高麗を滅ぼして国を作った時、衛氏朝鮮の後継者という意味を込めて朝鮮の名を候補にしました。最終決定は明の皇帝です。

李成桂たちは古代中国にルーツを持つ国といいたかったのです。李氏朝鮮では朝鮮人は古代中国人の子孫だという思想が流行りました。現代の韓国では想像できないかもしれませんが、李氏朝鮮の支配者層にとっては「古代中国の王族の末裔」がステータスになってました。そのため家系図を偽造する者までいたそうです。李氏一族(朝鮮王族を含む全州李氏)は唐の皇族の子孫ということになっていました。

李氏朝鮮の支配者層は民族の独自性・自主性よりも、中華思想の後継者に誇りをもっていました。

清からの独立が檀君神話人気に繋がった

日清戦争で清が負けた後、朝鮮が清から独立しました。すると民族自立の動きが活発になりました。「桓檀古記」の原型ができたのもこの時代だという説もあります。李氏朝鮮時代にはあまり人気がなかった檀君神話もこの時代に広まります。

朝鮮総統府が朝鮮が清(つまり中華思想の中心になる国)への依存をやめて民族自立の意識を高めるため意図的に檀君神話を利用したともいわれます。ハングルが広まったのもこの時代です。そして現在に至りますが、それはまた別のお話。

学術的には李氏朝鮮と表現

日本や中国では李成桂から始まる朝鮮王朝は古代の朝鮮と区別するために「李氏朝鮮」「李朝」と呼ぶのが一般的です。韓国歴史学者も学術的には問題のない呼び方だとしています(偏った思想の人は別ですが)。

でも日韓併合時代に李氏朝鮮という言葉を使っていたので現代の韓国では使いたがらないようです。

現代の韓国では「李氏朝鮮」を普通に「朝鮮」と呼び、古代にあった朝鮮の名を持つ国を「古朝鮮」と呼びます。

古朝鮮の大きさ

衛満の作った朝鮮(衛氏朝鮮)は現在の北朝鮮の一部の地域にあったようです。朝鮮半島全土や満州地方まで広がっていたわけではありません。

それ以前に国があったとしても大きさはわかりません。部族のようなものがたくさんあったのではないかと考えられます。

ただし、ドラマ「朱蒙」の古朝鮮の範囲はチュシンの国並に広く描かれています。ほぼ桓檀古記に匹敵する広さです。

太王四神記のチュシンや朱蒙の古朝鮮も桓檀古記の影響を受けていると考えられます。

でも現代の韓国の歴史教科書でも古朝鮮は満州と朝鮮半島を含む大きさに設定されているようです。檀君朝鮮も実在したことになってます。結局は桓檀古記と同じのような気もしますね。

ちなみに古朝鮮の存在を証明する遺物、遺跡は発見されていません。

ペ・ヨンジュンの演じたファヌンとは

檀君朝鮮の初代・檀君は桓雄の息子。桓雄は天帝桓因の息子です。太王四神記ではペ・ヨンジュンが演じたファヌンが桓雄になります。太王四神記の冒頭部分は朝鮮の神話がもとになっているんですね。太王四神記はファンタジードラマだからできる演出なのでしょうね。

桓雄が降臨した山が太伯山。
太伯山とは現在の中国と北朝鮮の間にある白頭山のことです。だから朝鮮民族の間では白頭山が聖地になってるのです。

 


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