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ヘチ 王座への道 1・2・3話:ヨニングンはなぜ卑しい王子なのか?【韓国ドラマ】

韓国時代劇『ヘチ 王座への道』は、のちに名君と呼ばれる第21代国王・英祖(ヨニン君/イ・グム)の若き日を描いたドラマです。

舞台はトンイでもおなじみの朝鮮王朝19代王・粛宗の時代。世子イ・ユンに跡継ぎがいないことが明らかになり、老論・少論・南人派がそれぞれ異なる王子を推して、宮中は世継ぎ争いの渦にのみ込まれていきます。

この記事では、第1〜3話のあらすじとともに、

  • 世継ぎ問題をめぐる派閥争いの構図(老論・少論・南人と各王子の関係)
  • 「卑しい王子」と呼ばれるヨニン君の立場と、のちの英祖へのつながり
  • 殺人帳面「計屍録」を通じて浮かび上がるミルプン君の異常性
  • 司憲府・茶母ヨジ・パク・ムンスら「法の正義」を担う人物たち

といったポイントも整理しながら、第1〜3話の注目ポイントを解説します。

ネタバレを含みますので、ストーリーを知りたくない方はご注意ください。

ドラマ全体の流れをざっと確認したい方は、先に 『ヘチ 王座への道』全話あらすじ一覧

 

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ヘチ 第1話 卑しい王子と世継ぎ争いの始まり

世子イ・ユンに子が望めないと分かり老論・少論が後継争いを始めます。ミルプン君は犯行の証拠となる帳面を隠し。ヨニン君はその帳面を見つけようと動き出します。
 

ヘチ 第1話「卑しい王子」あらすじ

世継ぎ不在と派閥争い

朝鮮王朝・粛宗の1719年、世子イ・ユンに子が望めないことが分かり、朝廷は次の王位をめぐってざわつき始めます。老論派は昭顕世子の子孫ミルプン君(イ・タン)を、少論派は粛宗の息子ヨルリョン君(イ・フォン)を推し、派閥ごとの思惑が渦巻く中、王子ヨニン君(イ・グム/後の英祖)は母の身分の低さから誰にも顧みられず、「卑しい王子」と蔑まれていました。

司憲府が追う“ミルプン君の事件”

一方、司憲府監察ハン・ジョンソクは領議政キム・チャンジュンの不正と、彼がもみ消そうとする殺人事件を追っており、その背後にミルプン君の名が浮かび上がります。司憲府の監察を夢見る浪人生パク・ムンスは科挙の試験場で、年齢詐称の疑いがある受験生ノ・テピョンを追いかけますが取り逃がし、男の正体がヨニン君の替え玉受験だったことを知ります。

宴席での冷たい視線と“卑しい王子”

宮中ではイヌォン王妃の誕生日の宴が開かれますが、ヨニン君は「使用人の息子」とさげすまれ、重臣たちの会話から次期王にミルプン君が推されていると知って失望します。

ヨジとの出会いと「計屍録」の存在

行き場を失い妓楼に向かったヨニン君は、妓生に扮して潜入捜査中の茶母ヨジと出会い、ミルプン君が人を殺しては帳面に記録し、「計屍録」と呼んでいるという噂を耳にします。殺人を楽しむような男を王にしてはならない。ヨニン君は計屍録を探し出す決意を固めるのでした。

 

注目点:ヨニン君が「卑しい王子」と蔑まれたのはなぜ?

第1話ではヨニン君(後の英祖)に対して宴席での冷たい視線、「使用人の息子」という蔑視など、王子にもかかわらず冷たい視線が注がれる様子が描かれました。彼自身は有能で礼儀正しい人物なのに、母の身分のせいで何をしても評価されません。

朝鮮王朝では母の身分が子の地位を大きく左右する「出自の序列」が絶対的な価値観として働いていました。側室でも身分の低い“宮人出身”の場合、その子は政治的に利用価値が低いとみなされがちでした。

私たちはヨニン君が後に王になる史実を知っていますが、それだけにこの逆境の描写が印象深いです。

 

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ヘチ 第2話 計屍録を追うヨニン君とヨジ

ヨニン君とヨジはミルプン君がの帳簿「計屍録」を入手するも、箱の中には紅葉の葉が詰まっているだけ。しかしヨジは紅葉の葉が重要な手がかりだと気づきます。一方、粛宗はヨニン君に王の器を示すよう求めるのでした。

 

第2話「あなたの名は」あらすじ

計屍録を求めるヨニン君とヨジ

ミルプン君(イ・タン)が殺した人間を記録したという帳面「計屍録」を手に入れるため、ヨニン君(イ・グム/後の英祖)はミルプン君主催の狩りに同行します。司憲府の茶母ヨジも潜入し、計屍録が入っていそうな木箱を見つけますが、逃走中にミルプン君に捕まり命の危機に陥ります。

駆けつけたヨニン君がミルプン君と刃を交え、辛うじてヨジを救出。勝負はヨニン君の勝ちに終わり、ミルプン君の面目は丸つぶれとなります。司憲府に戻ったヨジが木箱を開けると、中身は大量の紅葉の葉だけでヨニン君にも意味は分かりません。

ノ・テピョンの遺体とミルプン君の痕跡

やがて街ではミルプン君が殺人鬼だという噂が広がり、ヨジは紅葉がノ・テピョンの姪が自殺した場所に落ちていた葉と同じだと気付きます。

木箱はミルプン君の“戦利品”を集めた証拠かもしれないと考えたヨジが山中を調べると部下たちがノ・テピョンの遺体を掘り返し、埋め直している場面に遭遇します。その様子をミルプン君を追うヨニン君と、替え玉受験の真相を追っていたパク・ムンスも目撃していました。

粛宗がヨニン君に託した思い

ミルプン君の噂を耳にした粛宗はヨニン君を呼び出し、その素行を叱りながらも王の器を感じていることを明かします。自らの死期を悟る粛宗は、ヨニン君に「王としての素質を世に示せ」と命じ、やがて司憲府の最高会議が開かれようとしていました。

 

注目点:紅葉が詰まった木箱の意味するものとは?

ヨジが命がけで持ち帰った木箱の中身は期待した決定的証拠ではなく、大量の紅葉だけでした。でもヨジは、その紅葉がノ・テピョンの姪の自殺現場に落ちていた葉と同じだと気づきます。

同じ紅葉が繰り返し現れるということは、殺人のたびに葉を集める異常な行動パターンが見えてきます。つまりそれだけミルプン君が歪んだ心理の持ち主だと表現しているのです。

朝鮮時代の実際の刑事手続きでは物証より自白や証言が重視され、現代のように証拠を集めて連続殺人を立証するのはかなり難しい作業でした。

だからこそドラマは「紅葉」という印象的なアイテムを利用して“異常性”を印象づけ。証拠が乏しくても視聴者に「あいつが犯人・異常な奴」と視聴者に理解させる工夫をしていると考えられます。

と同時に司憲府のような監察機関がどれほど手探りで真相に迫らねばならなかったかも感じさせますね。

 

ヘチ 第3話 ヨニン君の証言と「ヘチ」の意味

司憲府ではハン・ジョンソクが主張したミルプン君の取り調べが決定されました。ミルプン君は逮捕され仲間たちは「ヘチ」の正義が実現したと喜びます。一方、ミン・ジノンは老論派のためヨルリョン君擁立を企み、その条件としてヨニン君に証言撤回を迫るのでした。

 

第2話「美徳の不運」あらすじ

司憲府で揺れる科挙代理受験と殺人事件

司憲府の最高会議が始まると、ヨニン君は証言台に立ち、ノ・テピョンの科挙代理受験を自分が行ったと明かします。しかし、司憲府上層部は代理受験とノ・テピョン殺害事件が結びつくことを恐れ、証言を受け入れようとしませんでした。

その空気を破ったのがハン・ジョンソクです。彼は事件の真相を解く鍵がミルプン君にあると主張。身柄の確保を訴えます。大司憲イ・イギョムは反対しますが、下級官僚たちがジョンソクを支持したことで、ついにミルプン君の逮捕が決定されました。

粛宗への訴えとヨニン君の覚悟

その後、ヨニン君は粛宗に謁見し自らを済州島に幽閉するよう願い出ます。粛宗はその覚悟に胸を打たれ、涙を浮かべながらその訴えを受け入れました。

ミルプン君が司憲府に捕らえられ、ハン・ジョンソク、ヨジ、パク・ムンスは正義が通ったと喜び合います。ヨニン君も彼らと席を共にし、たとえ自分が遠くへ追われても信頼できる仲間がいることに安堵します。

老論派ミン・ジノンが仕掛ける“究極の選択”

老論派の重鎮ミン・ジノンは政権掌握のためには王位候補が誰であっても構わないと考えていました。その結果、ミルプン君ではなくヨルリョン君の擁立を決断します。

しかしそのためには、司憲府が老論を脅かす動きを封じなければなりません。

そこでミン・ジノンはヨニン君に取引を提示します。
「老論がヨルリョン君を支持する代わりに、あなたは証言を撤回し、ハン・ジョンソクの策略に乗せられたと語ってほしい」

ヨニン君は迷います。取引を受け入れればヨルリョン君が王位に就ける可能性は高まりますが、ハン・ジョンソクは処罰されます。さらに推薦された王子が即位できなかった場合、後に命を狙われる危険もあります。

王室と仲間、そして自らの信義。ヨニン君は深く悩むのでした。

注目点:ハン・ジョンソクと下級官僚の決断はなぜ司憲府の反乱のように描かれたのか?

重い空気が漂う会議で沈黙を破ったのは司憲府の高官ではなくハン・ジョンソクでした。彼はミルプン君の身柄確保こそ真相究明への道だと訴え、下級官僚たちも一緒に声を上げます。その結果、権力者の大司憲イ・イギョムの反対を押し切る形でついにミルプン君逮捕が決定します。

しがらみに囚われた名門出身の高官よりも、下層官僚たちのほうが正義感が強いという逆転現象はどの組織でもあることです。

史実の司憲府でも弾劾上疏を主導したのは若手・中下級官僚のことが多く、彼らはしばしば左遷や流刑のリスクを負いながら諫言しました。

ドラマのジョンソクたちの行動は組織が腐っていても内部からそれを正そうとする正義が存在していたこと。そしてその声がようやく一度だけ権力を動かした「奇跡の瞬間」を表現しているといえるでしょう。

 

1~3話で整理しておきたい人物関係

第1〜3話ではまだ登場人物が出そろった段階ですが、「誰が誰の味方なのか」「誰が世継ぎ候補なのか」をここで一度整理しておくと、その後の展開がぐっと追いやすくなります。王族・司憲府・派閥政治の三つのグループに分けて見てみましょう。

王族と世継ぎ候補たち

  • 粛宗: 朝鮮王朝19代王。世子イ・ユンに跡継ぎがいないことから、次の王位を誰に託すか悩んでいる。 ヨニン君の素質を見抜きつつも、その放蕩ぶりに頭を抱える父親でもある。
  • 世子イ・ユン: 粛宗の嫡子。子が望めないため、表向きは次期王だが、実際には世継ぎ問題の火種となっている存在。
  • ヨニン君(イ・グム/後の英祖): 粛宗の息子だが、母の身分が低いことで「卑しい王子」と蔑まれている。本来は王位争いの蚊帳の外に置かれているが、粛宗は内心その器を意識している。
  • ミルプン君(イ・タン): 昭顕世子の子孫で、老論派が推す世継ぎ候補。血筋の正統性を誇る一方で、人を殺しては「計屍録」に記録するという危険な嗜好を持つ。
  • ヨルリョン君(イ・フォン): 粛宗の別の息子で、少論派が推す世継ぎ候補。老論に対抗するため、別の王子を世継ぎに立てようとしている。

司憲府と「ヘチ」の正義を担う人々

  • ハン・ジョンソク: 司憲府監察。不正と戦う“硬派な監察官”で、領議政 キム・チャンジュン の不正とミルプン君の殺人事件を追う。「ヘチ(獬豸)」の象徴となる法の正義側の中心人物。
  • ヨジ: 司憲府の茶母。ときに妓生に変装して潜入捜査を行う女性で、計屍録の手がかりをつかむ重要な役割を果たす。
  • パク・ムンス: 司憲府の監察を志す科挙浪人。替え玉受験をきっかけにヨニン君と出会い、ミルプン君の罪を追う仲間になっていく。

派閥政治と重臣たち

  • 老論派: 昭顕世子の血筋であるミルプン君を推す勢力。王位継承を通じて、自分たちが政治の主導権を握り続けることを第一に考えている。
  • 少論派: 粛宗の息子ヨルリョン君を推す勢力。老論に対抗するため、別の王子を世継ぎに立てようとしている。
  • 南人派: かつて力を持っていたが、今は弱体化している派閥。世子イ・ユンを支持しているものの政治的な発言力は小さい。
  • ミン・ジノン: 老論派の実力者。ミルプン君に見切りをつけヨルリョン君を担ぐことも辞さない「権力の現実主義者」として描かれる。第3話ではヨニン君に取引を持ちかけ、究極の選択を迫る。
  • キム・チャンジュン: 領議政。ハン・ジョンソクが追う不正の中心人物で、ミルプン君の罪を隠すことで自らの地位と派閥の利益を守ろうとする。
    (モデルは金昌集(キム・チャンジプ)

第1〜3話はこのように王族・司憲府・派閥という三つのグループが入り乱れ「誰がどの王子を支え、誰がどの正義を掲げているのか」が見えてくるドラマ全体の導入部といえます。

 

歴史解説

ヘチ(獬豸)とは?ドラマで「正義の象徴」とされる理由

ドラマの中で「正義の象徴」として登場するヘチは、朝鮮王朝だけでなく東アジア全体で知られる想像上の獣。中国では「獬豸(かいち)」とも呼ばれます。ライオンのような体に一本の角を持ち、「善悪を見分け、嘘や不正を働く者を噛みついて裁く」性質があると信じられてきました。

朝鮮時代には、このヘチの像が法と裁きの公平さを象徴する存在として扱われ、宮殿の前や官衙の前に置かれることもありました。

ドラマがヨニン君たち“正義側”の象徴としてヘチを使うのは、こうした歴史的イメージを踏まえた演出だと言えます。

ヘチについてもっと知りたい方はこちらからどうぞ
獬豸ヘチ 伝説の生き物の意味とは?なぜ正義の象徴なの?

 

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第1〜3話の流れや人物関係が整理できたら、あわせて次のページもチェックしておくと『ヘチ 王座への道』の世界がより分かりやすくなります。

 

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執筆者:フミヤ(歴史ブロガー)
京都在住。2017年から韓国・中国時代劇と史実をテーマにブログを運営。これまでに1500本以上の記事を執筆。90本以上の韓国・中国歴史ドラマを視聴し、史実とドラマの違いを史料(『朝鮮王朝実録』『三国史記』『三国遺事』『二十四史』など)に基づき初心者にもわかりやすく解説しています。類似サイトが増えた今も、朝鮮半島を含めたアジアとドラマを紹介するブログの一つとして更新を続けています。

詳しい経歴や執筆方針は プロフィールページをご覧ください。
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