宣懿皇后 蕭観音は11世紀の大遼（大契丹国）の皇后。
第8代 大遼（契丹）道宗皇帝 耶律查剌（洪基）の最初の皇后。
母方の祖父が第6代 皇帝 耶律文殊奴（隆緒）です。
宣懿皇后 蕭観音は一族の中でも特に美しく。琵琶演奏の名人で。自作の歌も作っていました。寮の時代、最高の女性詩人といわれます。
しかし道宗 耶律查剌（洪基）の命令で死罪になってしまいます。
史実の宣懿皇后 蕭観音はどんな人物だったのか紹介します。
宣懿皇后 蕭観音の史実
いつの時代の人？
生年月日：1040年
没年月日：1075年
姓 ：蕭氏
名称：観音
国：遼（契丹）
地位：皇后
称号：懿德皇后、宣懿皇后
父：蕭慧（または蕭惠）
母：耶律槊古（聖宗 耶律文殊奴の三女）
夫：道宗 耶律查剌（洪基）
子供：
皇女：耶律撒葛只、耶律糾里、耶律特里
皇子：遼順宗 耶律浚
日本では平安時代になります。
おいたち
1040年（重熙9年）。 蕭観音が誕生。
父は蕭慧（または蕭惠）
母は耶律槊古。聖宗 耶律文殊奴の三女です。
名前は「観音」
もちろん仏教の観世音菩薩からつけられました。当時の遊牧民王朝では仏教にちなんだ名前を付けるのが流行っていました。
蕭観音は幼い頃から頭がよく、詩や経典、歴史や書物を暗唱することができました。成長した蕭観音は蕭氏の中でも特に美しく優雅で気品がありました。
蕭観音は琵琶の名人。当時の契丹社会では最高の演奏者として知られていました。幾つかの詩を作っています。
重熙22年（1053年）。耶律洪基は總北南院枢密使事、「燕趙國王」になり。
蕭観音は耶律洪基と結婚しました。
皇后になる
重熙24年8月（1055年8月28日）。興宗 耶律宗真が崩御。道宗 耶律洪基が皇帝に即位。「清寧」に改元。
清寧元年（1055年）12月。蕭観音が皇后になりました。当時の称号は「懿德皇后」。
清寧3年（1057年9月8日）道宗 耶律洪基は自分と蕭観音の作った詩集「君臣同志華夷同風詩集」を皇太后 蕭撻裡に贈りました。
1058年。嫡男・耶律濬を出産。
その後も耶律撒葛只、耶律糾里、耶律特里が誕生しました。
皇太叔 耶律重元の妻は自分の美しさを自慢していたので皇后 蕭観音が「一族の女性としてそのような振る舞いをしてはいけません」と注意しました。
耶律重元とその妻は皇后 蕭観音を恨みます。
このころ遼の朝廷内では有力者の耶律重元と耶律乙辛が対立。耶律重元は謀反を起こしました。謀反はすぐに鎮圧されました。このとき功績をあげたのが耶律乙辛。耶律乙辛は道宗の信頼を得ました。
道宗 耶律洪基は若いころは有能で即位してしばらくも真面目に政治をしていましたが。やがて狩りや仏教に夢中になり、寺院や僧侶への寄進に巨額の財政を費やし、趣味にのめり込むようになります。政治は耶律乙辛に任せるようになって、乙辛の独裁を許してしまいます。
咸雍元年正月（1065年2月8日）。皇后 蕭観音の息子・梁王 耶律浚被が皇太子になりました。
耶律乙辛は皇后と皇太子を陥れようとします。
道宗 耶律洪基と疎遠になる皇后 蕭観音
咸雍末年。道宗 耶律洪基は狩りに夢中になっていました。皇后 蕭観音は皇帝を諌めたため、抗体から疎まれ遠ざけられるようになりました。
秋の狩り遠征への同行を断られた皇后 蕭観音は「回心院」という10首の詩を書き、その悲しみや切なさを表現しました。
そして宮廷楽師の趙惟一に楽譜を作らせ、しばしば宮廷に呼び出して演奏していました。
宮中では二人の関係が噂になり始め、悪意を込めて中傷する人もいました。
大康元年六月二十六日（1075年8月10日）。皇太子が政治に参加し始めて様々な法整備が行われました。
耶律乙辛は権力を握り続けるには有能な皇太子が邪魔になると考え、皇后と皇太子を排除しようと考えます。
そのころ。単登という侍女がいました。彼女は箏を演奏することができました。もともと単登は耶律重元家の侍女でしたが、皇后 蕭観音が召し抱えて演奏させていました。しかし単登は趙惟一には負けると妹の清子には愚痴をこぼしていました。清子は耶律乙辛の情婦だったのでこのことは耶律乙辛に知られます。
また道宗 耶律洪基は単登を呼び出して演奏させ妾にしようとしましたが、皇后 蕭観音は「単登は謀反人の侍女でしたから復讐される恐れがあります」と言って寵愛しないように忠告しました。
蕭観音の最期
疑惑の十香詞と懐古
耶律乙辛は詩を作れる人に命じて「十香詞」という詩を作らせました。女性の体の美しさを表現した詩です。単登はこの十香詞は宋の皇后が書いたもので。蕭皇后も宋の皇后に負けないようにこの詩を書いて欲しい」とお願いしました。何も知らない皇后 蕭観音は快く書き写すと「懐古」というタイトルの「宮中隻數趙家妝、惟有知情一片月」という詩を作りました。
耶律乙辛は「十香詞」と「懐古」を持って道宗 耶律洪基のところに行き、皇后 蕭観音がその詩を書いた。
皇后と趙惟一が密通している。と嘘の報告をしました。道宗は詩の内容は趙惟一との関係を表現しているのだと誤解。激怒した道宗 耶律洪基は皇后 蕭観音を呼び出すと、皇后の言い分も聞かずに鉄の棒で殴り半殺しにしました。
密通の疑いで死罪
その後、皇后 蕭観音と趙惟一は拷問を受けました。それを知った樞密副使の蕭惟信は蕭観音を救おうとしましたが止めることはできませんでした。
趙惟一は拷問の末、密通を「自白」させられました。道宗 耶律洪基は蕭観音に自害を命令。趙惟一は一族もろとも処刑されました。
蕭観音の子どもたちは母の命を救って欲しいと皇帝に懇願しましたが道宗 耶律洪基は聞きません。
蕭観音は最期にもう一度、道宗に会いたいと言いましたが聞き入れられず、首を吊って死亡しました。趙惟一は激しい拷問を受けて死亡しました。
道宗 耶律洪基はそれでも怒りが収まらず蕭観音の亡骸を裸にしてムシロに包んで蕭家に送り返しました。
その後。皇太子 耶律浚被も耶律乙辛によって謀叛人にされてしまい殺害されました。
乾統元年（1101年）6月。天祚帝は彼女を諡（おくりな）して宣懿皇后として慶陵に葬りました。
蕭観音と趙惟一の関係は現代でもよくわからない部分もあります。本当に恋愛関係にあったのではないか。とか「十香詞」は本当に蕭観音が作ったのではないかという説もあり、よくわかりません。
中原の漢人王朝と違い遼（契丹）の女性はわりと自由です。仮に蕭観音と趙惟一が恋愛関係だったとしても、遼（契丹）ではそれで皇后が死罪になることはありません。蕭観音にも迂闊な部分はありますが、耶律乙辛は蕭観音と皇太子を陥れ。道宗は耶律乙辛に乗せられて蕭観音と皇太子を殺してしまいました。そして遼は道宗の時代から衰退に向かいます。
テレビドラマ
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