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李成桂誕生の秘密・伝説や様々な学説を紹介

1 李氏朝鮮の国王

李氏朝鮮の初代国王・李成桂(イ・ソンゲ)には伝説やさまざまな説があります。

その中に李成桂は韓民族ではないというものです。韓民族とは昔から朝鮮半島に住んでいたとされる民族です。

ドラマでは全く触れられていない李成桂の出身にまつわる伝説や学説を紹介します。

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李成桂(イ・ソンゲ)は韓民族ではなかった?

女真族説

歴史研究者の間では李成桂は女真族の出身という説があります。

事実、李成桂の住んでいる地域は女真族の多い地域でした。家臣の中にも女真族がいました。李成桂の軍の強さは戦いに強い女真族の存在があったからといえるかもしれません。

女真族そのものではなかったとしても、血筋のどこかに女真族出身者がいる可能性があるのかもしれません。李成桂の強さは狩猟民族譲りと考えると納得できる部分もあります。

韓国ドラマ「鄭道伝」では太祖・李成桂が8男を世子にした時、重臣の反対に対して「私の住んでいた場所にいた女真族は末っ子にあとを継がせるのだ」という台詞があります。それは暗に李成桂が女真族かその影響を受けている人物と言ってるのも同じです。

ちなみに、李成桂の義弟・李之蘭(イ・ジラン)は正真正銘の女真族です。意気投合して義兄弟の契りを交わしました。李之蘭と彼の率いる軍は李成桂とともに戦い、李成桂を武力で支えたのです。

李成桂は女真族と縁の深い人物だったようです。

元の武将説

元の人間だったという説もあります。李成桂が暮らしていたのは元の支配する地域でした。李成桂の家も元に仕える一族でした。李成桂も元の人間としての名前を持っています。

李成桂の父が授かっていた千戸長という役職はモンゴル人以外では任命されるのが難しい役職だったといいます。

李成桂が元から独立して朝鮮王朝を作ったのは、元に服従した高麗人が独立したのではなく、衰退した元を裏切っったモンゴル人が南下して高麗を征服した。とする研究者もいます。

なぜか冷遇される国王の出身地

李成桂の出身地はなぜか李氏朝鮮王朝では冷遇されていました。反乱が起きて差別の対象になったこともあります。

儒教的価値観の朝鮮では祖先の地は大切にするはずです。でも都合の悪いことはなかったことにするのが朝鮮の考え方(これは現代でも同じです)。朝鮮王朝が冷遇し続けたのは建国者が女真族や元の出身だというのを闇に葬りたかった、とも考えられます。

唐の末裔説

「李」という名字は現在は朝鮮半島でも多い姓です。でも、もともとは大陸で多い姓です。唐の王族も李氏でした。例えば唐を拡大した太宗皇帝の名は李世民です。

契丹や遊牧民族で唐に帰化した人も李氏を名のることがありました。

李成桂の一族である全州李氏の記録では「(全州李氏初代の)李翰は本来は唐朝帝国の末裔であり、李翰の新羅への渡来以降代々全州に住んでいた」と書かれています。

ただし、全州李氏の記録は信憑性の低いものなのでなんとも言えません。朝鮮では中国王朝の末裔と名のるのが流行った時期があるからです。そのため系図を書き換えることもあっったようです。

なぜこうなったかというと。朝鮮人は中国人になりたかったからです。李氏朝鮮の人々は自分たちを先進国だと思いたかったので、先進国の中国にルーツがあると言いたかったのです。

そのため李氏朝鮮では唐の末裔説が一般的に信じられていたようです。

李氏の不思議

「李」の名字は韓国の五大姓(金・李・朴・崔・鄭)のひとつ。韓国では人口の14%を占めるといわれます。金についで2番めに多い苗字です。

中国の五大姓(王・李・張・劉・陳)のひとつです。

朝鮮同様に中国の影響を受けているベトナムにも李氏は多いです。ただしベトナムは現在は公には漢字を使っていないため「李」とは書きません。でも「リ」という名字は残ってます。

ちなみに「李」の字は英語では「Li」あるいは「Lee」と書くように「リ」「リー」と発音します。レイと呼ぶ地域もあります。だから中国、台湾、ベトナム、北朝鮮の「李」氏は「イ」とはいいません。

ところが現代の韓国では「L」の子音が単語の頭に来ると、子音が脱落して「i」の母音だけになります。だから「李」と書いて「イ」と発音するのです。子音が脱落するのはもともとは朝鮮半島南部の方言という説もあります。

ちなみに子音の「L」が「N」にかわることもあります。
例:盧武鉉 本来は「ロ・ムヒョン」、韓国式では「ノ・ムヒョン」

つまり、李成桂本人は「イ・ソンゲ」とは発音してなかったはずなんですね。

最期に学説というより伝説を紹介します。

白頭山説

李成桂の父・李子春が、白頭山の神仙から「百日間祈願すれば産まれた子が天下を取るだろう」と言われました。李子春は言われたとおりに白頭山に参拝して産まれたのが李成桂という伝説があります。

初代の王様を神格化するための、よくある伝説と思えばいいでしょう。

白頭山は天帝の息子・桓雄(ファヌン)が降臨した太伯山だといわれます。

ファヌンは「太王四神記」でペ・ヨンジュが演じていた白装束の神様。檀君神話に出てきます。

白頭山は現在の中国と北朝鮮の間にある山です。桓雄の息子が初代の朝鮮王・檀君になったことから、白頭山は朝鮮民族の聖地になってるようです。

事実はともかく、高麗、李氏朝鮮、北朝鮮まで創始者のゆかりの地として白頭山は度々出てきます。もちろん伝説です。

朝鮮半島の民族は実は多様

朝鮮半島は大陸と接しているために民族の移動がたえず行われていました。海を渡って倭人(日本人)や南方の人々も来ました。朝鮮人の遺伝子(Y染色体ハプログループ)は意外に多様で、日本人よりも多様性が高いという研究結果もあります(日本人が単一という意味ではありません、日本人も多様です)。

現在の朝鮮半島には満州族(女真族)と同じ遺伝子を持つ人もいますし、日本人と同じ遺伝子を持つ人もいます。李成桂の出身地は女真族が多い朝鮮半島の北部。李成桂に女真族の血が流れていても不思議ではありません。

李成桂の出身については様々な説があるので本当のところは分かりません。日本や中国、韓国の学者が現在も研究中です。ドラマでは決して描かれない一面があるかもしれません。

ただし民族というのは文化や言葉、思想的に作られるものです。遺伝子や外観の区別だけで出来るものではありません。

結局のところ、李成桂が何民族だったのか本人に聞かないとわからないのかもしれませんね。

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