中国ドラマ「宮廷の諍い女(原題:甄嬛傅)」には一丈紅(いちじょうこう)という罰が登場します。
いったいどのような罰なのでしょうか?
現実の清朝にそのような罰があったのでしょうか?
一丈紅とはどのような罰なのかを紹介します。
一丈紅は架空の刑罰
一丈紅とは中国ドラマ「宮廷の諍い女(原題:甄嬛傅)」に登場した刑罰です。
華妃が夏常在に命じていました。
でも歴史上の記録では「一丈紅」という刑罰は存在しません。
一丈紅では厚さ2寸(約6cm)、長さ5尺(約160cm)の硬い木製の板で罪人の臀部以下を打ちます。
どうやら廷杖のことを「一丈紅」と言ってるようです。
一丈紅というのはもともとは植物の立葵(タチアオイ)の中国での別名。刑を受けた人が血だらけになる様子が赤い花がいくつも咲くタチアオイに似ているので一丈紅と呼んでいるようです。
一丈紅は杖刑のこと
廷杖は古くから中国王朝で行われている刑罰。
長い棒や板で刑を受ける人の臀部(お尻)を打つ刑罰です。中国ドラマではおなじみですね。
日本では律令時代から似たような刑罰があって杖刑(じょうけい)と言っていたのでドラマの字幕も杖刑になってることがあります。でも中国では廷杖(ていじょう)といいます。
廷杖は後漢の時代からあった罰と言われ、その後の王朝でも行われました。
とくに廷杖が多かったのが明朝です。清朝では明朝時代よりは減りましたが行われていました。
廷杖で命を落とすことも
ドラマではかなり頻繁に廷杖がでてきますが、何十回も廷杖を受けるのは死罪になるのと同じ意味なので実際には軽々しくできません。せいぜい20、30回です。
ドラマでは廷杖を受けても痛いだけ、お尻が怪我して血がにじむことはあってもそのうち治ります。
でも現実には命を落とすこともある恐ろしい罰でした。正式な刑罰の場合、20回、30回と数を言い渡します。
最高は100回ですが、70~80回以上打たれた場合、健康な成人男性でも死亡するので死罪と同じです。50回でも死亡する場合もあります。女性の場合は身体が耐えられずにさらに死亡する可能性が高いです。
血がにじむなんてのはまだいい方で、肉が引き裂かれ骨が露出することもあり、腱が切れたり骨折することもあります。傷口が化膿することもあります。
それでも中国の刑罰の中ではまだ優しい方です。中国には残酷な刑罰はいくらでもあります。
でも今と違って医療が発達していない時代ですから。肉や骨が露出したり、下半身を骨折したら死ぬ可能性が高いです。命が助かっても障害が残ることもあります。
ドラマの「一丈紅」は数が決まってないので死ぬまで打たれている可能性が高いですね。ドラマで「一丈紅」を受けた夏冬春も死んだのではないんでしょうか。
女性にとって問題なのは。廷杖を受ける者は多くの場合、下半身の着物を脱がないといけないことです。
儒教の普及した中国社会では「貞節」が重んじられ。女性が人前で肌を露出したり、人前で下半身をさらしたりしたら一族の恥になってしまい。たとえ命が助かっても社会的に抹殺されて生きていけなくなります。女性にとっては肉体的な苦痛以上にダメージの大きい罰でした。
清朝の杖刑(廷杖)
清朝の後宮にも様々な罰がありました。
でも刑罰を命じることができるのは皇帝・皇太后・皇后だけ。妃嬪には刑罰を命令する権限はありません。
なのでドラマ「宮廷の諍い女」のように華妃が命令して他の側室に罰を与えることはできないのです。問題があれば皇帝か皇后に訴えるしかありません。それか皇帝や皇后・皇太后に知られないように密かに行うかです。
史実でも乾隆帝の寵妃だった惇妃が宮女を殴り殺したことがありました。この出来事は乾隆帝にバレて惇妃は罰を受けています。このときも廷杖のような肉体への罰ではなく惇妃から惇嬪に降格にしただけでした。
実際には側室が側室に刑罰を与えることはなかったのです。だから影で陰湿な嫌がらせが行われているのですね。
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