韓国時代劇を見ていると、武官の姿をした人物が「従事官(チョンサグァン)」と呼ばれていることがあります。『トンイ』のソ・ヨンギや『オクニョ』のソン・ジホンも従事官ですよね。
従事官は朝鮮王朝で上官を補佐して仕事をした役人です。ドラマによく登場する捕盗庁の従事官は犯罪の捜査や取り調べを担当しました。
この記事では従事官の読み方や官位、仕事内容や、『恋人』『ホジュン』などに登場する人物や内禁衛の従事官についても紹介します。
この記事で分かること
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従事官の意味とチョンサガンという呼び方
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捕盗庁の従事官の官位と捜査・取り調べの仕事
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内禁衛や軍営、朝鮮通信使の従事官との違い
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『トンイ』『オクニョ』『恋人』などに登場する従事官
従事官とは?朝鮮王朝で上官を補佐した役人
韓国時代劇では「従事官」と呼ばれる武官がよく登場します。『トンイ』のソ・ヨンギや『オクニョ』のソン・ジホンも、捕盗庁の従事官でしたね。
従事官は朝鮮王朝で上官を補佐して実務を担当した役人のことです。捕盗庁のほかんにも軍営などにも置かれ所属先によって担当する仕事が違いました。
従事官の読み方はチョンサグァン
従事官は日本語では「じゅうじかん」と読みますが、韓国語では「종사관(チョンサグァン)」となります。ドラマの字幕や人物紹介では「チョンサガン」と書かれることもあります。
捕盗庁では捕盗大将を補佐し、取り調べを担当
捕盗庁(ポドチョン)は都の漢陽(ハニャン)やその周辺で犯罪を取り締まる役所です。盗賊を捕らえたり町を巡回したり、捕らえた人を取り調べたりしました。
捕盗庁には左捕盗庁と右捕盗庁があり、それぞれを捕盗大将(ポドテジャン)が率いていました。
従事官は捕盗大将を補佐して捕らえた人の取り調べなどを担当します。
朝鮮後期の法典『続大典』では左右の捕盗庁にそれぞれ捕盗大将を1人、従事官を3人置くと定められていました。捕盗庁には部将(プジャン)や軍士などもいて、盗賊を捕らえたり町を巡回したりしています。

捕盗庁の組織図
ドラマでも従事官が部下と一緒に犯人を捜したり、捕らえた人を取り調べたりする場面が出てきますね。『トンイ』でソ・ヨンギが剣契(コムゲ)の事件を調べていたのも、捕盗庁の従事官だったからです。
従事官はどれくらい偉い?従六品の地位と庶民への権限
捕盗庁の従事官は従六品で、文官・武官から任命
捕盗庁の従事官は、従六品の官職でした。
朝鮮王朝の品階は最も高い正一品から最も低い従九品まで全部で18段階ありました。従六品は上から12番目になります。
朝廷の最高官職である領議政(ヨンイジョン)は正一品、捕盗庁の責任者である捕盗大将は従二品です。それに比べると捕盗庁の従事官は中級の役人でした。
ドラマでは武官の服を着た従事官をよく見かけますが、捕盗庁の従事官には文官・武官の両方から任命されました。
捕盗庁では従六品ですが、軍営や使節団などでは所属先によっては任用される人の品階が違いました。
庶民にとっては取り調べを行う役人
捕盗庁の従事官は朝廷の役人の中では中堅クラスですが、町で暮らす庶民が見かける役人の中では地位の高い人でした。事件の捜査や逮捕、取り調べにも関わるため、怖い存在にもなります。
そのためドラマで描かれる従事官はとても偉くて権限の大きい人のように見えることがあります。
現代に例えると警察の偉い人くらいの地位です。もちろん捕盗庁と現代の警察は権限も仕事の範囲も違いますが、庶民から見た感覚では近いものがあったでしょう。
軍営や朝鮮通信使にもいた従事官
訓練都監・禁衛営・御営庁で担当した仕事
従事官は捕盗庁のほかにもいました。朝鮮王朝の後期には訓練都監(フルリョントガム)や禁衛営(クミヨン)、御営庁(オヨンチョン)といった軍営にもいました。
軍営の従事官が担当したのは軍隊に関わる仕事です。訓練都監には軍務を担当する従事官のほか、鳥銃(日本式の火縄銃)や火薬を担当する人もいました。禁衛営や御営庁にも軍務や兵糧を担当する従事官がいます。
軍営の従事官には武官だけでなく文官が任命される場合もありました。訓練都監ではもともと郎庁(ランチョン)と呼ばれていた官職が1755年に従事官へと改められています。
朝鮮通信使では正使・副使とともに三使の一人
江戸時代の日本に派遣された朝鮮通信使にも従事官がいました。使節団の中心となる正使・副使・従事官の3人は、「三使(さんし)」と呼ばれています。
通信使の従事官には、三品または六品の文官が任命されました。従事官は正使と副使を補佐し、旅の間に起きたことを記録して、帰国後に国王へ報告しました。
同じ従事官でも捕盗庁で事件を調べる人と、日本へ渡る使節では仕事内容がずいぶん違うのです。
内禁衛にも従事官はいた?ドラマの設定と史実
ドラマの内禁衛従事官と、史実で確認できる官職
『トンイ』のチャ・チョンスや『宮廷女官 チャングムの誓い』のミン・ジョンホは、ドラマの設定では内禁衛従事官です。
内禁衛(ネグミ)は国王の護衛や宮中の警備を担当した部隊。史実の内禁衛には部隊を率いる内禁衛将(ネグミジャン)という官職があり、『経国大典』が成立したころには3人の内禁衛将が置かれていました。
ただし、史実の内禁衛に正式な常設官職として置かれたかどうかは不明です。
国王を護衛する内禁衛と、1682年設置の禁衛営
内禁衛と名前が似た組織に禁衛営があります。どちらも国王の護衛に関わりましたがそれぞれ別の組織です。禁衛営は粛宗の時代に創設され内禁衛に変わって王の護衛の中心となります。
内禁衛は1407年に作られた国王の護衛部隊です。禁衛営はそれより後の1682年に設けられ国王の護衛や都の防衛などを担当します。この禁衛営には従事官がいました。
韓国ドラマに登場する従事官
韓国時代劇には捕盗庁で事件を調べる従事官や内禁衛に所属する従事官が登場します。作品ごとに、どのような人物が従事官を務めているのか紹介します。
『トンイ』のソ・ヨンギ、チャン・ヒジェ、チャ・チョンス
ソ・ヨンギ(演:チョン・ジニョン)はドラマの序盤で左捕盗庁の従事官を務めています。韓国ドラマファンで「チョンサガン」と聞いて思い浮かべるのはこの人ではないでしょうか?
高官が殺された事件を調べて剣契(コムゲ)の捜査を進めていました。その中で幼いトンイや父チェ・ヒョウォンと関わります。後に国王を護衛する部隊を率いる内禁衛将(ネグミジャン)になりました。
張禧嬪(チャン・ヒビン)の兄チャン・ヒジェ(演:キム・ユソク)も右捕盗庁の従事官を務めています。ヒジェはソ・ヨンギと敵対して後に捕盗庁の責任者である捕盗大将となります。
トンイを幼いころから守ってきたチャ・チョンス(演:ペ・スビン)は、捕盗庁の武官となった後は内禁衛の従事官を務めます。
『ホジュン』のイ・ジョンミョンとペ・チョンス
1999年版『ホジュン~宮廷医官への道~』と2013年版『ホジュン~伝説の心医~』には、どちらもイ・ジョンミョンとペ・チョンスが登場します。
捕盗庁の従事官イ・ジョンミョンは、都に出てきたイェジンを助け、恵民署の医女になれるよう力を貸します。1999年版では、罪に問われた女性が妊娠しているとイェジンから聞き、確認のために医官を呼びました。その医官がホ・ジュンです。ジョンミョンは1999年版ではイム・ホ、2013年版ではソン・ジェヒが演じています。
ペ・チョンスは、若いころのホ・ジュンを密貿易の罪で捕らえた役人です。後に捕盗庁の従事官になって医官になったジュンと再会、彼の過去を調べ始めます。
『チャングムの誓い』のミン・ジョンホ
『宮廷女官 チャングムの誓い』のミン・ジョンホ(演:チ・ジニ)は、国王の護衛を担う内禁衛の従事官です。宮廷で働くチャングムを助け、彼女が済州島へ送られた後も支え続けます。
『オクニョ』のソン・ジホン
『オクニョ 運命の女』のソン・ジホン(演:チェ・テジュン)は、捕盗庁の従事官です。若くして科挙に合格し、事件の捜査や取り調べを担当しています。
オクニョは捕盗庁の茶母(タモ)になろうと試験を受けており、ジホンと事件を通じて関わるようになります。やがてジホンは自分の家族に起きた出来事を知り、オクニョと協力するようになります。
『恋人』のク・ウォンム
『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』のク・ウォンム(演:チ・スンヒョン)は、武官の家に生まれ、丙子の乱の後に従事官となった人物です。戦乱の中でユ・ギルチェを助け、後に彼女に求婚します。
まとめ
従事官は、朝鮮王朝で上官を補佐し、実務を担当した役人です。捕盗庁では従六品の従事官が犯罪の捜査や取り調べに関わりました。
『トンイ』のソ・ヨンギや『オクニョ』のソン・ジホンも、捕盗庁の従事官です。庶民にとっては捜査や取り調べを行う権限を持つ役人だったため、ドラマでも人々から一目置かれる姿が描かれています。
捕盗庁や義禁府など、ドラマに登場する役所の違いは、こちらの記事でも紹介しています。
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