李存勗（り・そんきょく）は五代十国時代の武将で皇帝。
突厥沙陀系の民族出身。祖父が唐から国姓「李」をもらったので代々李姓を名乗っています。
父の李克用は唐に仕え朱全忠と激しく争いました。朱全忠は唐を滅ぼして後梁を建国。そのため李克用と李存勗たちは朱全忠に激しい敵対心をもっていました。
前回は李存勗の誕生から沙陀軍団を引き継いで勢力拡大するまでを紹介しました。
その後。勢力拡大した李存勗は皇帝を名乗り後唐を建国、宿敵の後梁を滅ぼします。
しかし李存勗は戦いには強いものの、政治家としての素質はないに等しい戦争屋でした。部下や領民からも嫌われて反乱を起こされ最期は身辺を守っていた兵たちに殺されます。
史実の李存勗はどんな人物だったのか紹介します。
李存勗の史実
いつの時代の人？
生年月日：885年12月2日
没年月日：926年5月15日
享年：42歳
本姓：朱邪（しゅや）
姓 ：李（り）
名称：存勗（そんきょく）
民族：沙陀突厥
国：唐（後唐）
地位：普王→皇帝
廟号：荘宗
父：李克用（り・こくよう）
母：曹氏（貞簡皇后）
妻：神閔敬皇后 劉氏
子供：魏王 李継岌、守王李継潼 、光王李継嵩 、真王李継嶦 、川王 李継嶢、義寧公主
彼は後唐の初代皇帝です。
同時代の人物には契丹の耶律阿保機、後遼の朱全忠がいます。
日本では平安時代になります。
「普」が李克用の勢力（沙陀）の地域。
後梁との戦い
天祐14年（917年）。契丹軍との戦いが起こりましたが、契丹軍はひとまずは去って北の国境は安泰になりました。
天祐14年（917年）12月。李存勗は東に向かい後梁の楊柳城（現在の山東省）を占領。後梁内で略奪しました。
天祐15年（918年）2月。契丹に使節を派遣。幽州で勝ったとはいっても契丹は驚異。後梁との全面対決のためにもとりあえず和睦しておく必要がありました。
天祐15年（918年）8月。李存勗は10万の大軍団を編成。その中には契丹や奚の騎馬軍団もいました。李存勗の沙陀軍は黄河付近の魏州まで南下。後梁軍と戦いは12月まで続き周徳威が戦死したものの沙陀軍は勝利。
天祐16年（919年）も黄河の渡場を巡って後梁との戦いが続きました。
天祐19年（921年）。「伝国の玉璽」がみつかり「李存勗を皇帝に」という声が高まりました。長安で隠されていたものといいますが、中国史に登場する伝国の玉璽は偽物が多いです。
節度使の相次ぐ反乱
天祐19年（921年）。配下になっていた鎮州軍閥の趙王・王鎔が王徳明に殺害されました。王徳明は張文礼と名を変え軍閥の主になりました。怒った李存勗が王徳礼を討とうとすると、王徳礼は契丹に援助を求めました。李存勗は軍を派遣して鎮州を包囲。王徳礼はそのさなかに死亡しましたが、子の張處瑾があとを継ぎ抵抗を続けました。
一方、定州節度使の王処直は新州防禦使になっていた王処直の子・王郁と連絡をとり契丹に寝返えろうとしました。すると王処直の義子・王都に反乱を起こされ幽閉。王郁は契丹に寝返りました。
12月。王郁は契丹軍とともに幽州を攻撃、さらに南下して定州を攻めました。激闘の末、契丹軍を追い払うことに成功しましたが。鎮州での戦いでは兵を消耗。
その間に後梁が攻めてきて衛州、相州が奪われました。
後唐の建国
天祐20年（923年）4月。李存勗は魏州で「皇帝」を名乗り。国名を「唐」にしました。歴史上は「後唐」と言います。祖父が唐から李姓をもらったこともあり、自分を大帝国の唐の後継者だと言いたかったのです。
沙陀は唐滅亡後もずっと唐が決めた「天祐」の元号を使っていましたが李存勗の即位で「同光」に改元しました。
李存勗は後梁の東の守りが弱いのを知り鄆州を攻めて占領。後梁の本拠地・卞州への足がかりにしました。
同光元年（923年）閏4月。荘宗 李存勗は後唐の各部隊に後梁攻めを命令。各部隊が河を渡って攻撃が始まりました。
後梁内部で武将同士の内輪もめが起こり、後梁軍を指揮していた王彦章が失脚。代わりに段凝が指揮をとりました。すると段凝に嫌気がした後梁の将軍・康延孝が後唐に寝返りました。李存勗は康延孝の情報をもとに作戦を考えました。
10月。李存勗は黄河を渡り後梁の首都・卞州（開封）を攻撃。段凝の後梁主力部隊は河北で戦っており卞州はガラ空き。10月8日。後梁皇帝 朱友貞は抵抗を諦めて自害。卞州を守る将軍・王瓚は開城して投降。李存勗は卞州を占領。多くの後梁関係者を粛清しました。
後梁は滅亡しました。
岐・前蜀を滅ぼす
同光2年（924年）。後梁の消滅後。後唐に対抗できなくなった陝西の岐王 李茂貞は李存勗に降伏しました。
四川を支配する前蜀の王衍は皇帝を名乗っていました。四川は豊かな土地で前蜀の王衍は贅沢な暮らしをしていました。
前蜀に偵察を送ったところ後唐との国境には兵が配置されていました。そこで李存勗は王衍に和睦を持ちかけました。李存勗を信じた王衍は国境の兵を撤収させました。
同光3年（925年）。李存勗は李巌らに6万の兵をあたえ前蜀を攻めさせました。
王衍を捕らえ前蜀を滅亡させました。
こうして後唐は後梁に加え岐、前蜀をあわせた領土を獲得。宋までの五代王朝の中では最も弘い領土をもちました。
後唐の最大勢力図
皇帝 荘宗の堕落
荘宗皇帝になり後梁を滅ぼした李存勗は、それまでの緊張感が切れたのか急激に堕落していきました。
父・李克用には多くの養子・仮子がいました。彼らは軍人としてはそれなりに有能で自分の派閥をもっていました。宿敵を滅ぼすまでは彼らが役に立ちましたが、強敵がいなくなると逆に彼らの存在が邪魔になってきました。彼らは李存勗の兄弟みたいなものですから臣下として扱われるのを嫌います。
また李存勗は熱烈な唐信者でした。父・李克用が嫌った宦官をそばに置くようになり。一緒に戦ってきた沙陀の幹部たちの言うことをあまり聞かなくなりました。宦官を監察に任命して武将の監視役として派遣。武将の反感をかいました。枢密使の郭崇韜や李継麟など宦官の讒言で命を落とした武将も何人もいます。
国内の政治は孔謙に任せ、自分は酒と贅沢に溺れ趣味の演劇にのめり込みました。李天下という演劇を作り自分で演じることもありました。
もともと沙陀は搾取の多い軍団でしたが後唐になってからはさらに国民からの搾取がひどくなりました。
こうして国内では反乱が頻発するようになります。
反乱と李存勗の最期
鄴都の乱
同光4年（926年）。魏州の鄴都で皇甫暉が反乱を起こしました。荘宗 李存勗は李紹栄に反乱鎮圧を命令しました。ところが李紹栄は鎮圧に失敗。
荘宗 李存勗は自分で鎮圧に向かおうと考えましたが側近が都を離れるべきではないと反対。仕方なく李嗣源に反乱鎮圧を命令しました。李嗣源は李克用の仮子で有能な司令官でした。それだけに李存勗は李嗣源を警戒していました。
このとき李嗣源は60歳を超えていました。戦場では鬼のような強さを発揮しますが、沙陀にしては珍しく普段は温厚な人物で人望もありました。
すでに荘宗を見限っていた兵たちと現地の反乱軍が李嗣源を担いで新しい皇帝にしようとしました。李嗣源は断り変え等としました。でも、娘婿の石敬瑭と部下の康義誠はもう反乱は起きてしまったのだから今更戻っても生きてはいられないと李嗣源をそそのかします。結局、断りきれず反乱軍の大将になって荘宗と対決することを決意、都目指して進軍しました。
荘宗 李存勗は皇太子の李継岌を鎮圧に向かわせました。しかし李嗣源の軍は渭水で李存勗の軍を破りさらに進軍しました。
興教門の変
そのころ。各地で反乱が起きて都の洛陽が食糧不足になっていました。そしてついに都でも荘宗に不満な将兵たちが反乱を起こしました。反乱軍は興教門に火を放ち宮殿に攻め込んできます。荘宗は迎え撃ちましたが矢で射られて死亡してしまいます。享年42歳
その後、都に到着した李嗣源は諸将によって祭り上げられ皇帝として即位しました。
死後「荘宗」の廟号が与えられました。
建国者なのに「太祖」でないのは評判が悪かったからでしょう。そのかわり父親の李克用に「太祖」の廟号が与えられています。
テレビドラマ
大宋伝記 趙匡胤 2015年、中国 演：印小天
狼殿下 2020年、中国 演：石凉 役名：溍国王 李存勖
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