韓国ドラマ 華政(ファジョン)は。朝鮮王朝を舞台にした韓国時代劇。あまり知られていない貞明公主の人生を描いた歴史ドラマです。
光海君、仁祖など、韓国時代劇でおなじみの歴史上の人物たちが織りなす権力闘争や、朝鮮を取り巻く国際情勢など見どころ満載です。
主人公の貞明公主は、王女ですが家族の危機や国の混乱の真っただ中でたくましく生きていきます。
史実に基づいた部分もあるものの、ドラマならではのフィクションも加わり、歴史に詳しくない人でも楽しめる作品です。
この記事では「華政(ファジョン)」に登場する主要な人物や出来事のポイントをおさえてドラマと史実の違いを紹介。
ドラマを見るときの参考にしてください。
- ドラマの時代背景。朝鮮国内と国際情勢
- 貞明公主や光海君・仁祖などの史実とドラマの違い。
- 貞明公主・光海君・仁祖・カンイヌ・ヨジョンたちの結末。
- 史実の再現性とドラマの魅力
注意点
ネタバレ: 登場人物の結末など、ネタバレを含む内容が含まれています。
韓国ドラマ『華政』の実話と創作部分
華政とはどんなドラマ?
韓国ドラマ「華政(ファジョン)」は、韓国MBCで制作された時代劇。朝鮮王朝を舞台にした歴史フィクションで、史実に基づく話を元にドラマティックなストーリーが展開されます。
ドラマで初めて知った人も多い王女が主人公
貞明公主というほぼ無名の人物が主人公。歴史好きでも知られていなかった人物ですが、「華政」で初めて知った人も多いでしょう。でも後の正祖の母やホン・グギョンの祖先になった人です。実は朝鮮王朝では重要だった人物なのです。
その王女(公主)の立場からみた王朝の権力闘争や国や人々が遭遇する困難など。それまでの韓国時代劇にない新鮮な驚きがあります。
歴史上の有名人の見ごたえある駆け引きと争い
ドラマでは光海君、仁祖といった韓国ドラマでおなじみの歴史上の人物が登場。
彼らが繰り広げる複雑な人間模様や政治的な駆け引き。その中で翻弄されながらも運命に立ち向かう貞明公主の姿。公主をとりまく男たちの争いと友情など。様々要素がドラマには詰まっています。
長いけど飽きない
華政は全65話と長い作品です。でも様々な要素がバランスよく散りばめられ、テンポよく話が進むので長さを感じずに楽めます。
ヒットメーカーの脚本家にも注目
脚本は作家のキム・イヨン。
彼女が脚本を担当したドラマは「イ・サン」「トンイ」「華政」「ヘチ」など。彼女の手掛けた時代劇はハズレがないといっていいくらいです。今後もキム・イヨンが手掛けるドラマがあれば要チェックです。
華政はいつの時代?
『華政』は17世紀初頭の李氏朝鮮時代を舞台にしています。
ドラマは14代 宣祖の末期から始まり。
- 1608年。宣祖の死と光海君の即位。
- 1623年。西人派と綾陽君のクーデターで光海君が失脚。仁祖が即位。
- 1636末~1637年。清との戦争(丙子戦争)。
といった朝鮮の重要事件が続き。
1649年の仁祖の死と孝宗の即位でドラマが終わります。
40年以上の年月を65話で消化。とても時間軸の長いドラマなのですね。
でもそう考えると最終回の貞明公主は46歳のはずですけど……
若いですね。
「華政」の時代背景
『華政』の時代は14代 宣祖から光海君、そして仁祖への王位継承といった激動の時代です。
宣祖の時代には日本との戦争がありました。ドラマの開始時点ではその混乱も収まっています。でも国内では次期国王をめぐる権力争いが起きています。
光海君の即位後も宣祖の王妃が産んだ永昌大君(ヨンチャンテグン)の存在が問題に。光海君と彼を支持する大北派たちが対立する勢力を粛清。
そのため、国内では反発が起きて西人派と綾陽君がクーデターを起こして光海君が廃位されてしまいます。
綾陽君が即位して仁祖が誕生するのですが。それでも朝鮮の国内は安定しません。むしろ更に大きな困難が待ち受けているのでした。
ドラマでも清との戦いの混乱や仁祖が受ける屈辱。清の人質になる昭顕世子などが描かれています。
当時の朝鮮を取り巻く国際情勢
そのころの日本
日本と朝鮮・明の戦争は豊臣秀吉の死亡で停戦。その後、日本では江戸幕府が誕生。江戸幕府は朝鮮に国交を求めました。朝鮮は日本の要求をのんで交易と使節派遣を再開。
ドラマでは朝鮮からの使節団が日本を訪れる様子が描かれています。ドラマの光海君は日本と取引して火薬の原料になる硫黄を入手しようとしています。
日本は東アジアでも有数の硫黄の生産国。朝鮮では硫黄はほぼ採れないので輸入するしかありません。ドラマの光海君の目の付け所はいいのですが。それは明への反逆とも受け取れる行いです。
史実では光海君が日本から硫黄を輸入したという記録はありません。ドラマも非公式な形で輸入しようとしているので史実とのつじつまを合わせています。
そのころの中国周辺
朝鮮半島で日本と明・朝鮮が戦っている間。満洲地方(中国東北部)では後金が建国。明を脅かす存在になりました。
明は政治の腐敗、国内の反乱、対外戦争で消耗していきますが。朝鮮には様々な要求を突きつけてきます。朝鮮国内にも未だに明を宗主国と仰ぐ勢力が根強く。彼らが光海君を打倒する勢力になるのでした。
後金を受け継いだホンタイジは「皇帝」を名乗り「清」と国名を変え。朝鮮に「明への従属を止めて清の従属国」になるよう要求してきます。
このへんは史実もドラマも同じ。
様々な国の思惑が入り乱れる中で朝鮮は生き延びていかなければいけません。光海君、仁祖たちの決断も見どころひとつになります。
貞明公主の実話と創作部分
貞明公主の物語
ドラマ「華政」では、貞明公主(チョンミョン)を中心にその波乱に満ちた生涯が描かれています。
貞明公主は1603年6月27日に生まれ、享年83歳でその生涯を全うしました。
彼女の父は宣祖、母は仁穆王后。異母兄に光海君、同母弟に永昌大君がいます。光海君の時代には家族が幽閉されたり、弟が殺害されるなどの苦難を乗り越えます。仁祖の時代に開放されるものの、仁祖との関係はよくありませんでした。
それでも王族としての役割をはたし。粛宗の時代まで行き続け、王室の長老として尊敬される存在になります。
貞明公主は洪柱元(ホン・ジュウォン)と結婚。二人の子孫は名門の洪一族として続き。その一族から正祖の母・恵慶宮。正祖の側近・洪国栄(ホン・グギョン)が誕生します。
火薬製造はドラマの創作
韓国ドラマ『華政』では、貞明公主が日本の硫黄鉱山で硫黄の精製を学ぶエピソードが描かれています。でもこれらは史実にはない創作の部分です。
実際の貞明公主は光海君時代には西宮で幽閉されていたので日本には行った事はありません。
火器都監(ファギトガム)も実在しません。架空の設定です。でも孝宗の時代に似たような組織はありました。
ホン・ジュウォンと貞明公主の恋愛
韓国ドラマ『華政』ではホン・ジュウォンと貞明公主の関係が重要な要素として描かれています。
ドラマでは王妃の息子・永昌大君を守るため有力者の後ろ盾を探しています。そこで候補にあがったのが父 ホン・ヨンの息子ホン・ジュウォンでした。
でもカン・ジュソンの息子 カン・イヌも貞明公主に心を惹かれています。ドラマでは貞明公主とホン・ジュウォン、カン・イヌの三角関係も見どころになります。
ホン・ジュウォンは史実でも貞明公主の夫。政略結婚でありながらドラマではこの2人の関係がロマンティックに描かれ、視聴者にとって感情移入しやすい展開になっています。
カン・イヌは架空の存在。
ドラマは史実を基にしながらも視聴者に共感と感動を提供するために多くのフィクションを取り入れています。
華政の人間関係とその実話
貞明公主と光海君の関係
光海君は宣祖の側室の次男として誕生。でもそのため明からは世子とは認められませんでした。
ドラマの光海君は貞明公主や血縁者には優しくしていました。でもある予言のせいで貞明公主の弟を警戒するように。
史実ではプライベートな部分までは分かりませんが。王に即位したばかりのころは貞明公主をはじめとする血縁者に対しも配慮を示していました。でもその後の権力闘争で大北派が永昌大君を危険だと判断。関係者に弾圧を加え永昌大君を処刑。仁穆王后と貞明公主は幽閉されてしまいます。
その後は貞明公主と光海君の交流はなかったでしょう。
ドラマでは幽閉されるはずの貞明公主が死んだことになってしまいました。戻ってきた貞明公主に対しても光海君は彼女を気遣い守ろうとします。史実とはかなりのアレンジが加えられている部分です。
仁祖と光海君の確執
光海君が失脚した理由は幾つかありますが。ドラマでは「綾陽君」と光海君の確執に注目。大きく取り上げています。
史実でも綾陽君は光海君と大北派に弟を殺害され復讐を願っていたといわれます。ドラマでも弟と父を失った綾陽君にとって光海君を倒すクーデターは大きな目標でした。
でもドラマの綾陽君は弟に比べると人望がなく光海君からも見下されている存在。そんな綾陽君でしたが、キム・ジャジョムら西人派に担がれてクーデターの首謀者へと変化。やがては光海君を打倒します。
取るに足らないはずの綾陽君が光海君を倒せたのは裏にカン・ジュソンの暗躍があった。というのがドラマの流れ。
でも王の器でないものが王になったばかりに、朝鮮は光海君時代よりもひどい困難に巻き込まれる。というのがドラマのストーリー。史実にフィクションを加えることで複雑な歴史をわかりやすくドラマにしているのですね。
登場人物たちの結末
主要な登場人物のドラマの中での結末を紹介します。
ネタバレになるのでまだ知りたくない方はご注意ください。
貞明公主(チョンミョンコンジュ)の結末
韓国ドラマ『華政』の貞明公主(チョンミョン)は、朝鮮王室の一員としてさまざまな試練を乗り越えました。敵との戦いに勝ち。平穏な生活を送ることができるかに思えました。
でもドラマの貞明公主が選んだのは平穏な道ではありません。最後は孝宗を牽制する役を自らかってでたのです。彼女が理想とする「華政(華やかな理想の政治)」を実現するために。常に王を監視する役を選びました。
最終回を見て初めて 華政(ファジョン)の意味がわかるという心憎い演出です。
史実の貞明公主はここまであからさまに孝宗に敵対したわけではないようですが。「華政」が彼女の理想だったのは間違いないようです。
光海君(クァンへグン)の結末
ドラマ『華政』の光海君(クァンへグン)は複雑なキャラクターです。
兄としては貞明公主を思いやる一方で、政権を握る過程での権力闘争に身を投じます。味方の大北派の横暴を知りつつ、あえて見過ごしていました。そうすることが自分にとっても都合がいいとわかっているからです。
でもその結果、最終的には王座を失いました。
光海君は暴君と言われることもありますし、そうではないという意見もあります。ドラマの光海君は単純な暴君ではなく、かといってそれをひっくり返したヒーローでもない。
光海君は史実に基づきつつもドラマチックにアレンジ。白黒つけられない魅力的なキャラクターとして描かれています。
仁祖(インジョ)/綾陽君(ヌンヤングン)の結末
綾陽君(ヌンヤングン)/仁祖(インジョ)は『華政』の中でも特に重要なキャラクターです。
彼は貞主明公を利用しようとするかと思えば、時には対立。ドラマでは貞明公主が光海君側にたっているため対立する場面が多くなります。
でも最終的に綾陽君は光海君に勝ち王になりました。でも貞明公主との対立は続きます。公主は昭顕世子に協力。その昭顕世子も命を失います。ドラマでは仁祖は昭顕世子の死には関わっていないという設定。
その後も貞明公主との対立は続きますが。晩年にはかつての勢いは失せ、側室にしたヨジョンにあやつられそうに。でも最後は貞明公主の説得に答え鳳林大君にあとを任せ。波乱の人生を終えるのでした。
ホン・ジュウォンと貞明公主の関係
貞明公主とホン・ジュウォンとの関係も『華政』の見どころの一つです。
政治的立場や時代の流れに翻弄されながらも貞明公主とは深い絆が育まれます。史実通り二人は結婚。子供も生まれました。この子どもたちが後の正祖の母・恵慶宮や、ホン・グギョンの祖先になるかと思うと感慨深いですね。
実話とフィクションがうまく絡み合い、感動的なラブストーリーとしてアレンジされていると思います。
カン・イヌの最後
カン・イヌの最後はドラマにおける重要なクライマックスの一つです。貞明公主をずっと好きでしたが。親友のホン・ジュウォンに敗れ。貞明公主の夫にはなれませんでした。
その過程で彼は父の側につき、非情な面も見せましたがやはり悪人にはなれません。
最終的には貞明公主の側について自ら犠牲となって、父の間違いを正して彼女たちを守る道を選びます。その最期は視聴者にとっても衝撃と感慨を与えるものだと思います。
ジャギョンの最後
ジャギョンはファイと名乗っていた貞明公主が日本で知り合った人物。硫黄鉱山で働かされている少年でした。彼の出身は朝鮮。硫黄鉱山でファイと打ち解け仲間になりますが、彼女を朝鮮に戻すために協力。その後は行方不明になっていました。
でもジャギョンは朝鮮に戻ってきました。その後は、ファイこと貞明公主を守るボディーガードとなります。公主の立場を回復して自由に動けない貞明公主のかわりに実際に動いて、彼女をサポートする役に徹します。
ヨジョンの最後
ヨジョンは後半の印象的な敵キャラ。仁祖の側室・貴人趙氏がモデル。
史実では昭顕世子夫婦とと対立、昭顕世子を死に追いやる原因を作ったともその死に関わっているとも言われます。
ドラマではキム・ジャジョムの養女の設定。悪知恵が働き悪女ぶりをみせますが、どこか詰めが甘く小物っぽさもみせます。
仁祖との間に生まれた子供を後継者にしようと画策。最終的にはそれも失敗。賜死となってしまうのでした。
最終話のカン・ジュソンとの決戦の結末
最終話で描かれるカン・ジュソンとの決戦は『華政』全体を締めくくる重要な場面です。
カン・ジュソンは架空のキャラながら『華政』世界を裏で操るボスキャラとして設定されています。両班でありながら手広く商売も行い。その財力で朝鮮の役に立ちを操っていました。
目的のためには敵とも手を組み、明や清も味方につけしぶとい敵キャラとして最後まで生き残ります。この強かさとしぶとさが彼の持ち味。でも彼との対決を通して貞明公主たちも成長していきます。
しかし最終回では彼の悪運も尽きてしまいます。反乱を起こそうとして失敗。そして彼を倒す力になったのは皮肉なことに後継者と思っていた息子カン・イヌでした。
カン・ジュソンは清々しいほどのみごとな悪役ぶり。殺られ方も印象的な敵キャラでした。
『華政』の評価
史実に対する忠実さより面白さ
韓国ドラマ「華政(ファジョン)」は、朝鮮王朝を舞台にした実話に基づく作り話です。
貞明公主や光海君、仁祖などの歴史的な人物を描きながらも大胆にアレンジされています。
史実を元にしながら、複雑な部分は省略・アレンジしてエンターテイメント作品として楽しめるストーリーにするのがキム・イヨン脚本の特徴。「イ・サン」や「トンイ」でも発揮した彼女のアレンジ力はこの作品でも十分に活かされています。
そのため史実の再現性は劣るのですが、その分「わかりやすすく」「話のテンポが良く」「おもしろい」作品になっていると思います。
それに細かい部分は違うけど、だいたいの雰囲気や時代の流れはそれほど外れていないといえるのではないでしょうか。
そのため多くの視聴者から高い評価を受けているのですね。
どこまで史実でどこからが作り話なのか?と考えたり調べたりしながら作品を楽しむのも、「華政」の楽しみ方のひとつかもしれません。
あなたは華政のどこが印象に残りましたか?
もしよかったらコメント欄に書いてくださいね。
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