中国ドラマ「独孤伽羅・皇后の願い」は北周~隋を舞台にした時代劇。
原題は「独孤天下」。
「独孤が天下を取る」という予言を信じた独孤三姉妹がそれぞれの天下をとるという物語。
前半の主人公は姉の般若(はんじゃく)といってもいいくらい目立ってます。むしろ伽羅はトラブルメーカー的存在。般若の死後。成長した伽羅(から)がヒロインらしくなります。
侍女の曼陀は最後までトラブルメーカー。
野心家なのに般若には甘く悪役になりきれない宇文護にも人気が集まりました。
主な登場人物とモデルになった実在の人物を紹介します。
一部ネタバレ要素があるのでご注意ください。
ドラマの背景
時代は漢が滅びて隋ができるまでの間。
中国の歴史では南北朝時代といいます。
北部に鮮卑など遊牧民が中心になって作った周と斉。
南部に漢人の作った陳がありました。南北朝といっても日本のように国内の南と北に朝廷があるのではありません。
大陸の南と北に王朝がある。という意味です。
南北朝時代に中国北西部を支配していたのが北周(ほくしゅう)です。
正式な国名は「周」。でも他の時代にも周という国があったので歴史上は「北周」と呼びます。
大まかな国の位置関係はこんなかんじです。
大まかな歴史の流れは
武帝・宇文邕の時代に斉を滅ぼして周が北部を統一。
楊堅が反乱して周を滅ぼし隋を建国。
隋が南部の国を滅ぼして中国統一します。
ドラマは、北周の孝閔帝が在位中の西暦557年から始まり随が建国した581年ごろに終わります。随建国後の争いは描かれません。随国内や楊家の内輪もめを観たい方は「独孤皇后」を見てください。
日本では古墳時代末期から飛鳥時代。蘇我氏と物部氏が対立していた時代です。
ドラマ「独孤伽羅」と「独孤皇后」の違い
「独孤伽羅」と「独孤皇后」は時代も登場人物もほとんど同じ。
ふたつのドラマの違いを簡単にまとめるとこうなります。
「独孤伽羅」の特徴
・独孤三姉妹が天下をとる物語。
だから劇中でも「天下」の言葉がよく出てきます。原題も「独孤天下」。
・独孤三姉妹のそれぞれの人生が描かれます。
・ドラマの最初では北周初代皇帝・宇文覚が生きています。
・独孤般若が野心的で自ら権力の座につこうとしています。
・伽羅の妹・曼陀(元貞太后:唐の建国者・李淵の母)の人生も描かれます。
・隋が建国したあたりでドラマが終わります。
・宇文護が若い(実際には伽羅や楊堅の親世代)です。悪役だけど憎めない存在。
・楊麗華が宇文護と独孤般若の娘(実際は楊堅と伽羅の娘)になってます。
・曼陀の嫁ぎ先、李家(後の唐家)の物語が描かれます。
「独孤皇后」の特徴
・独孤伽羅と楊堅の夫婦の物語。
伽羅と楊堅の二人の人生が中心。
・ドラマは伽羅と楊堅の結婚前からスタート。
・一夫一婦制が強調されます。
・伽羅の姉・般若はドラマの最初から北周皇后。ほぼ脇役。
・伽羅の妹(元貞太后)は出てきません。
・楊堅の兄弟とその妻たちが出てきます。
・楊麗華は史実通り楊堅と独孤伽羅の娘。
・宇文護が史実通りの年齢設定。本当に悪いやつとして描かれます。
・隋建国後もドラマが続きます。
・隋皇帝の後継者争いも描かれます。
・伽羅が死亡するあたりでドラマが終わります。
主要人物
独孤 伽羅(どっこ から)
演:胡冰卿(フー・ビンチン)
北周 の大将軍・獨孤信の娘。
後に 隋 の文獻皇后 になります。思ったら行動に出てしまうタイプ。
前半はまだ幼いという設定なので言動が子供っぽいです。
父や姉の死後は自分が独孤家を守らなければという自覚に目覚め、しっかり者に。やがて楊堅とともに宇文家の皇帝を廃して随を建国しっます。
伽羅は高級な香木の名前。「きゃら」ともいいます。中国では仏教の影響をうけて香の文化が発展しました。北魏~北周は仏教国だったので仏教に関係した名前の人も多いです。
楊 堅(よう けん)/随文帝
演:張丹峰(チャン・ダンフォン)
北周 の上柱国(重臣)楊忠の息子。
隋の初代皇帝・文帝。
親同士が決めた結婚のためか最初はなかなか伽羅とうまくいきません。別居夫婦の状態がしばらく続きます。
やがて伽羅に後押しされ宇文家が皇帝にいすわる北周に見切りをつけて下剋上。随を建国します。
独孤 般若(どっこ はんじゃく)
演:安以軒(アン・アン)
北周の明敬皇后(めいけい こうごう)
宇文毓の正室。名前は般若。
独孤伽羅の姉。野心家で独孤が天下をとるという予言を信じています。前半の主人公といっていいくらい目立ってます。宇文護とは恋人の仲でしたが独孤家のため宇文毓を選びます。
般若は架空の名前。史実では名前は分かっていません。
「般若」は仏教用語で「知恵」の意味。計算高いというより真実を見透す力のような意味。
宇文 護(うぶん ご)
演:徐正溪(シュー・ジェンシー)
北周の太師(たいし=宰相)。普王。
皇帝以上の権力を持つ人物。
宇文覚・毓・邕の従兄弟。
「独孤伽羅」の宇文護は史実よりも若い設定。野心家ですが妙に甘いところがあり悪役に徹しきれない人物。
興奮すると片目の色が変わるファンタジックなギミック付き。先天的に両目の色が違うオッドアイ(虹彩異色症)という症状は現実にあります。
歴史上は西魏の宰相だった宇文泰から信頼され。宇文泰の死の間際、若かった息子たちを頼むように言われ後見人になりました。西魏でクーデターを起こして宇文覚を北周の天王(皇帝)にしました。古い重臣たちを排除。皇帝以上の大きな力を持ちました。中国史上唯一、3人の皇帝(西魏恭帝、北周孝閔帝、北周明帝)を殺害した人物。悪党と言われても仕方ありませんが、宇文泰死後の不安定な時期を乗り切った有能な人物です。
ただし虹彩異色症という記録はありません。
独孤家
獨孤信(どっこ しん)
演:黄文豪(ホアン・ウェンハオ)
北周の大将軍。大司馬(防衛大臣)。伽羅の父親。
先代の宇文泰の時代から仕える北周朝廷の重鎮。
独孤家は匈奴出身。北魏の時代から大きな影響力もつ名門です。独孤信は宇文泰に仕え、有力な一族に娘を嫁がせました。
独孤 曼陀(どっこ ばんた)
演:李依曉(リー・イーシャオ)
唐の 元貞皇后(追尊)。
独孤信の娘。般若の妹。伽羅の姉。
母の身分が低かったので差別を受けていると卑屈になっています。楊堅と結婚させられそうになりましたが、金持ちに嫁ぐのを夢見て李昞と結婚するように仕向けます。
「曼陀」は楽器のマンドラ。マンドリンの小さいもの。琵琶と同じ起源をもつ楽器。中国にはペルシャ~西域から伝わりました。騒がしいから?
唐の建国者・李淵の生母。史実でも気難しい人だったようです。
独孤 順(どっこ じゅん)
演:田渤(ティエン・ボー)
北周の将軍・独孤信の五男。伽羅の兄。
北周で武城縣侯になりました。
獨孤羅(どっこ ら)
独孤信の長男。
かつて結婚していた如羅氏との間に生まれました。
戦争で生き別れ。生死不明になっていましたが発見されます。
如羅(じょら)氏
独孤信の最初の正妻。
信が北魏にいたとき結婚していました。戦争で生き別れ。如羅氏は死亡。
獨孤羅の母。
郭(かく)氏
独孤信の2番めの正妻。
独孤信が西魏に来て結婚しました。
善、穆、蔵、順、陀、整、般若の母。
既に他界。
崔(さい)氏
独孤信の3番めの正妻。
郭氏の死後、結婚しました。
伽羅の母。
伽羅が幼いときに他界。
楊 家・隋皇族
楊忠(よう ちゅう)
演:盧慶輝
隨國公。北周 の上柱国(重臣)。
楊堅の父親。連戦連勝の勇猛な将軍。
伽羅にとってはやさしい義父といった感じ。このドラマではあまり目立ちません。鮮卑姓は普六茹(ふりくじょ)
呂苦桃
演:上官曈
楊忠の妻。楊堅の母。
楊麗華(よう れいか)
演:郜思雯、子供時代:祁心蕊
宇文護と般若の娘。
父と同じように気が高ぶると片目の色が違うオッドアイ(虹彩異色症)になります。
楊堅と伽羅の娘として育てられます。宣帝・宇文贇の正室。北周 天元皇后
歴史上は楊堅と伽羅の娘。虹彩異色症という記録もありません。
北周皇族
宇文泰(うぶん たい)
演:蘇茂
北魏、西魏の大将軍で宰相。軍閥をまとめ、衰えた皇帝の代わりに権力を握り北周の基礎を作った人。
覚、毓、邕の父。
登場は回想場面のみ。
宇文覚(うぶん かく)/孝閔帝
演:李瑞超(リー・ルイチャオ)
北周の初代天王(皇帝)孝閔帝。
ドラマではわがままな皇帝。
宇文護に強制されて退位。殺害されます。
元皇后
演:楊采盈
宇文覚の正室。本名は元胡摩(げん こま)
北周の孝閔皇后
宇文 毓(うぶん いく)/明帝
演:鄒廷威(ゾウ・ティンウェイ)
北周の第2代天王(皇帝)明帝。
宇文護に権力を握られて頼りない皇帝。
皇后の般若を頼ることも多いです。
宇文護に殺害されます。
歴史上はドラマの印象ほど無能ではありません。臣下を集め宇文護の独裁を止めさせようとしましたが殺害されました。
宇文邕(うぶん よう)/武帝
演:應昊茗(イン・ハオミン)
北周の第3代皇帝 武帝。
独孤伽羅の幼馴染で恋人。病弱でドラマ初期は出家。毓が即位すると世俗に戻り兄を助けます。
毓の死後、即位。宇文護を油断させて殺害します。
北斉王朝を滅ぼし北周の全盛期を作った皇帝。
歴史上は宇文邕が独孤伽羅と恋人だった記録はありません。
阿史那 雲(あしな うん)
演:黄梓熙
突厥(とっけつ)出身。
武帝・宇文邕の皇后。
史実通り邕が即位後に結婚。
李家
李 昞(り へい)
演:盧星宇(ルー・シンユー)
隴西郡公。獨孤曼陀の夫。
商売で成功して成り上がったという設定。
史実では、父は独孤信たちと同世代の鮮卑の将軍・李虎(大野 虎)。李昞は李虎のあとを継いだ武将です。鮮卑姓は大野(だいや)。
李 澄(り ちょう)
演:強宇(チャン・ユー)
李昞の長男。獨孤曼陀の義理の息子。
曼陀に陥れられて李昞の信頼を失います。
李 同安(り どうあん)
李昞と獨孤曼陀の最初の娘。
後の唐・同安公主
李 淵(り えん)
演:陳柯帆
李昞と獨孤曼陀の息子。
唐國公
後の唐高祖
王氏
演:張茜
もと般若つきの女官。
曼陀のもとに派遣され、曼陀を助けます。
その他
哥舒(か じょ)
演:趙毅新(チャオ・イーシン)
宇文護に仕える忠実な家臣。宇文護に対しても遠慮がありませんが、宇文護を心配しての発言。客観的にみれば哥舒の言ってることの方が正しかったりします。
架空の人物。
陸貞(りく てい)
演:呂一(リュー・イー)
北齊の女官。高湛を慕っています。
歴史上は皇族以上の力を北齊の持ち政治を動かした悪女・陸令萱と同一人物とされますが。ドラマでは陸令萱と陸貞は別人。
高湛(こう たん)
演:王爭
北斉の4代皇帝・武成帝。
政争で若くして退位、病気の療養をしています。
歴史上は皇帝になった後は贅沢をして30代で死亡。
清河郡主
演:任媄熙(レン・メイシー)
宇文護の正室。途中で病死。
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