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薬羅葛 菩薩 突厥に立ち向かったウイグルの部族長

ウイグル 9 その他の国や民族

薬羅葛(ヤグラカル)菩薩(ぼさつ)はウイグル(回紇)の部族長。

ウイグルはテュルク系遊牧民。突厥に従っていましたが、薛延陀らともに突厥に反乱を起こし、独立しました。

東突厥帝国の滅亡後はモンゴル高原でも薛延陀とともに大きな勢力をもちました。

薬羅葛氏の菩薩はこのときのウイグルの部族長です。

 

中国ドラマ「長歌行」でも漠北王 薬羅葛・菩颯の名前で登場します。

薬羅葛 菩薩とウイグル(回紇)について紹介します。

 

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ウイグル(回紇)部

ウイグル(回紇)はモンゴル高原から中央アジアにいたテュルク系の遊牧民族。

ウイグルは古いテュルク語で同盟・集まり・部落の意味。

テュルクは中央アジア発祥と言われる遊牧民。中国側の資料では様々なテュルク系部族をまとめて鉄勒(てつろく)と呼んでいました。

ウイグルもかつては鉄勒の一部でした。4~6世紀の中国側の資料では韋紇(ウイグル)と書かれています。当時はテュルク系の高車の支配を受けていました。

やがてテュルクの支配者が高車から突厥に変わると、鉄勒の部族たちは突厥に従属しました。

7世紀のはじめ、鉄勒は西突厥から攻撃を受けました。そのとき韋紇や幾つかの部族が西突厥から独立。このとき中心になったのがヤグラカル(薬羅葛)氏の特健(とくけん)が俟斤(イルキン=首長)の称号を使い、自分たちの集団をウイグル(回紇)と名乗りました。

もともと俟斤(イルキン)の称号は突厥が各部族長に与えるものでしたが、突厥衰退後は各部族長が勝手に名乗っていました。

アシナ氏の突厥が衰退すると鉄勒から薛延陀(せつえんだ)が勢力を拡大。ウイグル(回紇)は薛延陀や唐とともに東突厥と戦い滅ぼしました。

その後は薛延陀が唐に敗北して衰退するとウイグルがモンゴル高原を支配。8~9世紀にはウイグル帝国を作り、唐やチベット(吐蕃)とともに東部ユーラシアの大国になりました。

しかし840年、ウイグル帝国は内紛で弱体化。キルギスの攻撃もうけて壊滅しました。

ウイグル帝国は姿を消しますが、子孫はユーラシアの各地で自分たちの国を作りました。オングト、甘州ウイグル王国、天山ウイグル王国、カラハン朝などがウイグルの子孫です。

その後、ウイグル人はモンゴル帝国の支配下におかれました。モンゴル、オイラト(ジュンガル)、清朝の支配を受けている間にウイグルという名前も使われなくなりましたが。清朝滅亡後にウイグルの名前が復活しています。

 

薬羅葛 菩薩

 

ヤグラカル(薬羅葛)氏の菩薩(ぼさつ)は8世紀のウイグルの部族長。俟斤(イルキン)の称号をもちます。

中国側の資料では「菩薩」と書かれていますが、仏教の菩薩からきているのか不明です。

遊牧民社会では仏教にちなんだ名前を付けることがありました。ウイグルでも仏教にちなんだ名前の人物はいます。なのでこの場合も仏教の菩薩(ボーディサットヴァ)が名前の由来の可能性はあります。

 

父に疎まれて部族を追い出される

父は特健俟斤。ウイグル部の部族長です。

母は烏羅渾。

菩薩は頭がよく勇敢で策略も得意、戦いでは自ら先頭に立ち、民からの人気も高かったのですが。父の特健俟斤から嫌われてウイグル部を追い出されました。

 

ウイグルのイルキン(部族長)になる

父の特健の死後。ウイグルの人々は菩薩を呼び戻し、菩薩はウイグル部の俟斤(イルキン=部族長)になりました。

菩薩俟斤は厳格で裁きも公平だったのでますます人々の信頼を得てウイグル部は勢力を拡大しました。

突厥との戦い

627年(唐の貞観元年)。

鉄勒緒部で最も力を持っていた薛延陀とともに東突厥の北部に攻め込みました。東突厥の頡利可汗は欲谷設(ユクク・シャド:役職名)に10万の兵を指揮させて対抗しました。菩薩俟斤率いるウイグル軍は馬鬣山で突厥軍を破り、多くの捕虜を獲得しました。この勝利でウイグルの菩薩の武勇は北方の人々に知れ渡りました。

その後、ウイグルと薛延陀は協力しあいながら

菩薩俟斤は「活頡利発(活動的なイルテベル=部族長)」と自称し、独楽水(トール川)に牙帳(本拠地)を建てました。

629年(貞観3年)には唐朝に朝貢。
630年。唐が東突厥を破り、頡利可汗が捕らえられました。東突厥帝国は滅亡しました。
その後、モンゴル高原は菩薩のウイグルと薛延陀が二大勢力になりました。

しかしこの年、菩薩が死去。息子の吐迷度(トゥメド)が後を継ぎました。

 

ドラマ

長歌行 2021年、中国 演:王瑞昌 役名:漠北王 薬羅葛・菩颯

 

 

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