花神節とは中国の伝統的な習慣。
花朝節、百花生日、花神生日、挑菜節ともいいます。
中国ドラマでもごくたまに花神節が登場します。でも日本にはない習慣なので「何をする日なの?」と思うかもしれません。
花の神様をお祀りする日。なのですが。
女性のためのお祭りのようにもなっています。
花神節とはいったいどのようなお祭りなのか紹介します。
花神節とは
中国の民間信仰で花の神を祀る行事です。
明時代の記録では。
女性たちが花を髪に刺し、郊外に出て草花を鑑賞する「踏青」。若い女性たちが色とりどりの紙を切って、花をつけた枝に貼る「賞紅」などが行われる日。
と書かれています。
でも花朝節の時期や内容は時代や地域によってさまざまです。
花神節はいつするの?
時代や地域によって開催日は違います。
旧暦の2月2日、2月12日、2月15日、2月25日に行われる所もあります。
冬が過ぎて暖かくなり、草花が芽生える季節ですね。
南部の方が温かいので前に。
北部は寒いので後にずれます。
清朝時代には
北部では旧暦の2月15日。
南部では旧暦の2月12日に落ち着きました。
現代の私たちが使っているグレゴリオ暦(新暦)なら3月下旬ごろです。
ちなみに2021年なら3月24日が旧暦2月12日。3月27日が旧暦2月15日です。
花神って誰?
花神節で祀られる「花神」には様々な説があります。
「淮南子」という古代中国の書物には、「女夷(じょい、にょい)は、草木や人、獣や生き物の成長させる神」と書かれています。
豊穣神のひとつですが、とくに花を栽培する農家や花を売る商人に信仰されました。
「花姑」ともよばれます。
明の時代には「花姑」は「女夷」とは別の神とされました。
「花姑」は道教の神で花の化身。女仙人の魏夫人の弟子になって花の神になったとされます。
今ではどちらも「花神」とされ。「花姑」と「女夷」はとくに違いはありません。
花神節の由来と歴史
実は花神節の由来はあいまいです。
古代中国では秋の中秋と並ぶ、春の中春の祭りだったといわれます。古代より「花王(=花神)」が草木や地上の生き物の豊穣を司ると考えられていました。
中春(旧暦2月15日)、中秋(旧暦8月15日)には月にお供え物をして豊作を願う日でした。
時代や王朝が変わると「春分の日」が大切にされるようになりました。
唐や宋の時代には「清明節」に取って代わられました。
武則天は花が好きで旧暦2月15日の「花朝節」には花を集めさせ米と一緒に蒸して、大臣たちに褒美として配っていたといいます。
その後の宮廷では花神節は決まった行事は行わなくなり。貴族や知識人たちが集まって外出して、花を見ながら酒を飲み、詩を書いたりして遊ぶ日になりました。このとき貴族や知識人たち花の飾りをつけていました。
要するに「お花見」の始まりです。
宋の時代には草や木を植えたり、野草を採ったりする習慣も加わりました。
このころはまだ貴族の娯楽だったので庶民には普及していません。
明の時代にはより多くの人々が花神節を祝うようになりました。宮廷行事としては行われなくなったので、はっきりした日付や内容は決まってません。地域によって日にちも内容もバラバラです。
各地の宗教施設(道教の寺院)では花の神を祀り、農家や商人はお供え物をして花の神の誕生を祝います。門前町は灯籠で飾り付けされ、芝居やさまざまな出し物が用意され、訪れる人々を楽しませました。
楊貴妃や貂蝉など歴史上の12人の美女を花神にみたてた絵画や物語も作られました。
花神節はとくに女性のお祭りと決まってるわけではありませんが。時代とともに女性のお祭りとしての性格が強くなります。
未婚の女性が集まってお花見をしたり遊んだりします。
冒頭に書いた明時代の行事はそういった女性のお祭りの代表です。
他にも。
花神節には未婚の女性が花の神を拝み、花糕を食べ、花のようなきれいな女性になりたいとお願いしたります。
清朝より前には貴族や知識人たちが宴会したり詩を作ったりすることもあったようですが。清朝から後の時代は若い女性のためのお祭りのようになります。
下:イベントとして再現された「花朝節」
廃れた花神節
古代には旧暦8月15日の中秋節と並んで有名な行事だったようです。王朝時代も形を変えつつも行われていました。でも現代の中国では急激に衰退しました。
もともとはっきりした根拠がなく、日にちが地域によってバラバラ。カレンダーに載っていないのは致命的です。
国が決めた祝日にもなってません。
古代には豊作祈願でした。春の訪れを祝い、草花の成長を願い、いずれやってくる収穫を期待する行事だした。そのため都市化が進むにつれて豊作祈願の行事は必要が薄れたことも影響しているようです。
迷信や宗教を規制する共産党の方針もあって現代では行う人が減ったのも影響しているようです。
ランタンイベントのような印象的なアイテムがあるわけでもなく。行事のシンボルやアイテムが特に決まっていないのでイメージしにくい。というのも人気がない理由の一つかもしれません。
復活する花神節
でも現代は復活しつつあるようです。
西洋由来の新暦2月14日の情人節(バレンタインデー)は現代の中国でも人気があります。
そこで情人節を真似てバラの花やチョコレートを贈ることもあるようです(あまり広まってないようですが)。
現代では伝統的な衣装を来て昔の儀式を再現したりパレードするイベントが各地で行われています。主に観光目的、売上げアップ目的のイベントです。
女性たちが伝統衣装を来て集まるコスプレイベントになってるところもあります。
経済が発展して物を売るだけでなく、観光産業の需要が増えたことが大きいみたいですね。
日本でいえばお城の広間でやってる「忍者ショー」みたいなものです。
でもそういった文化に関心が集まるのは良いことだと思います。
ドラマ「海棠が色付く頃に」の演出
中国ドラマ「海棠が色付く頃に」でも「花神節」が登場します。ドラマでも道教の導師が登場して儀式のようなことをします。でも、伝統的な花の神を祀る行事というよりは、女性消費者に売り込むためのイベント的な意味が強いようです。
ドラマでは祭りの場で印象を悪くした主人公たちの店に客が来なくなるという演出があります。これなんかは集客のためのイベントを悪用した例といえますね。
ドラマでこういった演出ができるのも、花神節という行事がそれなりに知られているから。なのでしょうね。
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