「哲仁王后(チョルイワンフ)~俺がクイーン!?」は、大人気の韓国時代劇です。現代の男性の魂が朝鮮時代の王妃にタイムスリップする変わった設定が魅力ですね。
このドラマのもう一人の主人公といえる哲宗(チョルジョン)は実在の人物です。でもドラマの哲宗と史実の哲宗には大きな違いがあります。
この記事では「哲仁王后」を紹介しつつドラマと史実の哲宗(チョルジョン)や登場人物たちの違いを解説します。
ドラマと歴史の違いを知とドラマをもっと楽しめますよ。
ドラマ「哲仁王后」とは?人気のドラマのあらすじを解説
「哲仁王后」は現代の男性シェフの魂が朝鮮王朝時代の王妃・金昭容(キム・ソヨン)の体に入り込んでしまうという面白い設定のドラマです。
王妃の体になった主人公は宮廷のしきたりや貞淑な女性としての振る舞いを要求されることに悪戦苦闘します。
哲宗は表向きは無能な王を装っていますが、実は裏で改革を企てる二面性を持つ人物です。
魂が入れ替わった王妃と哲宗は最初は反発し合うのですが、次第にお互いを理解しあうようになり。二人で協力して宮廷の陰謀に立ち向かっていきます。
全体的にコミカルな描写が多いですが、後半はシリアスな場面もあり。メリハリのある展開も人気の理由の一つといえますね。

ドラマの哲宗(チョルジョン)と史実の哲宗はここが違う!
ドラマ「哲仁王后」で描かれる哲宗と実際の史実の哲宗には大きな違いがあります。どこが違うのか詳しく見ていきましょう。
性格:隠された夢を持つ王 vs 苦悩する傀儡王
ドラマの哲宗(チョルジョン)
ドラマの哲宗は表面上は上品で弱々しい印象がします。彼は心の内では改革の夢を抱く人物。重臣たちにも隠し事をしています。困難にも立ち向かう強い意志を秘めた二面性を持つキャラクターとして描かれています。
史実の哲宗(チョルジョン)
史実の哲宗は全く違う姿として記録されています。
江華島で農民同然の暮らしをしていましたが。突然王位に就き政治経験も味方もありませんでした。当時の李氏朝鮮は安東金氏が権力を独占する「勢道政治」の真っただ中。哲宗は安東金氏の傀儡(かいらい)になって自分の思い通りに政治を行うことができませんでした。
無力さに打ちひしがれ、次第に酒に溺れていったという悲劇的な面が強い人物です。
政治への関わり:密かに改革を計画 vs 勢道政治の犠牲者
ドラマの哲宗(チョルジョン)
ドラマの哲宗は裏で密かに改革を計画。安東金氏などの重臣たちの不正、大妃の思惑と戦おうとします。腐敗した宮廷を立て直そうと奮闘する姿は印象的ですね。
史実の哲宗(チョルジョン)
史実では哲宗が積極的に政治改革を主導したという記録はほとんどありません。彼は安東金氏の絶大な権力のもとで、ただ彼らの意向に従うしかありませんでした。官職の売買や賄賂(わいろ)が横行する腐敗した政治を変えることは哲宗一人では不可能だったのです。
王妃との関係:魂を愛するパートナー vs 決められた政略結婚
ドラマの哲宗(チョルジョン)
ドラマの哲宗は現代人の魂を持つ哲仁王后と最初は反発していました。でも次第に深い絆で結ばれていきます。変わり者の王妃を面白がる懐の深さも見せます。哲宗と王妃が互いを理解しあい、宮廷の陰謀に共に立ち向かう姿がドラマの大きな見どころといえますね。
史実の哲宗(チョルジョン)
史実では哲仁王后は安東金氏の出身。哲宗との結婚は安東金氏が権力を強化するための政略結婚でした。二人の間にドラマのように深い愛情があったという史料は残されていませんが、哲宗8年には二人の間に子供が誕生。史実の哲仁王后は実家のために何か便宜をはかったり、実家の手助けをすることがなかったと言われます。
ドラマのように積極的に動くことはなかったとしても、哲宗と王妃は仲は悪くはなかったのでしょう。
哲宗の最後:改革の成功と悲劇的な死
史実の哲宗
史実の哲宗は大妃や重臣たちに逆らうことができないまま、彼は32歳という若さで病死しました。安東金氏の勢力は哲宗の死後も続き政治改革は実現されませんでした。彼の治世は勢道政治の犠牲者として歴史に刻まれることになります。
ドラマの哲宗
ドラマの哲宗(チョルジョン)は王妃の助けもあり最終的に敵対する重臣たちを排除し大妃たちを幽閉します。そして改革を実行し成功を収めます。
ドラマの哲宗(チョルジョン)は朝鮮を再生させたということで「哲祖」と追尊されます。王朝を建国したに等しい功績を残したということですね。
哲祖は変?
余談ですが。通常は「哲」の廟号は現実社会で大きな実績を残した君主には使いません。「哲」は「賢い」という意味で儒教的には「道理をわきまえている」という解釈もあります。でも普通は、実績を残した君主には実績を表現する漢字が使われるものです。
「哲」はただ本人が賢い、道理をわきまえている(重臣や朝廷にとって都合の良い王だった)。というだけで具体的な実績が伴ってないのです。なので本当に凄い実績を残したのなら「哲祖」という廟号はありえません。
ドラマの主要人物は 史実ではどうだった?
哲宗だけでなく、「哲仁王后」に登場する他のキャラクターたちも史実とは違う描かれ方がされています。
政治に無関心だった哲仁王后
ドラマの哲仁王后(演:シン・ヘソン)は現代の男性の魂が入ってしまったので意識が変わっています。当時では考えられない型破りな行動や言動を見せて宮廷をかき乱していきます。
名前の「ソヨン」はドラマオリジナルの設定。史実では名前は不明です。
史実の哲仁王后は安東金氏の出身。ドラマのような奔放な性格だったという記録はありません。むしろ口数の少ない人だったようです。同時期の大妃たちと違い政治的な動きはしていません。
強力な大妃たちに囲まれてあまり動けなかったのかもしれません。一族に有利になる活動はしていない、という点ではドラマと似てるかもしれません。
史実では哲宗8年に男子を出産しましたが、半年後に死亡しています。ドラマではソヨンが哲宗を拒んでいたので終盤まで懐妊すらありません。
権力を握る金氏一族と金左根(キム・ジャグン)
ドラマには安東金氏をモデルにした安松キム氏が登場。安松キム氏のボスが悪役として登場するキム・ジャグン(金左根)です。
安東金氏の金左根は実在の人物で勢道政治の中心人物でした。彼の権力は絶大で哲宗は彼の意向に逆らえないほどでした。
史実の金左根に比べるとドラマのキム・ジャグンはまだおとなしいですね。「風と雲と雨」のキム氏がかなり強力な敵として描かれているのと比べると対照的です。
「哲仁王后」の安松キム氏は最終的に打倒されなければいけないので、史実の安東金氏ほど強い敵とは設定されていないようです。
ドラマには彼以外にもキム・ビョンイン(金炳仁)といった金氏の人物が登場します。史実とは名前や役職が違います。ビョンインに相当するのは史実では金炳冀(キム・ビョンギ)ですが、彼は禮曹参判と吏曹参判にはなっているものの、兵曹判書にはなっていません。
大王大妃(純元王后)と趙大妃(神貞王后)の役割
ドラマでは大王大妃(純元王后)と趙大妃(神貞王后)が権力を争い、哲宗を翻弄する姿が描かれます。
史実でも純元王后はかなり影響力をもっていましたが、高齢のため哲宗8年に死亡。史実では純元王后の死によって安東金氏の勢力に衰えが出てきました。
その後は神貞王后が大王大妃となり豊壤 趙氏の力が強まります。純元王后がいなくなっても哲宗は力を持つことができなかったのです。
ドラマでは純元王后は死なずに最後まで登場。最終的には哲宗によって純元王后と神貞王后は西宮に幽閉されています。
哲宗と純元王后金氏・神貞王后趙氏の関係
ドラマでは哲宗は純元王后金氏を「祖母」、神貞王后趙氏を「母」と呼びますが、史実では違います。
哲宗は純祖の養子となって王位を継ぎました。純元王后金氏は純祖の正室です。
これは哲宗を憲宗の子にしてしまうと憲宗の母である神貞王后趙氏が力を持ってしまうからかもしれません。
そのため、純元王后金氏の地位は大王大妃ですが、系譜上は神貞王后趙氏は哲宗の「母」なのです。なので哲宗は純元王后金氏を「母」と呼ばなくてはいけません。
神貞王后趙氏は大妃ですが、系譜上では哲宗の義理の姉です。
哲宗の側室 趙氏
ドラマには哲宗の側室 チョ・ファジンが登場します。チョ・ファジンには宜嬪(ウイビン)の称号が与えられました。
史実でも哲宗には豊壤 趙氏の側室がいました。でも貴人でした。嬪にはなっていませんし。しかも貴人趙氏は哲宗より11歳年下です。ドラマのような幼馴染ではありません。
ドラマの哲宗の後宮は史実とは違う部分が多いのです。
他の哲宗(チョルジョン)のドラマもチェック!
「哲仁王后」以外にも哲宗が登場する韓国時代劇があります。それぞれの作品で哲宗がどのように描かれているのか、比較してみるのも面白いでしょう。
「Dr. JIN」(2012年)
医師が過去にタイムスリップするという設定の中で哲宗(演:金秉世)が描かれます。現代から来た主人公の医師が哲宗の時代の病に立ち向かう物語です。
「風と雲と雨」(2020年)
朝鮮末期の動乱期を描いたこのドラマでは哲宗(演:正旭)は「江華道令」と呼ばれた若き日から登場します。壮洞金氏(安東金氏)に権力を握られ、やがて娘のる鳳蓮(ボンリョン)まで奪われ、心身ともに病弱な傀儡の王として描かれています。
まとめ
この記事では人気の韓国ドラマ「哲仁王后」と史実の哲宗を比較しました。
ドラマ「哲仁王后」の哲宗(チョルジョン)は夢を持って改革を志す魅力的な人物として描かれます。でも史実の哲宗は安東金氏の勢道政治に翻弄され無力さに苦しんだ悲劇の王でした。
『哲仁王后』は史実をもとにしていますが、視聴者を楽しませるために大胆な脚色が行われています。
登場人物の性格や人間関係、宮廷の出来事、そして細かな時代考証にも史実との違いが見られます。
ぜひ史実の背景も踏まえてもう一度『哲仁王后』を見返してみてください。もしかすると新しい発見があるかもしれませんよ。
史実の哲宗を詳しく知りたい方は哲宗(チョルジョン)はどんな人?を御覧ください。
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