中国ドラマ「大宋宮詞(だいそうきゅうし) ~愛と策謀の宮廷絵巻~」の紹介記事です。
(大宗宮詞ではありません、ご注意下さい)
主人公は宋の時代に実在した章献明粛皇后 劉娥(りゅう・が)。
庶民として生まれ育った劉娥はやがて皇子の趙元侃と出会い。趙元侃の恋仲になります。趙元侃が真宗皇帝になると後宮入して側室から皇后になりました。
真宗皇帝の死後は幼い仁宗皇帝の代わりに摂政皇太后になって国の政治を行いました。
史実では劉娥が後宮に入るまでは辛い人生でした。ドラマでは脚色され、苦労した平民時代から国のトップに上り詰める激動の生涯が描かれます。
ドラマ前半の山場が遼(契丹)との戦いは「燕雲台」後半でも描かれました。同じ時代を宋の立場から描いたドラマのように見えます。でも「大宋宮詞」では宋が強く立派な国に描かれていて史実とは違う展開に。
「大宋宮詞」は時代考証がメチャクチャで史実と違う所が多く、中国のサイトでも歴史に詳しいファンからは叩かれていたのですが。ドラマと割り切って庶民から皇后になって国を動かした女性の物語と思えば楽しめます。
大宋宮詞 番組情報
原題:大宋宮詞
英語:Palace of Devotion
2021、中国
全61話
大宋宮詞 用語解説
章献明粛皇后(しょうけんめいしゅくこうごう)
ヒロイン劉娥のモデルになったのは章献明粛皇后。
宋の時代に実在した女性。第3代真宗の皇后。本名は不明。
庶民の夫と結婚、貧しい生活をしていましたが、皇子の趙元侃(後の真宗)に売られて妾になり。趙元侃(趙恒)が皇帝に即位すると側室に。実の子がいなかったので真宗と共謀して侍女の李氏が生んだ子を養子にして自分の子供(後の仁宗)にして、皇后・皇太后になりました。仁宗が李氏の子なのは劉娥が生きている間は秘密にされました。
頭がよく真宗から信頼され。真宗が病になると代わりに政務を行いました。仁宗が成人しても権限を手放さず、64歳で死ぬ直前まで摂政を続けました。死の間際には皇帝の衣装を着たこともあります。
唐の武則天、漢の呂后とともに中国三大女主(女の君主)と呼ばれます。武則天のように皇帝にはなってませんが、事実上の君主として振る舞っていました。
ドラマでは現代の視聴者の共感を得やすいようにアレンジされています。どのように描かれるのかは見てのお楽しみ。
燕雲十六州(えんうんじゅうろくしゅう)
万里の長城の南側。燕京(現在の北京)や雲州(大同)周辺の16の地域。かつて遼(契丹)が軍事援助と引き換えに後晋からもらった土地。
遼にとっては「燕雲十六州」は取引で手に入れた土地なので当然自分たちの領土。
遊牧民の契丹が燕雲十六州を支配し続けたので中原に次々に遊牧民が入ってきました。遼だけでなく、後の金・元が誕生するきっかけにもなります。
一方、漢人が多く住む農耕地帯とされているので漢人王朝も「自分たちの土地」の意識が強いです。宋は燕雲十六州を一度も所有したはありませんが、それでも「奪還」と言ってるのはそのため。
後周は遼と戦って南部の莫州・瀛州・寧州を「奪還」。その後、北宋が建国。三州は北宋のものになりました。北宋の太宗は残りの州も「奪還」するため挙兵しましたが遼に撃退されます。
1004年。遼の聖宗と蕭太后は内乱を治めると南部の州の奪還を目指して挙兵。燕雲十六州+1州を遼の領土にします。北宋も真宗自らが遠征、徹底抗戦の姿勢をみせ両軍は膠着状態になりました。
澶淵の盟(せんえんのめい)
1004年の戦いの後、宋と遼の間で結ばれた平和条約。
この条約ではお互いの領土はそのまま。宋は遼に毎年、絹20万疋、銀10万両を贈る事になりました。宋は貢ぎ物とは認めたくないので「歳幣」と言いました。
ドラマの公式HPに載っている「遼が宋に臣下の礼を取ることで決着」は間違い。遼は宋の臣下になっていません。盟約ではお互いを「大◯皇帝」と呼び両国は対等な形で条約が結ばれています。「他国が皇帝を名のるのを許さない」はずの中華王朝にとっては事実上の敗北宣言。条約の中身も宋に不利な内容です。
でも宋が「兄」遼が「弟」の関係を結ぶことになりました。遊牧民は実力社会なので兄弟に優劣はありませんが、儒教国の宋では「兄が弟より上」なのででかろうじて宋の面目が保たれました。
それでも被害の出る戦争をせずにお金で平和を買えたのはお互いにとって大きなメリットでした。
以後。遼と北宋が金に滅ぼされるまで百数十年近く続きました。
宋の発展は「澶淵の盟」があったからこそ。それがなければ遼と西夏に滅ぼされるか、内乱で滅亡したでしょう。それくらい重要な盟約です。
楊家将演義
「楊家将演義」は明朝時代にできた講談・小説。このドラマには登場しないキーワードですが。藩家が悪者だったり、鐵鏡公主と木易が結婚したり。明らかに「楊家将演義」の影響を受けています。「楊家将演義」は史実を無視した物語で宋が遼に戦争で勝ちます。遼との戦いの後も話は続いて最終的には怪物相手のファンタジーになってしまいます。中国人に人気があるためか「大宋宮詞」では楊家将演義の一部設定をドラマに使ってます。
大宋宮詞 の主要人物
劉娥(りゅう・が)/章献明粛皇后
演:劉濤
(ミーユエ:羋姝、司馬懿・軍師連盟:張春華)
ヒロイン劉娥を演じるのはミーユエで羋姝を演じた劉濤(リウ・タオ)。40近い年齢で15歳の少女を演じるのは中国ドラマのお約束?でも成人後の貫禄はさすが。
劉妃 → 徳妃 → 皇后 → 皇太后
真宗 趙恒の3人めの皇后。後に攝政太后。
戦で両親をなくし趙元侃(ちょう・げんかん、後の真宗 趙恒)に仕えます。後に側室~皇后になりました。最初の子供をなくした後。侍女が生んだ子を養子に迎えます。戦乱のときには真宗 趙恒の相談相手になり、真宗を助けました。真宗の病死後。仁宗が即位。垂廉聴政を行います。厳しくも公平な政治を行い、北宋に安帝をもたらしました。
史実では実子はいませんが。ドラマでは趙吉(ちょう・きつ)という息子がいます。
趙恒(ちょう・こう)/真宗
演:周渝民
太宗の第三皇子。
後に第三代皇帝 真宗。
最初の名前は 元侃(げんかん)。皇太子になったあと 恒(こう)に名前を変えます。
皇帝としての在位期間は25年。
晩年は病気がちになり劉娥の助けをかりながら政治を行いました。遼との戦争を終わらせ平和な時代になり「咸平之治」とよばれる治世を築きます。
蕭綽(しょう・しゃく)/蕭太后
演:歸亞蕾
遼の蕭太后。契丹人。睿智蕭皇后。
息子の聖宗(耶律文殊奴)と共に宋に遠征を行い。「澶淵の盟」という和平条約を結びました。
宋の皇室
趙光義(ちょう・こうぎ)/太宗
演:塗們
宋の第2代皇帝。宋の建国者 太祖 趙匡胤の弟。
趙元佐、趙元僖、趙恒の父親。
北漢を滅ぼし、縁雲十六州を除き中華をほぼ統一。宋の基礎を作った人。
李穆清/明徳皇后
演:趙子琪
太宗の皇后。
趙元佐(ちょう・げんさ)
演:肖陽
太宗 趙光義の第一皇子。
真宗 趙恒の長兄。
趙元僖(ちょう・げんき)
演:韓昊軒
太宗 趙光義の第二皇子。
真宗 趙恒の二兄。
趙元份(ちょう・げんふん)/ 冀王
演:陳政陽
太宗 趙光義の第四皇子。
真宗 趙恒の弟。
趙廷美(ちょう・ていび)/秦王
演:趙文瑄
太宗 趙光義の弟。
権力への執着があり陰謀を企みます。太宗の時代に陰謀がばれて処刑。
郭清漪(かく・せいい)
演:斉溪
第一皇后。
趙恒の最初の正妻。
穏やかな人物でしたが、息子の趙佑を無くして失意のなかで死亡。
潘玉姝(はん・ぎょくしゅ)/章穆皇后
演:銭東旎
趙恒の妃の座を狙ってます。
歴史上は真宗が即位前に死亡。死後、荘懐皇后に追封。
李婉児(り・えんじ)
演:劉聰
仁宗 趙禎の生母。
劉娥に仕える侍女。ドラマでは劉娥の代わりに真宗の夜伽の相手を務め、男子(趙禎)を出産。生まれた子を劉娥にするという健気な役どころ。
歴史上は真宗の寵愛をうけ男子を出産(趙禎)。真宗と劉娥に子(趙禎)を奪われ、生きている間は趙禎の生母であることは秘密にされました。死の直前「宸妃」の位を与えられています。
楊瓔珞(よう・えいらく)
演:周雪菲
真宗の側室。
趙祐
演:於垚
真宗 趙恒の第二皇子。
母は郭清漪。若くして死亡。
趙吉
演:韓遠琪
真宗 趙恒の第三皇子。
母は劉娥。
遼国に人質に行きました。
架空の人物。
趙禎(ちょう・てい)/仁宗
演:鄭偉
真宗 趙恒の第六皇子。後の仁宗。
生母は李婉児。
劉娥の養子。
宋の朝廷
寇準(こう・じゅん)
演:梁冠華
北宋の宰相。大里寺少卿。
契丹への徹底抗戦を主張する強硬派。
有能な政治家ですが頑固すぎて敵も多い。
趙普(ちょう・ふ)
演:鞏金國
宋の建国に貢献した重臣。太祖・太宗時代の宰相。
蘇義簡(そ・ぎかん)
演:曹磊
劉娥の義弟。
王欽若(おう・きんじゃく)
演:房子斌
真宗時代の宰相。
野心的な政治家ですが。遼との戦争に反対する平和主義者。
丁謂(てい・い)
演:王鑫
寇準と対立する重臣。
遼(契丹)
耶律隆緒(やりつ・りゅうしょ)/聖宗
演:楊曉波
遼の第6代皇帝。
蕭燕燕の息子。
母と共に北宋に遠征。
耶律隆慶(やりつ・りゅうけい)
演:楊曉波
聖宗 耶律隆緒の弟。
耶律宗偉
演:李函陽
聖宗 耶律隆緒の息子。
韓徳讓(かん・とくじょう)
演:徐向東
遼の宰相。
耶律康(やりつ・こう)/燕王
演:馮健
遼から人質としてやってきた王族。
劉娥が養育。
架空の人物。
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